ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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2020年ラストスパートの地獄

●3-9広島(22回戦)

 福敬登にとって27日のエラーは、一度の失敗では割り切れないほどショックが大きかったようだ。

 確かにあの時の福の落ち込みようは尋常ではなかった。滝野要が落球したその瞬間、まだインプレー中にもかかわらず両手を膝に当て、がっくりとうな垂れる姿にはその落胆ぶりが端的に表れていた。そこに至るまで二つのエラーを重ねた自分自身への怒りもあったのだろう。

 だが味方のミスに対してあれほど露骨に感情を出してしまった事こそが、福の犯した最大のエラーだったのではないか。

 あの日、あのイニングからチームは闇を彷徨い続け、4日経った今もなお出口を見つけられずにいる。8回表、その扉を開けた張本人である福がマウンドに上がった。あの日以来の登板。福から始まった負の連鎖は、福が止めるべきだ。

 しかしその先には、恐れていたよりも更に残酷な現実が待ち構えていた。

 

福、憔悴

 無死満塁から走者一掃の逆転タイムリーなどで一気に5点を失った福には、もはや強がる気力すら残っていなかった。茫然自失とはこういう状態をいうのだろう。降板後、福はベンチの片隅でうずくまったまま動けなくなった。長く中日の試合を見ているが、試合中にここまで精気を失った選手というのは記憶にない。あまりの憔悴ぶりでちょっと心配になるほどだった。

 代わったゴンサレスも2ランを打たれ、スコアボードにはあまりにも重すぎる「7」が刻まれた。2試合連続となる終盤の逆転負け。一度崩れた“神話”はかくも脆いのか。ライデル不在を最後までカヴァーして完走できるほど甘くないことは覚悟していたが、これほど一気に崩壊するとは想定外だった。

 

泣いても笑っても残り6試合

 最大「8」あった貯金は「3」まで減った。幸いDeNAも敗れたため、Aクラスへのマジックは1個減って「6」となったが、今の中日には1.5差というアドバンテージなど無いも同然。残り6試合で1勝できるイメージすら全く浮かばないのが実情だ。

 6試合のうち3試合がDeNAとの直接対決。その前に明日は新人王へとひた走る森下暢仁が立ちはだかる。前回と同じ柳裕也との明治大学対決となるが、2週間前にはまだ絶好調だった中日打線をして森下からは1点取るのがやっとだった。いわんや現在の打線で森下を打ち崩せるとは……残念ながら全く思えない。

 ナゴヤに戻ってきても依然として中日は息を吹き返せずにいる。むしろその状態は日を追うごとに深刻化の一途を辿っているようにも映る。5連敗は今季ワースト。一時は9あった借金生活から奇跡的に貯金生活へと転じたのは、どれだけチーム状態が悪くなろうと連敗を4までに食い止めた為だった。それがここにきて遂に決壊。阪神戦のようなノーチャンスの惨敗はともかく、昨日今日と勝てる試合もモノにできなくなったのは本当にマズい。

 残り6試合。そう、泣いても笑っても6試合しかないのだ。今さら怪我人は戻ってこない。現有戦力で戦い抜くしかない。疲労はピークに達しているだろう。心身ともにヘロヘロだろう。だが、ここで折れてしまったら何のための一年間だったのか。これまでの蓄積が全て無に帰してしまう。

 あの鮮やかな快進撃をウソにしないためにも、残りわずか6試合は全身全霊で勝ちに行って欲しい。よみがえれ、ドラゴンズ。2020年ラストスパートの地獄を、どうか笑い話として振り返らせてくれ。