△3-3巨人(1回戦)
本拠地「バンテリンドーム ナゴヤ」でのシーズン初戦は昨年のリーグ覇者である巨人を迎え、人気俳優・佐藤二朗さんの始球式で幕を開けた。
開幕3連戦を1勝1敗1分で終えたドラゴンズは、苦手とするマツダスタジアムで負け越さなかったとはいえ状態が良いとは言い難く、なんとか凌いだという見方が適切だろう。
対する巨人は劇的なサヨナラ本塁打で開幕戦勝利を飾ると、負け無しの2勝1分で名古屋に乗り込んできた。独走を許さないためにも、エース・大野雄大で確実に勝利をつかみたい一戦となった。
結果は1点ビハインドの8回に高橋周平、ビシエドに代走を出すなど、例年では見られない積極的な交代に打って出るも勝ち越すことができず、早くも2つ目の引き分けを記録。9イニングルールにおける采配の妙を考えさせられることになった。
初登板に苦しんでいた大野雄大
調整遅れが心配されつつもオープン戦2試合、そしてウエスタン・リーグで好投を見せた大野だが、私は少々厳しめに今日の先発結果を想像していた。開幕ローテーションに入った2013年以降、8年間の大野のシーズン初登板は以下のようになっている。
2013/3/30 3回4失点 ●
2014/3/29 6回3失点 ●
2015/3/31 7回1失点
2016/3/25 7 2/3回2失点 ○
2017/3/31 6回6失点 ●
2018/4/25 4回5失点 ●
2019/4/2 7回4失点
2020/6/19 4回6失点
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1勝4敗 44.2回31失点(自責同)6.25
だが、もはや過去のデータを持ち出して初登板云々を語る投手ではない。大型契約を結んだ今年からはチームの顔として、昨年の沢村賞投手の矜持をもってして勝負に挑まなければいけない。
……とは言うものの、最優秀防御率のタイトルを引っさげて臨んだ昨季の開幕戦も大野は打ち込まれた。揺るぎない信用の中にも心のどこかに不信がちらつくという、なんとも言えない思いでプレイボールの声を聞いた。
疑念を晴らした7回2失点
初回からランナーを溜める苦しい投球、ボールも高めに集まり球の強さでフライアウトを重ねていったものの、いつ大量失点に繋がってもおかしくない状態でイニングは進行していった。
3回には先頭の梶谷隆幸に三塁打を浴び、次打者のウィーラーにはセンター前に弾かれてあっさりと先制されると、打線が逆転した直後の4回には中島宏之には初球をレフトスタンドへ一発を浴びてしまった。失点はいずれも先頭打者の長打からであり、いずれも甘いコースだった。
序盤3回を終えた時点で60球を超えていた球数もどうだろう、気づいてみれば7回112球。球の勢いはそのままに、制球力はイニングを重ねるごとに修正されHQSの基準をクリアしたのはさすがとしか言いようがない。
ちなみに昨年投じた総球数は20登板で2207球。1試合平均110球とあれだけ序盤のゲームメイクに苦しみながらも昨年の平均並の投球数に戻している。
打順の巡りで代打が出た関係で8回のマウンドに立つことはなかったが、監督・コーチとの話し合いを経てキャッチボールをする姿は歴代のエースのそれをダブらせ、チームを引っ張っていくことへの強い気持ちを感じた。
厳しさが見えた降板後コメント
だが、大野に勝ち星はつかなかった。試合後の談話では 「最初は力んだけど、徐々に落ち着いて投げられるようになりました」とHQSを達成したことに合格点を与えながらも 、「ビシエドのタイムリーで逃げ切りたかったのですが、次の回の中島さんへの投球を反省して、次に生かしたいです」 と厳しい言葉で投球を振り返った。
一旦はリードしながらも一瞬で手放した今日の試合。「本気で優勝を狙うシーズン」 において、エースが投げる試合の重み、そしてその重みを一身に背負う大野の覚悟をあらためて感じた談話であった。
明日の18時になればまたプレイボールの声は球場に響く。そしてまた私達は固唾を飲んで試合の行方を見守る。画面越しとはいえギュッと張り詰めた空気を感じながら野球に没頭する時間が、私は大好きだ。【yuya】
※選手、監督コメント引用
「中日スポーツ」