ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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手放すな、ゼッタイ

◯6-1阪神(5回戦)

 「ラストピース」が遂に出場選手登録された。その名はマイク・ガーバー。貧打にあえぐチームにとっては待ちに待った新戦力だ。

 デビュー戦となったこの日は、「3番・ライト」で先発出場。第3打席で痛烈なセンター前ヒットを放ち、アロンゾ・パウエル打撃コーチが高く評価する実力の片鱗を覗かせた。

 出場選手登録された者がいれば、登録を外れた者がいる。ファームに降格となったのは、極度の不振に苦しむ平田良介だった。本来ならば、当たり前のようにスタメンに名前があるべき存在。心身を立て直したうえでのカムバックを信じたい。

 

生命力

 新助っ人の初陣のスタメンには、根尾昂の名前もあった。正直なところ、数日前までは覚悟をしていた。ガーバーの代わりに二軍行きとなるのが、21歳になったばかりの若武者であることを。

 先週の関東遠征で出場したのは、6試合中わずか1試合。発展途上なだけに、このまま一軍のベンチを温めるよりも、ファームで打席数を積ませる方がプラスとの判断はあって然るべきだからだ。

 窮地に立たされたものの、根尾は生き残った。ガーバーの一軍昇格が既定路線の中での先発出場。2試合連続スタメンとなったのは、前日の活躍に尽きる。3連戦の初戦で、阪神のエース・西勇輝からプロ入り初の長打となったレフト線への二塁打を含む2安打。この日の出場は、紛れもなく自らのバットで勝ち取ったものだった。

 迎えた第1打席は、木下拓哉の二塁打で先制した直後の2死二塁の好機。カウント1ボールからの2球目。変則派・青柳晃洋が投じた低めのシンカーを右中間へ運んだ。貴重な追加点となる適時打。

 根尾の談話によると、「ボール気味かもしれませんが、うまく対応できた。1点で終わらず、追加点が取れて良かった」。

 先週のDeNA戦に続く好投を見せた勝野昌慶にとっては、安心して投球ができる2点目。エース・大野雄大で制した前日に次ぐ連勝を大きく手繰り寄せる一打だった。

 

「短所とは魅力の別名」

 勝敗を左右する一打を放った第1打席とは一転、第2打席は青柳の外の出し入れに翻弄され、見逃し三振。続く第3打席は、1-2からの4球目に左腕・岩貞祐太が投じた真ん中付近のスライダーにバットが空を切った。

 凡退した2打席におけるアプローチについて言及するつもりは一切ない。とはいうものの、鮮烈な適時打の後の打席とあって球場の期待が高まっていた中での2三振。もう1本出ていたら、根尾自身にとって更に価値のある1試合となっていたに違いない。

 ただし、全く光の見出せない凡退だったわけではない。昨日から根尾のファウルの質が変化しているように感じるからだ。打ち損じのファウルから、ライナー性のファウルへ。バットを振り切った上でのファウルは、シーズン開幕当初にお目にかかることは少なかった。今シーズン、確実性の向上を意識している背番号7がフルスイングと確実性を両立した暁には、「NEO・根尾昂」が野球ファンを虜にすることとなる。

 

来る2023年

 本日NHKのBS1で解説を担当したのは辛口の評論家として名を馳せる宮本慎也氏。実況とのやり取りで話題に上ったのが、若手がレギュラーを掴むタイミングについて。同い年の大卒選手が入団した際に、彼らより上の立場でいるか否かが目安とのこと。近年の高卒選手だと山田哲人や鈴木誠也は4年目、村上宗隆や坂本勇人は2年目でレギュラーの地位を確立した。

 高卒3年目でレギュラーを掴もうとしている根尾に残された時間は、思いのほか限られているのだ。ミレニアム世代の大卒選手NPB入りは2023年。中学時代から世代のトップランナーだったが、同級生の足音はひたひたと迫ってきている。

 京田陽太に挑戦状をたたきつけた2021年の春季キャンプ。愚直にショートのレギュラーを目指してきたものの、ペナントレースが開幕するまでの実戦で結果を残したことで転がり込んだ、新天地・レフト。本来目指してきた場所ではないだろうが、千載一遇のチャンスを生かさない手はない。

 ライバルは増えた。しかしながら、サバイバルを乗り切った先には、明るい未来と新たなる景色が広がってくる。そして世代のリーダーとして、 新たなライバルとなる同級生たちに堂々と言おうではないか。「ようこそ、プロ野球の世界へ。」と。

(k-yad)

 

根尾コメント引用:中日スポーツ