ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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「9」

○5-0広島(5回戦)

 広島とのGame 2は快勝を収め、連敗を4でストップ。中盤まで息苦しい展開が続くも、打線は終盤に得点を重ね、投手陣は零封リレー。今季ベストゲームと呼んでいい内容に、現地で配布の “ドラ恋ユニ“ を着た女性ファンはもちろん、多くのドラゴンズファンにとって最高の試合になったのではないか。

 

「3番ライト・福留孝介」に複雑な思い

  13時10分過ぎ。馴染みの店でチャーハンを食べていたら、「3番ライト・福留孝介」の一報が届いた。嬉しいやら情けないやら……何とも複雑な思いが去来した。

 

 2000年代に青春時代を過ごしたドラゴンズファンなら、その響きに懐かしさを覚えたはずだ。特に打率.351、31本塁打を記録した06年の活躍は今も伝説的で、どうしてもその時のことをダブらせてしまう。一方、この起用は現状のチームの苦しさを端的に現す。およそ2週間にわたり3点以上取れていない貧打ぶりに、首脳陣の苦悩が透けて見える。

 

 とはいえ、起用を正解にするのは福留本人だし、それは周りの選手たちにも言える。使われるからには信じて見守ろうと、14時のプレーボールを待った。

 

変わっていないところと変わったところ

  ハイライトは両軍無得点の4回裏に訪れた。1死二塁の好機に福留のバットが一閃。ライト線への二塁打となり、大島洋平が先制のホームイン。粘り強く相手打線を抑えていた柳裕也に援護点をプレゼントした。

 

 この打席を振り返ると、1ストライクから2球目のチェンジアップ、3球目のツーシームを続けて見極め、打者有利のカウントに持ち込んだ。そして4球目のカーブを一振りで仕留めた。あと10日足らずで44歳になるが、狙いすましたかのような鋭いスイングはあの頃と何も変わっていない。

 

 その後の二塁ベース上でベンチに向かって拳を握るところは、復帰してからよく見られる姿だ。孤高でクール、ともすれば個人主義にも見えた背番号「1」時代とは異なり、新たに「9」を背負った福留はドラゴンズをもう一度強くするために帰ってきて、背中でチーム全体を底上げしようと試みている。

 

「自分のやってきたことを信じて、自信を持ってやるしかない。打てるか、打てないかは分からないが、どれだけ自分が自信を持って打席に立てるか。それに尽きると思うし、それができる選手がチームにたくさんいる。もっともっと自信を持って、やっていったらいい」

 

 試合後に発した、このコメントからもチームへの想いが伺える。

 

伝統を継ぐ根尾、柳、そして……

  福留は第4打席にもケムナ誠の151キロをセンター前に飛ばして、複数安打を記録。代走・滝野要が送られ、万雷の拍手の中ベンチに下がった。このあたりも走攻守で鳴らしてフル出場が当たり前だった「1」番の頃とは違う。今後も無理せず、適切な使い方を首脳陣には求めたい。

 

 そのためには主にスタメンで使われている野手に奮起を促したいが、今日は根尾昂がやってくれた。7回1死満塁から、2人の走者を迎え入れるタイムリーを放ち、貴重な追加点をもたらした。ベンチの福留も目を細める姿がカメラに捉えられ、親子ほどの年齢が離れた2人の関係は良いものだろうと勝手に想像している。

 

 福留とともにお立ち台に立った柳は8回無失点、キャリアハイの14奪三振をマーク。今季初勝利は、登板過多気味のブルペン陣を休ませる意味でも非常に価値のある内容だった。優秀な投手を示す指標の一つ「K/BB(奪三振/与四球)」は驚異の11.00(33奪三振/3与四球)。もちろんこれはリーグトップの数字で、右のエースの風格が漂っている。

 

 1998年ドラフト1位の福留から、2016年ドラフト1位の柳と18年ドラフト1位の根尾へ。ドラゴンズの伝統が良い形でつながったような試合だった。明日のGame 3は今季初のカード勝ち越しと連勝をかけて、15年ドラフト1位の小笠原慎之介が先発。伝統のバトンをどんどんつなげていけば、大手を振って「昇竜復活」を叫ぶ日もきっとやってくる。【ikki】

 

選手コメント引用「スポーツニッポン」