ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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走塁改革の申し子

○6-3阪神(1回戦)

 鉄壁を誇るはずのドラゴンズ内野陣が、信じられないようなミスを連発した。2回裏のことである。

 悪しき連鎖は名手・高橋周平の悪送球から始まった。これで無死一塁とすると、続く佐藤輝明のセカンドゴロは二塁手のグラブへと一直線。誰がどう見てもダブルプレーコース。ドーム内に阪神ファンの悲鳴が響くも、佐藤輝の俊足がギリギリ間に合って一塁はセーフに。

 今日のセカンドはプロ初先発、髙松渡。気持ちは分かる。初めて大きな仕事を任され、ミスしてはいけないという慎重さが裏目に出てしまうのは、社会人ならば誰もが通る道である。

 ただ、プロ野球選手として一軍の試合に出場している以上はミスは許されない。このエラーの付かないミスに動揺したのか、今度は福谷浩司が一塁に悪送球。続く打者に相次いでタイムリーを浴び、ゴロ3つで終わるはずのイニングが一体どうして。たちまち逆転を許し、2点を追いかける様相へと早変わりしてしまったのだ。

 悪い流れは続くもので、3回裏にも高橋周がこの日2個目のエラーを記録。ならば打つ方はといえば、4回表、5回表と2イニング連続で満塁チャンスを生かせぬもどかしい展開。

 なるほど、これが大阪仕込みの「まん防」かと。しょうもないダジャレをツイートするくらいしか捌け口がないほどしょっぱい展開で、試合は終盤に突入したのだった。

 

逆転を呼んだ京田の盗塁

 2回裏こそ落とし穴にはまった福谷だが、その後は本来のボールの力を取り戻して復調。5回3失点と最低限の結果にまとめるあたりは、さすが開幕投手の意地と言うべきか。

 続いてリリーフした鈴木博志もピンチを背負いながらも踏ん張る粘りの投球で追加点を許さず、一時は完全に手渡したかに思えた流れが徐々にドラゴンズへと戻りつつあるように感じられた。

 すると8回表、1死から平田良介が10球粘った末に四球をもぎ取ると、続く京田陽太がセンター前に弾き返して一、三塁。打席にはここまで3タコの木下拓哉が立った。

 結果的にはこの木下が値千金の同点タイムリーを放つわけだが、なんといってもこの対戦の途中、バッテリーの隙を突く京田の盗塁が効果的だった。

 カウント2-2からの8球目。タイミング、スタート共に完璧。制球に窮する阪神・加治屋蓮を揺さぶるには十分すぎるほどの威力があった。

 2点差ながら、一打同点の二、三塁。加治屋が投じたフォークは真ん中高めに浮き、木下の力強いスイングが見事にそれを捉えた。ダブルプレーの影がちらつく一、三塁なら、果たして失投を一発で仕留め切れたかどうか。まさに逆転劇の呼び水となる盗塁だった。

 

「走塁改革」の申し子

 昨季リーグ5位のチーム33盗塁に終わった反省を踏まえて、「走塁改革」を掲げる与田ドラゴンズ。今日を終えた段階で早くも6個と、その成果は目に見えて表れている。

 今夜の京田の盗塁も、昨季までなら仕掛けていたかどうか。こうした細かい攻撃のバリエーションの広がりが、開幕一週間にして逆転勝利3度という結果をもたらしたのは間違いない。

 ちなみにチーム6個のうち2個は髙松が代走で記録したものだ。プロ初先発は守備で2つのミス(1つはエラー)を喫するなどほろ苦いものとなったが、それでも5回表には、持ち味である俊足を飛ばした内野安打で記念すべきプロ初安打を記録した。

 おそらく今後もたくさんの失敗を経験することになるのだろうが、まだ21歳の若者にとっては全てが糧となるはずだ。今季はチームの進化と共に、「走塁改革」の申し子・髙松の成長にも要注目していきたい。

(木俣はようやっとる)