ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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信じられるものが無くなった

●3-17広島(21回戦)

 10月27日、阪神戦の8回裏。ミスの連鎖で中日の快進撃は終わり、代わりに始まったのは目を覆いたくなるような現実だった。

 アルモンテが消え、ライデルが消え、ビシエドまでもが消えた。容赦なく襲いかかる離脱のスパイラルが、悲願のAクラスに向けて一丸となる中日を呑み込んだ。

 それでも中日ナインは必死で食らいついた。ライデルがいなくてもDeNA相手にスイープを決め、連続カード勝ち越しはその後「7」にまで伸びた。この時点で残り11試合。もう大丈夫だ。多少勢いが落ちてもAクラスは揺るぎない。なんなら二桁貯金でのフィニッシュも狙えるのではないか。

 Bクラス転落? まさか。余程のことがない限りは起こるわけがない。そう、余程のことがない限りはーー。

 

神話崩壊

 序盤から悪送球、ボーク、パスボールとバッテリーのミスが相次いだ今日の試合。それでも阿部寿樹の同点ホームラン、そしてアリエル・マルティネスの勝ち越しタイムリーで盛り上がった瞬間もあった。6回終了時点でスコアは3-2。1点差ながら、目下37連勝中の“神話”が今夜も幕を開けた。

 快進撃を支えた最強のリリーフ陣もライデルの離脱で青息吐息ながら、残ったメンバーがなんとか踏ん張って神話は続いていた。これを失えば、もはや信じられるものは無くなってしまう。ボロボロの状態のチームに残された、いわば最後の拠り所だ。

 しかし悪い流れというのは恐ろしいもので、先陣を切って登場した谷元圭介がピリッとせず、連打を浴びて逆転を許してしまう。さらに代わった藤嶋健人も犠飛を打たれ、あっという間に3点ビハインド。夏場から延々と続いてきた神話は、あろうことか最もしんどいタイミングで終焉を迎えた。

 そこから先は文字通りの地獄だった。7、8、9回の3イニングで15失点。血に飢えた鬼舞辻無惨も同情して見逃してくれるレベルの醜態を晒し、終いには青冷めた佐藤優を眺めるだけの残酷ショーと化したのだった。

 

「やることをやる」

 それでもDeNAが負けさえすれば着実にAクラスへの歩みは前進するのだが、よりによって9回2死からの同点ホームランで引き分けに持ち込み、ゲーム差はデッドラインとも言える1.5差にまで縮まった。

 Aクラスは風前の灯火。優勝可能性が消え、試合後コメントを求められた与田監督は「最後までやることをやった上でいろんなことを総括したい」と残りの試合に集中する決意をにじませた。だが、その起用法を見て「やることをやっている」とはどうしても思えないのも事実だ。

 2回表、守備のアクシデントで負傷退場した福田永将に代わって出てきたのは、案の定と言うべきか堂上直倫だった。アリエルと石垣雅海をベンチに残した状態で、「5番ファースト」に堂上が入った。

 怪我明けでぶっつけ本番のような形のアリエルはともかく、二軍で3試合連続長打を記録するなど好調を維持する石垣よりも優先して堂上に固執する理由は、少なくとも数字の上からは見えてこない。

 なにも闇雲に石垣を使えと言っているわけではない。堂上が絶好調ならまったく異論は無いのだが、素人目にもバットが振れているのは明らかに石垣の方だ。石垣は14点差が付いた9回裏、その堂上に代わる代打として27日ぶりの打席に立った。結果はレフトフライ。数少ないチャンスを活かせず、首脳陣の信頼を勝ち取ることはできなかった。次に打席がもらえるのは、やはり大量ビハインドが付いた場面になるのだろうか。

 と、まあ色々と皮肉を書き連ねてきたが、シーズン残り7試合、一戦必勝が求められる状況での「やることをやる」とは、事前に決めた序列を律儀に守り通すことではないはずだ。神話が崩れ、信じるものが無くなった今、どうか与田監督には後悔なく「やることをやって」もらいたい。最後の最後に笑って終幕を迎えるためにも……。