ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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戦うことが、運命だった

●0-3広島(23回戦)

 中日が1点も取れずに敗れ散った約20分後、横浜スタジアムでは梶谷隆幸のサヨナラ打で4位DeNAが劇的勝利を収めた。これで両チームの差は0.5ゲーム。3日からの直接対決は、まさしくAクラスを懸けた天王山となる。

 不思議な感覚だった。昨日までは中日が負け、DeNAが勝つたびに強いストレスに苛まれたり、やり場のない怒りに震えていたというのに。最悪な形に終わった今日は、なぜか清々しく現実を受け入れることができた。

 9回裏2死三塁。梶谷の打球がレフト前に弾んだ瞬間、私は思わず笑ってしまった。もし1.5差で直接対決を迎えれば、たとえ負け越しても首の皮一枚残して3位にしがみつくことはできる。しかし0.5差となれば、もはやスイープか勝ち越ししか許されない。DeNAのこの試合の勝敗は、中日の命運に直結すると言っても過言ではなかった。

 

風はDeNAの背を押した

 阪神は8回に無死満塁、9回に1死満塁のチャンスをつかみながらあと一本が出なかった。一方のDeNAは、数少ないチャンスをモノにしてのサヨナラ勝ちである。今日だけじゃない。このカード、「風」は常にDeNAの背を押すように吹いていた。初戦は9回2死から起死回生の同点弾が飛び出し、直後の満塁のピンチでは押し出し死球かと思われた判定がファウルに覆る“幸運”にも恵まれた。

 また今日も8回満塁から坂本誠志郎の三塁線への痛烈な打球は抜けたかのように見え、スタジアムも大きなどよめきに包まれたが、これが間一髪ラインを割っておりファウル判定。また9回2死満塁での木浪聖也のいい当たりも前寄りに守っていたセンターの正面を突くなど、神の見えざる手に導かれるようにしてDeNAは3連敗してもおかしくない試合内容ながら、3連戦を1勝1敗1分で乗り切った。

 その前の巨人戦では誰しもが想像すらしていなかった3連勝で胴上げを阻止し、その裏で中日が阪神に3連敗。とにかく全ての事柄がDeNAにとって有利に働いた一週間だった。

 中日にとっては、突然始まった悪夢の展開である。あれよあれよと言う間に3連敗し、あれよあれよと言う間に連敗は6まで伸びた。こないだまで左うちわで2位を謳歌していたのがウソのようである。

 

Aクラス争いにも飽きてきた

 信じられないようなミスの連鎖から始まったこの展開は、オカルト的な見方をすれば運命だったようにも思えてならない。中日の突然の凋落。都合よく泥沼にはまった巨人。そしてDeNAの躍進。その全てが偶々同じタイミングで起こり、0.5差で直接対決を迎えるーー。こんなにうまく物事って運ぶものだろうか。

 もしこれが野球の神様とやらが仕組んだイタズラだとすれば、おそらく中日がAクラスに上がるに相応しいチームかどうかを試しているのだと思う。ここで試練を跳ね返さないようなら8年連続Bクラスもやむ無し。それがイヤなら自力で跳ね返すのみ。こんなに燃える展開はない。

 1994年10月6日の夜。ヤクルトにまさかの敗北を喫した巨人・長嶋茂雄監督は、翌々日の中日との一戦が史上初の最終戦同率優勝決定試合になったことについて、薄らと笑みを浮かべながらこう言い切ったという。「いいでしょう! 130試合目で決まるんだ。泣いても笑ってもあと一つ。そういう試合ができる選手は幸せですよ」(鷲田康,2013『10.8 巨人vs.中日 史上最高の決戦』 文藝春秋)。

 もちろん優勝が決まる大一番と、Aクラスを争う3連戦とでは重みの違いは歴然。引き合いに出すのもおこがましいが、しかし殊に中日にとっては少なくとも過去7年間には無かった、重要な3連戦になることは間違いない。

 この一週間、中日が負けてもDeNAが負ければ云々……と勝敗表とにらめっこしながら色々計算してきたが、もうその必要もない。

 ちょうどAクラス争いにも飽きてきたところだ。そろそろ蹴りをつけようか。運命のナゴヤ決戦へ。要は勝ちゃいいんだ、勝ちゃ。