ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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Point of No Return

△0-0広島(3回戦)

 1勝1敗で迎えた開幕シリーズGame 3はスコアレスドロー。相手の広島は16残塁と、ドラゴンズとしては正直「よくゼロで守りきった」展開だった。

 

粘りのピッチング

 先発は背番号11・小笠原慎之介。毎回ランナーを許し、球数も109球を要したが、結果的には6回5安打無失点でしのいだ。寒空のマウンドにもかかわらず、半袖姿で再三のピンチを抑える投球は見る者を熱くさせた。

 特に印象的だったのが、3回と6回だ。

 3回裏、無死一、二塁。3番・西川龍馬を5-5-3の併殺打、4番・鈴木誠也を一邪飛に抑えてピンチを脱した。鈴木への2-1からの4球目、内角低めに決まる150キロでストライク。最後はインハイで詰まらせて、良いように打撃をさせなかった。

 6回は無死二塁。しかも、レフト・根尾昂が平凡なフライの目測を誤りエラーしての二進。気落ちしてもおかしくない状況で、それでも小笠原はクロン、堂林翔太、會澤翼をそれぞれ凡打に抑えた。このときはさすがに雄叫びを見せていた。

 この2イニングを含めて、得点圏に走者を背負った回数は4回。粘りのピッチングだった。

 現状、小笠原が投じるのは、出力の上がった真っすぐ、縦回転の強いカーブ、直球を “偽装” するチェンジアップの3種類。先発としては球種がやや少ないが、質の高さとコンビネーションで乗り切った格好だ。

 

野球人生をかけるシーズン

 甲子園優勝投手の看板を引っさげてプロ入り後、はや6年が経つ。小笠原が昨季までの5年間で挙げた勝利数は16。負けの数はそれを上回る24、通算防御率は4.19と、正直期待に応えたとは言い難い。本人もおそらく、「こんなはずじゃなかった」と思っているはずだ。

 今季はエース・大野雄大に何度も頭を下げて自主トレ参加許可を得るところから始まった。沢村賞投手の教えを請い、自らの生命線である真っすぐを磨き込んだ。キャンプ、オープン戦でもコンディションの良さをアピールしてつかんだのが、今日のマウンドだった。

 3年前にも、マツダスタジアムで今日と同じように野村祐輔と開幕戦を投げあった(敗戦投手に終わっている)。このときは時の政権による抜てき人事の色合いが強く、いわば「与えられたもの」。しかし、今回は結果を残し続けての開幕ローテ入り。いまの与田剛監督は「一本立ちできるかどうかにかかっている」と期待をかけているが、あのときとは状況はまるで違う。

「この5年は……何もしていないなという感じですね。毎年結果を振り返ると、今年も全然だったなの繰り返し。やらなきゃいけないという言葉に、自分が勝手にやられてしまったというか。周りから見たら “何しているの、こいつ” みたいな感じに見えていたでしょうね。そこまでそんなに求められていないのに」


 ここまでさっぱりと過去を振り返ることができるなら、きっともう前を向けている。野球人生をかける “NEW慎之介” の初勝利はすぐそこだ。【ikki】

 

※選手・監督コメント引用
「中日スポーツ」「週刊ベースボール」