ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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On Your Mark

●4-6ヤクルト(3回戦)

 今シーズン最初の神宮シリーズGame 1は逆転負け。3番に入った福田永将の2本のタイムリーなどで5回まで4-1とリードを奪うも、投手陣が守りきれず。連勝は2で止まった。

 

現地観戦のテーマは「ブルペン」

 今日は現地での観戦。三塁側内野席から試合の行方を見守った。

 観戦のテーマは、ずばり「ブルペン」だ。理由は二つある。一つは神宮球場がセ・リーグ本拠地で唯一、グラウンド内にブルペンを設えているから。もう一つは、今日の先発が松葉貴大だからだ。

 ブルペンがグラウンド内にあると、観客からは控え投手がどのように準備をするのかよく分かる。どのタイミングで投球練習を行うかで、いまのリリーフ陣の序列も見えてくる。これまでの試合でおおよその序列は見えてきているが、眼前で確認しておくのは悪いことではない。

 そして、先発の松葉は端的に言うと「2周りまでを抑えられる」投手。3周り目になると痛打を浴びるリスクが高まる。どれだけ好投をしていても6回100球が目処、クオリティースタート(※6回3自責点以下)ができればOKだ。つまり、リリーフ陣の出番は確実に来る。

 

近年は「1回作り」のチーム、投手が登場

 従来、登板するまでにブルペンで投げる回数(肩を作る回数)は2回が当たり前だったが、近年は「1回作り」でマウンドに行かせるチームが散見される。肩肘は消耗品という考えの下、シーズンを乗り切るため、ひいては勤続疲労を防ぐための方策だ。

 その走りは高津臣吾監督がコーチ時代のヤクルトで、「1回作り」はアメリカ(MLB)・韓国(KBO)・台湾(CPBL)共通の調整法。2015年のリーグ優勝時、互いに70試合以上登板した秋吉亮(現日本ハム)やオンドルセクが最後までへばらなかった要因とされた。

 選手個人では、通算700登板を超える日本ハムの鉄腕・宮西尚生が「1回作り」でマウンドに向かっている。球数も15球と決めているそうだ。先日公開された『スポーツ報知』の手記によると、「作る前にキャッチボールをする選手もいますが、肩は消耗品なので投げすぎてしまうとシーズンを乗り切れない。もっと言えば、1、2年で終わってしまうこともあります」と持論を述べている。

 

ドラゴンズは伝統的に「2度作り」

 一方、ドラゴンズの投手は伝統的に「2度作り」。黄金期のセットアッパー・浅尾拓也がそのように振り返っているし、現体制になった2019年以降も続く。

 データ分析でおなじみ・ロバートさんのレポートによると、2019年4月の時点では下記の傾向が見られたという。

・試合序盤~中盤にかけてブルペンにおける序列の低い投手から順番に肩を作り始める
・試合状況を睨みながら、登板直前に2度目のブルペン入りで最終調整を行う
・試合状況によっては序盤に肩を作った投手が登板しないこともある

 これは昨季自分が神宮で観戦した(8月、10月)際も同じ印象を持った。

 

今夜のドラゴンズ、ブルペン運用は?


 前置きが長くなってしまったが、今夜のドラゴンズのブルペン運用はどうだったのか。イニングごとに並べてみよう。各投手とも基本は立ち投げ、ならびに捕手を座らせての投球練習を行っている(※○の数字は回数)。

  • 3回表~裏:橋本侑樹、鈴木博志
  • 4回表:藤嶋健人
  • 4回裏:福敬登、鈴木②(※鈴木は立ち投げ数球のみで下がる)
  • 5回表:福、谷元圭介
  • 5回裏:祖父江大輔、鈴木③→又吉克樹(※村上の打席から鈴木マウンドへ)
  • 6回表:谷元②(※裏にマウンドへ)
  • 6回裏:福②、藤嶋②(※藤嶋はイニング最後、中村悠平の打席から)
  • 7回表:藤嶋②、又吉②(※裏に藤嶋がマウンドへ)
  • 7回裏:R.マルティネス(※先頭・山田のホームランで下がる)
  • 8回表:福③(※裏にマウンドへ)
  • 8回裏:なし
  • 9回表:R.マルティネス②(※軽めの投球)

 結果、この日ベンチ入りした投手全員がブルペン投球を行った。登板/未登板にかかわらず大多数の投手が2回以上肩を作っており、おおよその傾向は上記のロバートさん指摘と変わっていない。

 また、戦前の見立て通り、先発の松葉が5回途中でマウンドを降りて、その後4人の投手がバトンを継いだ。登板したのは「Bチーム」と呼ばれる投手が多く、勝ちパターン(Aチーム)の祖父江、又吉、R.マルティネスを軽めの調整で温存。この点は明日以降に向けて光明と言えよう。

 今夜のブルペンの動きを見ていると、いかに救援投手が慌ただしいか。寒空の中、心身のコンディションを整えるのが本当に大変そうだった。現状のドラゴンズは投手陣、特にリリーフの力で勝っていくチーム。「1回作り」or「2度作り」の是非はともかく、彼らが最後までパンクしないよう、首脳陣、特にプルペンを預かる赤堀元之コーチに求めたい。【ikki】

 

<参考記事>
NumberWeb『試合に出る日しか投げない調整法。ヤクルトがブルペンの新常識を作る?』(2016年2月15日)

https://number.bunshun.jp/articles/-/825078


スポーツ報知『【日本ハム】宮西尚生、登板前はトイレの個室にこもって精神統一…連載「中継ぎの流儀・勇往邁進」』(2021年4月16日)

https://hochi.news/articles/20210415-OHT1T51036.html

NumberWeb『浅尾からサファテへの返信。酷使か、美談か。今こそ“投げ過ぎ”を考える。』(2018年8月30日)

https://number.bunshun.jp/articles/-/831749


中日新聞プラス『2019 中日ドラゴンズの「中継ぎ投手」運用を考える』(2019年11月2日)

https://plus.chunichi.co.jp/blog/robertsan/article/648/9084/