ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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本気で優勝を狙うシーズン

○7-6広島(1回戦)

 7回終わってドラゴンズ打線が広島先発・大瀬良大地に投げさせた球数は、わずか67球。正直いって4点ビハインドを跳ね返せる気配など微塵もなく、せいぜい完封阻止が関の山かと諦めかけたファンも少なくないだろう。無論、私もその一人だ。

 開幕戦から史上最少の省エネ完封なんて食らった日にゃたまらんなあ……と冗談半分で笑いながらも、その時が刻一刻と近づいていると思うと背筋が寒くなる思いがした。

 ところが8回表、ドラマは突然に急展開をみせた。81球完封ペースで快調に飛ばす大瀬良を掴まえたのは先頭の木下拓哉だった。

 4回裏には盗塁刺殺も記録した “竜の正捕手” が、今度はストレートを弾き返してチャンスメーク。根尾が倒れて1死二塁となり、打席には代打・福留孝介が送られた。

 プロ23年目の威圧感にさすがの大瀬良も気圧されたのだろうか。カウント2-2からストレートが2球外れ、痛感の四球を与えてしまう。この時点でまだ4点差だが、大瀬良を動揺させるならヘタに本塁打で2点返すよりも、こうやってじわじわと追い詰めた方が効果的だったのかも知れない。

 まさに代打・福留はドラゴンズでの復帰一打席目から最高のパフォーマンスを披露したと言えるだろう。そしてこの43歳が選んだ渾身の四球を足がかりに、怒涛の猛攻撃が始まるわけである。

 

四球から繋がった7得点

 たった2イニングで7点奪って試合をひっくり返した今夜のミラクル・ドラゴンズ劇場。いずれのイニングも「四球」が大きな意味を持ったのは特筆すべき点だ。

 8回表は福留。そして貴重な追加点を挙げた9回表は、この日4打席目となる根尾昂がきっかけを作った。第1打席でいきなり安打が出た根尾は、2回裏にはフェンスギリギリでフライに追いつく好プレーを披露。この打席でも落ちる球や釣り球を冷静に見極めて出塁すると、ここから打線がつながり2点を追加した。

 ドラゴンズといえば得点力不足の要因として「四球の少なさ」が指摘されて久しい。今日も7回までは大瀬良の前に四球0と成す術も無く、昨季までならこのまま負けていた可能性もあっただろう。

 そこにきて福留と根尾という親子ほど年齢の離れた二人が、淡白な攻撃パターンに新しい風を吹かせてくれたのは、チームにとって大きな意味を持つ。

 

冴えまくった与田采配

 一方、8回裏のベンチワークにも特筆すべき点があった。逆転した直後のこのイニングは福敬登が無死一、二塁とピンチを作るも、松山竜平の鋭いサードゴロを高橋周平が冷静に処理してダプルプレーが完成。

 2死二塁と多少は気楽になったが、打席にクロンを迎えたところでベンチはすかさず福に代えて又吉克樹を投入したのだ。

 延長なしの9回打ち切りのためリリーフ陣を投入しやすいという環境ではあるのだろう。しかし、福といえば昨季のタイトルホルダーだ。そう易々と交代するのも躊躇しそうなものだが、与田監督には迷いがなかった。結果、又吉はわずか1球でこのピンチを凌いだのだから采配は的中した形となる。

 ここだけではない。今夜の与田采配は冴えまくっていた。福留を代打に送るタイミングもそう。四球で歩いた根尾の代走に高松渡を送ったのもそう。この高松が盗塁を決めたのも実に鮮やかだった。

 このように終盤は与田の巧みなタクトさばきが勝利に導いたといっても過言ではない。

 昨季のAクラス争いを制して強くなった選手たち。そこに加わった海千山千の仕事人。目をぎらつかせて躍動する若手たち。そして2年間の経験を経て進化したベンチワーク。

 今夜の試合を踏まえてあらためて叫びたい。2021年は本気で優勝を狙うシーズンだ! と。

【木俣はようやっとる】