ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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有終の美

○3-2広島(24回戦)

 例年よりも少ない全120試合を消化し、中日ドラゴンズの2020年シーズンが幕を閉じた。

 最終戦のオーダーは根尾昂をトップバッターに据えた消化試合仕様。根尾はセンターとセカンドの守備を卒なくこなし、打ってはプロ2安打目となるライト前ヒットでチャンスマーク。先制点の足がかりを作った。

 フェニックスリーグには帯同せず、この一軍最終戦でフル出場した意味が、クレバーな根尾ならよく理解できていることだろう。攻守ともに到底一軍レベルには及ばなかった昨年と比べれば、その成長っぷりは歴然。来年は勝負の3年目。一軍で姿を見る機会もうんと増えるはずだ。

 先発の柳裕也は、開幕前は大野雄大との左右のエースとして期待されたものの、怪我に足を引っ張られる形で失意のシーズンを過ごした。それでもAクラス争いが激化した終盤になると本来の調子を取り戻し、森下暢仁との明大対決では先輩の貫禄を見せたりもした。

 今日は完封まであと1アウトまで行きながら、連打を食らって惜しくも降板。悔しさばかりが残ったが、それでも9回2死までの投球は来年に向けて大いに期待が抱ける内容だった。優勝を狙うには柳の存在は不可欠だ。この悔しさは、来年晴らせばいい。

 今日の試合を見ていて何よりも頼もしかったのは、消化試合でありながら選手全員が本気(と書いてマジ)で勝利を目指して戦っていたことだ。

 完封が途切れ、憮然とした表情でベンチに戻る柳。必死で食らいついて貴重な追加点をもぎとった桂依央利。この時期ならではのダレた空気は一切なし。最後まで全力で勝ちに行く姿勢がチーム全体に浸透した事こそが、2020年最大の収穫だったと言えるのかもしれない。

 最後は少しヒヤヒヤしたが、勝って有終の美を飾れて本当に良かった。

 

優勝を狙うシーズンで

 情報が駆け巡ったのは深夜のようだが、私が知ったのは朝6時だった。いつもと同じように起床と同時に目をこすりながらスマホを開くと、眠気が吹き飛ぶような見出しが飛び込んできた。

 「大野雄大、残竜」

 先日のインタビュー内容からして残留はほぼ間違いなしと確信こそしていたが、何が起こるか分からないのがFA戦線だ。Aクラス確定の達成感と、吉見一起の引退セレモニーの感慨で一時的な熱にのぼせ上がったものの、数日経って冷静になったら考えが変わってしまうのではないか。

 そんな不安に駆られながら、とにかく早く「残留」の二文字が見たい。そう思い続けながら過ごした数日間だった。とはいえ本人も言うように、どんなに早くてもシーズン最終戦の後か、あるいは日本シリーズ後、FA申請期間のギリギリまで待つことになるかもしれないと覚悟していたつもりだ。そうなったら気が気じゃないだろうが。

 10日には与田監督の直接出馬も報じられるなど、中日の話題は一気にAクラス争いから大野の去就へと移行していた。やれ沢村賞だ、やれメジャーからも熱視線だとか世間の評価は上がるばかり。こんな状況ではたとえ8割方決めていても、残りの2割に流されてしまうのが煩悩というもの。「他球団の評価を聞いてみたい」ーーついこんな言葉を口走ってしまうのではないかと、また不安になる。

 しかし大野は、俺たちの大野はぶれなかった。おそらく近いうちに本人のコメントが出て、決断に至った経緯も語られるだろう。今はただ、どんな言葉で中日愛を表現するのかが楽しみで仕方がない。

 気が早いが来年の開幕は3月26日。奇しくも今日と同じマツダスタジアムからスタートする。その先発マウンドに立つのはもちろん背番号「22」、中日が誇る大エース・大野雄大を置いて他にはいない。

 

 ありがとう大野、ありがとう与田監督、ならびに中日ドラゴンズの全ての関係者の方々。つくづく中日が好きで本当に良かったと思えるシーズンでした。そしてまた、拙い文章にお付き合い頂いた皆様にも感謝の念が尽きません。また来年、優勝を狙うシーズンでお会いしましょう。