ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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フンダリケッタリ

 開幕して2週間。ドラゴンズファンのメンタルが早くも限界を迎えつつある。4カード12試合を終えて4勝6敗2分は、一見すればさほど悪く無い数字に思える。少なくとも現時点での借金2など、誤差といっても差し支えないだろう。

 問題は中身だ。貧打はここ数年の課題だが、今季はスタートダッシュからかつてない不振を極めている。4点以上取ったのはわずか3試合。チーム打率、本塁打、打点、長打率、出塁率はいずれもリーグ最下位とドン底をさまよっており、特に本塁打は1本のみ、ただいま11試合連続 “音無し” と目も当てられない事態になっているのだ。

 球団史を振り返っても、開幕12試合目までにチーム1本塁打というのは歴代最低の珍記録だ。いくら本拠地が広いと言っても、DeNAのルーキーが3試合で2発もかっ飛ばしているところを見ると「ぐぎぎ……」と歯ぎしりするほかない。

 むしろこの惨状にもかかわらずマイナス2で持ち堪えているのは、ひとえに投手陣の頑張りあってのことである。

 

心配な高橋周の守備

 ただ、今週はその投手陣が踏ん張りきれなかった。大野雄大はまさかのグランドスラムを浴び、祖父江大輔はエラー絡みの失点で2年ぶりの黒星が付いた。昨季Aクラス入りの立役者ともいえる二人が揃って崩れたことが、現在のチーム状況の悪さを端的に物語っている。

 「2点を嫌がり最悪な結果になった」という大野の談話が示すように、打線の低調さが投手陣に過度の重圧を与えるという悪循環。重苦しい雰囲気は守備にも影響するのか、DeNA3連戦では名手・高橋周平の「らしくない」守備が目に付いた。

 昨季、シーズン通して5個しかエラーを犯さなかった高橋周が、今年は早くも3個とあきらかに精彩を欠いている。開幕カードの広島戦ではアクロバティックなプレーで幾度となくピンチの芽を摘んでいただけに、ケガとか調整不足というよりは、やはり打つ方の不調が守備勘を鈍らしているのではと私は見ているのだが、果たして今後どうなるだろうか。

 

フンダリケッタリ

 うまくいかない時ほど妖怪「フンダリケッタリ」がどこからともなく姿を現すもので。手元にある『水木しげる妖怪大百科』(小学館クリエイティブ)によれば、「フンダリケッタリ」は人の絶望や悲しみを餌にする悪徳な妖怪で、ただ去るのを待つしか対処の術はないという。

 昨日、「ビシエド抹消」の一報がドラファンを震撼させた。ただでさえ貧打に喘いでいるのに、チーム唯一の本塁打を放っている不動の4番が離脱というのでは頭が痛いどころの話ではない。

 そういえば昨年もこんなことがあった。7月11日の広島戦、ナゴヤドーム開場以来ワーストの19失点を喫して大敗した、まさにその試合の最中に高橋周が左太腿を負傷。肉離れと診断され、復帰まで2週間を要したのである。

 現地のファンは史上最悪の惨敗劇を見せられただけではなく、主軸の負傷まで目撃したのだから不運としか言いようがない。このように「フンダリケッタリ」は、ダブル、トリプルで悪夢をもたらす厄介な妖怪だ。そして今年もまた、こいつが現れたわけだ。

 

希望の光・根尾の使命

 だが悲観的な話ばかりではない。二軍の試合ではアリエル・マルティネスが待望の実戦復帰。第一打席でいきなりヒットを放つと、続く第二打席ではナゴヤ球場のバックスクリーンに豪快なアーチをかけた。喉から手が出るほど欲しい大砲タイプの外国人だ。ライデル共々、昇格が待ち遠しい。

 そして何といっても、我々はいま根尾昂の成長を日々目の当たりにしていることを忘れてはいけない。バンテリンドームでの2勝はいずれも根尾のバットがもたらたしたもの。守備でも強肩を披露するなど、チーム状況などどこ吹く風で一生懸命にプレーする姿は希望の光そのものではないか。

 たしかにレギュラーとしてはまだまだ全てにおいて物足りないが、未来への投資だと思えば我慢もできよう。2018年のドラフト指名時、大阪桐蔭高の制服姿で「ドラゴンズを優勝させる。自分の力でチームを底上げするのが一番の自分の使命だと思っている」と語っていたのを強烈に覚えている。

 あれから3年。遂にその使命を果たす時が来たのだ。

 

 『いい事ばかりはありゃしない』と忌野清志郎が歌えば、『イヤな事だらけの世の中で』と桑田佳祐も歌っている。日本が誇る2大ロックスターがそう言うのだから、人生なんて概ねそんなものなのだろう。

 幸い、シーズンはまだ131試合も残っている。そのうち厄介な妖怪も立ち去り、それなりに勝てる日々が戻ってくるはずだ。だからまあ、そんなに悲観せずに今はただ耐えようではないか。ちなみに「フンダリケッタリ」は私の創作でして、『水木しげる妖怪大百科』にそんな妖怪は載っていません。悪しからず。

【木俣はようやっとる】

 

根尾コメント引用「共同通信」