ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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日出処

●1-5巨人(5回戦)

 「2番・ライト・福留孝介」

 五輪開幕100日前のムードも吹っ飛ぶ大サプライズ。前日の1安打完封負けを受け、与田監督は大きくスタメンを動かしてきた。ドラゴンズにおける福留の2番起用は、2000年9月21日以来とのこと。得点力不足に対する危機感は、ひしひしと伝わってきた。

 13日の試合終了時点での、チーム防御率はリーグトップの2.39。後は打線が噛み合えば……。とはいうものの、簡単には勝たせてくれないことは百も承知。まずは先発の勝野昌慶が巨人打線を抑え、チャンスを確実に得点に結び付けたいと妄想を膨らませながら、高橋由伸氏の始球式を見守った。

 

すべりだい 

 この日の勝野の立ち上がりは、いつになく順調だった。初回と2回はともに三者凡退。立ち上がりが安定しない傾向があるだけに、大きな期待を持たせる2イニングだった。

 ところが、事態は3回に急変してしまう。先頭の香月一也に安打を許すと、続く増田大輝の打球が勝野を襲った。身体は大事には至らなかったようだったが、その後の投球が大事になってしまったのが実に皮肉なものだ。

 嫌な流れを断ち切るチャンスはなかったわけではない。9番・畠世周がスリーバント失敗で2人の走者を釘付けにしたことが正にそれだ。1死一、二塁に局面が変わった段階で切り替えることができていたら、試合展開は全く異なっていただろう。

 運命の瞬間は無情にも訪れた。この日2度目の対戦となった、1番・松原聖弥の打席では初球からボールがばらつき、ボール先行の投球。何とか3-2に戻したものの、最後の1球が中々決まらない。3球ファールで粘られた後、とうとう根負け。松原が鮮やかにはじき返した打球はレフトの前に落ち、二塁走者が生還した。

 

罪と罰

 野球をやる以上、抑えることもあれば打たれることもある。だからこそ、如何なる結果でも現実を受け入れるしかない。しかしながら、この場面は何としてでも切り抜けてほしかった。

 次の打者は、巨人のシンボル・坂本勇人。プロ初安打以来、幾度となくドラゴンズが辛酸をなめてきた天敵だ。坂本に繋がれば大量失点に結びつくのは容易に想像できただけに、松原との対戦は悔いの残るものとなってしまった。

 フルカウントからの球はいずれも真ん中付近。何なら、2回に岡本和真を見逃し三振に斬って取った最後の1球も真ん中だった。不調の岡本は手が出なかったとはいえ、危険な一球であることに変わりはない。決め球の制球の改善が、今後の大きな課題となってくる。

 先制点を許してからの勝野の投球は、周知のとおりだ。坂本に真ん中付近に投じたカーブをレフト線へ運ばれ、次打者の梶谷隆幸にはライトスタンドに飛び込む2号ツーランを浴びて万事休す。とはいえ、ここで投手を交代するようなことになると、今後の投手運用に支障をきたしてしまう。ベンチが選択したのは「続投」だった。

 

華麗なる逆襲

 大勢が決まった後に投げ続ける感覚は、マウンド上の本人しか味わえない。想像を絶する過酷な状況を、勝野は耐え抜いた。スコアボードに0が刻まれたとしても、隣に「5」がある事実は変わらない。しかしながら、この0が後続のリリーフ陣を大きく助け、単なる1敗から “意味のある敗戦” に変えた。

 勝野が4回を投げ切ったことで、残りのイニングを鈴木博志と橋本侑樹の2投手でカバー。恩恵を受けたのは、紛れもなく登板過多気味の救援陣だ。両投手が無失点で乗り切ったことで、一度壊れかけた試合を立て直し、救援陣にゆとりをもたらした。

 試合が引き締まってくると、不思議と攻撃陣も乗ってくる。得点できなかったものの、8回表には京田陽太の安打をきっかけにチャンスを作り、得点の匂いを漂わせた。そして9回表、アリエル・マルティネスが1軍昇格2試合目で今季初安打となるソロ本塁打。反撃の狼煙を上げると、その後も走者を溜め、好投を続けていた畠をマウンドから引きずり下ろした。

 なかでも、石橋康太の一振りは大きな可能性を感じさせた。既にファームでは格の違いを見せていただけに、一軍の舞台でも結果を残したのは今後の収穫だ。正捕手・木下拓哉の壁は厚いものの、負担を軽減する存在になればチームにとって大きな戦力になる。

 まだ4月14日。シーズンは100試合以上残っている。この敗戦があったからと思える日が来るよう、戦い続けるのみだ。明けない夜は決して無い。

(k-yad)