ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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阿部、ベンチで見守る

◯3-2巨人(7回戦)

 東京に乗り込んで臨む巨人との初戦。ドラゴンズは思わず二度見するようなトリッキーなオーダーを組んできた。まずトップバッターからして髙松渡である。大島洋平に代わるセンターには滝野要が入り、レフトは4試合連続で根尾昂。

 まだゴールデンウィークだというのに早くも秋風を感じるような若手主体オーダーだが、もちろん「来季を見据えて」という類のものではない。選手を間近で見ている首脳陣が考えた、打倒・菅野智之の最善策である。

 なかでも目を引くのは、やはり髙松だ。売り出し中の4年目。捕邪飛でのタッチアップや、一瞬の隙を突いてホームを陥れた “神走塁” など、代走では記憶に残る活躍をみせている。チームが今ひとつ乗り切れないこのタイミングで1番に抜擢されたのは、もろに首脳陣の期待の表れといえそうだ。

 ただ、今日ピックアップしたいのは髙松ではない。獲る者がいれば、獲られる者もいるのが世の常だ。10試合ぶりにスタメンを獲られた背番号5、阿部寿樹の心境やいかにーー。

 

采配を「不正解」にしてしまう

 本拠地で首位阪神に勝ち越しを決めたものの、ファンの鬱憤は晴れるどころか溜まる一方だった。今朝、クオリティペーパー『中日スポーツ』の一面を飾ったのは、「併殺地獄」のフレーズ。4併殺の拙攻を嘆いたものだが、とりわけ槍玉にあがったのが阿部による様式美のような6-4-3だった。

 同じ併殺でも当たりは鋭かった京田陽太、殊勲打も多い木下拓哉、ビシエドとは異なり、今季の阿部はとにかくドン底をさ迷い続けている。

 与田監督が口癖のように使う「采配を正解にしてくれるのは選手の頑張り」という言葉。これに当てはめるならば、ことごとく采配を「不正解」にしているのが今の阿部だ。

 懐かしの土曜夕方『天才クイズ』(CBC)で言うならば、阿部が打席に出てきた瞬間に子供たちが一斉に「×」マークの赤い帽子を被るような状態で、ゲッツーを打って天を仰ぐ阿部の姿を見ていると、「答えは……ノ〜‼︎」という天才博士の甲高い声が聞こえてくるようだ。ローカルな話題で恐縮だが。

 29日の試合後、与田監督は阿部について「しっかりと我慢しなければいけないところは我慢するし、今日みたいに代えないといけないところでは代えるという起用になっていく」と話したそうだ。「今日みたいに」とは無死一、二塁で代打を送った采配を指すわけだが、打力が売りの選手をチャンスで代えるくらいだから首脳陣の我慢も限界に達しつつあるのだろう。

 そして今日、久々に阿部はスタメンを外れ、最後までベンチで自軍の勝利を見守った。ゲームセットの瞬間、ポンと柳裕也の背中を叩いて労う姿がカメラに抜かれていたが、内心穏やかではないはずだ。

 

初めてじゃない、1割打者への我慢

 打率.159はセ・リーグ打撃ランキングの一番下。こんな成績の選手を使い続ける監督など聞いたことがない! と憤っている方もおられるようだが、さすがにそれは勘違いである。

 たとえば2010年在籍のディオニス・セサルは30試合消化時点で打率.147(1本)だったし、翌2011年在籍のジョエル・グスマンは同じ時期に打率.140(1本)と、今の阿部をも凌ぐ絶不調でファンのヘイトを一身に浴びていたのだ。

 それでもセサルはシーズン通して51試合194打席、グスマンは73試合251打席も貰ったわけだから、26試合95打席の阿部なんかまだまだ全然我慢する余地があるのだ。

 

 爆発的に打ち出す可能性を秘めた新外国人と、過去2年の実績でおおよそ実力が測れる阿部とでは比較にならないかも知れないが、少なくとも1割打者のスタメン起用はドラゴンズファンが初めて目の当たりにする采配ではない点は強調しておく。

 ちなみに明日の巨人先発はサウスポーの今村信貴。もし明日の二塁スタメンが髙松ではなく阿部だったとしても……あんまり目くじら立てずに見守ろうではないか。そりゃま、ちょっとは怒る気持ちも分かるけども。

(木俣はようやっとる)

 

与田監督コメント引用『東京スポーツ』