ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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最後の1ピース

●5-9ヤクルト(22回戦)

 「借りてきた猫」という慣用句があるが、ビジターの松葉貴大はまさにこれ。ホームでは3勝0敗、防御率1.27と抜群の安定感を誇るのに対し、ビジターだと0勝6敗、防御率5.45と途端に成績がガタ落ちになる。

 確かにナゴヤドームは投げやすい球場だろう。ナゴヤドームが苦手だと公言した投手は朝倉健太くらいのものだ。それにしたって、いくらなんでもこの落差はひどい。ここまで差があると、もはやホームの松葉とビジターの松葉は全くの別人と言っても過言ではない。

 そして今夜の舞台は神宮球場。数ある屋外球場の中でも、とりわけ点が入りやすい “バカ試合” の聖地である。屋外が苦手な松葉と、ナイターの神宮。この組み合わせで何も起こらないはずもなく……。

 案の定、見事なまでの不甲斐ない投球で、久々に負け試合らしい負け試合を演出したのであった。

 

連勝止まるも油断は見られず

 今週も4連勝とウィークデーを無敗で過ごした中日にとって、はっきり言えば今日の一敗などは蚊に刺された程度のものだ。デーゲームでDeNAが負け、Aクラス入りへのマジックは「8」となった。かなり余裕がある状況には違いないが、それでも負けは負け。やはり悔しいものである。そして、この気持ちを失くしたらすぐに元の弱い中日に逆戻りしてしまいそうな怖さもある。

 連勝が12で止まったソフトバンクの工藤監督が試合後、「自分の責任」と言って反省を述べていた。あれだけ勝って、優勝もまず間違いないのだから、もっとジョークなんかも交えて余裕のあるコメントを出しても良さそうなものだが、そこはさすが常勝軍団の意識の高さというか。決して驕らず、常に省みることを忘れない姿勢。これが強さの秘訣なのだと感じた。

 油断ほど怖いものはない。中日は昨日までの15試合で13勝2敗と、信じ難いほどの勢いでたちまち2位へと駆け上がった。何しろ不遇の時代が7年間も続いた反動から、つい図に乗ってプレーが疎かになりやしないかと心配しながら見ていたのだが、どうやら今日の試合を見る限りは杞憂だったようだ。

 

最後の1ピース

 序盤から終始ビハインドを背負う展開ながら、無抵抗のまま終わるのではなく中日打線は必死に食い下がり、ほんの少しだがヤクルトベンチをヒヤリとさせる攻撃ができたと思う。

 特に約1ヶ月半ぶりのスタメン復帰となった福田永将は、チームの快進撃に参加できず忸怩たる想いがあったのだろう。逆方向へのホームラン、さらに左中間を破る2点タイムリーはいずれも福田らしい豪快な当たりで、残り少ないながらもレフトのポジションを奪い返すのだという気迫がみなぎっていた。

 “マラソンはラストスパートが一番しんどい” と言うように、残り12試合を残すのみとなったペナントレースも、ここからが最後の踏ん張りどころだ。既にチームは離脱者が続出し、なんとか勢いで持っているようなもの。そんな中でのベテラン復帰は本当に頼もしく、「待たせたな」感が格好良くもある。

 アルモンテがいない、ライデルもいない。だが福田が帰ってきた。昨日の又吉克樹の話にも通じるが、福田も暗黒時代を支えた選手の一人だ。長く暗いトンネルを抜け出す瞬間を目の当たりにする権利は、当然ある。

 そしてもう一人。時には心ない野次を飛ばす観客に対して感情を露わにして仲間を庇い、時には日の丸を背負うなど中日の顔として活躍した、あのベテランこそがAクラス入りへの最後の1ピースになるのだと私は信じている。待ってるぜ、平田良介。