ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

令和版IQサプリ

○1-0DeNA(6回戦)

 肌寒さの残る中で開幕したプロ野球も、あっと言う間に1か月が経とうとしている。今日は日本各地で夏日となり、初夏の気配が漂い始めた。

 横浜スタジアムは日没を迎えながらのプレイボールに加え、試合途中には汽笛が鳴り響く情緒的な演出。この上ない雰囲気の試合に勝利を飾るべく、先発の福谷浩司は今シーズン初勝利を目指し、クレバーに腕を振り続けた。

 

我慢比べ

 福谷と対峙したのは、左腕・濱口遥大。今シーズンはDeNAの開幕投手を務めたものの、こちらも勝ち星に恵まれていない。何が何でも白星を掴もうとする両投手の投げ合いは、対照的な内容で進行した。

 福谷は序盤から少ない球数でアウトを積み重ねた。一方の濱口が要した球数は、降板した6回までで122球。四球によって毎回のように走者を許したが、ギリギリのところで踏みとどまった。

「一本が出ない」

 毎年のように、ドラゴンズが何度も言われている言葉が飛び出す展開に、多くのファンが歯がゆい思いをしたことだろう。しかし、福谷はこの程度のことで動じるような投手ではない。まるで「おしん」のように、耐えて耐えて耐え抜いた。

 

言語化

 好投の伏線は、前回の登板の4回5失点で敗戦投手となった4月15日の巨人戦に遡る。降板直後、もやもやした頭の中を整理するために、「今思っていること」を書きなぐっていった。福谷はこの事を自身のnoteで次のように記している。

 

 紙はあっという間に字で埋まっていき、モヤモヤが減っていきます。

 そして書いた紙を俯瞰して眺めてるとモヤモヤの原因が見えてきました。それは「余計な考えをマウンドに持っていきすぎた」こと。(原文ママ)

 

 チームが得点を挙げることができなくても、邪念を捨てた福谷はやるべきことをシンプルに実行に移した。「先制点を許さない」。目的のために、ただガムシャラに腕を振るわけではない。失点に繋がるような行為を悉(ことごと)く排除していった。

 この日の福谷が許した4本の安打は、いずれも単打。バンテリンドームに比べ本塁打が出やすい横浜スタジアムにおいて、まさに全ての投手のお手本となる投球だった。加えて、先頭打者に出塁を許した場面も、連打を浴びた場面も一切なし。強力打線を誇るDeNAでも、圧巻の投球を見せつけられてはノーチャンスだ。前回の投球と見違えるような投球には、同じ轍は踏まないと誓った右腕の矜持が滲み出ていた。

 後は背番号24に白星が転がり込むのを待つだけ。祈るような気持ちで迎えた9回表、祈りは通じた!

 

反撃の季節

 まさに「野球は2アウトから」。先頭の高橋周平と阿部寿樹が凡退、2アウトとなってしまったものの、不振を極める平田良介の打球が三遊間を抜けていった。迎えるは8番・木下拓哉。法政大の先輩・三嶋一輝のストレートをはじき返し、センターに抜けるかと思われた打球にショート・柴田竜拓が飛びつき、1塁へ送球。普通なら万事休すだが、ドラマは続いた。

 柴田の送球が低くなったことで、一塁手のソトがボールを捕り切れなかった。平田に代わって代走で起用された高松渡が、この場面でビッグプレーを見せることとなる。二塁ベース上に達していたはずの高松が、瞬く間にホームベースに向かって飛び込んでいたのだ。その直後、球審の両手は横に広がった。

 裏の攻撃は、ライデル・マルティネスが3人で料理。4度目の登板で、遂に福谷が報われた。同時に、チームは福谷に救われた。何せミスが相次いだ試合。あっさりと敗れてしまい、悪いムードがチームに漂いかねない展開での粘り勝ちだ。8回までスコアレスでなければ、引き分けすら掴めなかったはずだ。

 初戦にエースの大野雄大で勝ちきれなかったDeNA3連戦も終わってみれば、2勝1分け。少し遅めの春が到来した右の柱ととともに、いざ巻き返しだ。神宮でのヤクルト3連戦を終えるといよいよゴールデンウィークがやってくる。待ち構える9連戦が、ペナントレース序盤の山場となるのは間違いなさそうだ。

(k-yad)

 

引用・福谷浩司note「【振り返り】4月15日の巨人戦について