ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ライデルなき戦い

◯4-2DeNA(20回戦)

 感情の起伏が激しい一日だった。まず朝、起きるなり目に飛び込んできたのは『阪神福留孝介、事実上の戦力外通告』の見出しだった。福留自身は現役続行を希望しており、移籍先を模索する方向だという。

 来年44歳になる福留を喜んで迎え入れる球団があるとすれば、それは間違いなく中日であるはずだ。阪神のユニフォームにも馴染み、近い将来の幹部候補とも囁かれ、古巣復帰はもはや叶わない夢かと思われた。そんな中での降って湧いたような戦力外報道である。もし復帰となれば14年ぶり。「獲って欲しい」ーー個人的には、心からそう思う。

 もちろん賛ばかりではなく、否の意見もあるだろう。今シーズンは大半を二軍で過ごし、一軍成績も打率.154と深刻な不振に陥っている。単なる不振ならまだしも、これが加齢による衰えであることは疑いようもない。そんな選手を登録枠を潰してまで獲得する必要があるのか。ごもっともな意見だ。

 現に獲得に前のめりな私のようなファンも、編成の整合性よりも感情が先走っている感は否めない。もしこれが福留ではなく、同じ成績の別のベテラン選手なら真っ向から反対する事案だ。

 しかし、それでも福留孝介はやっぱり我々世代にとって特別な存在なのだ。荒木雅博や森野将彦といった中日一筋を貫いた黄金戦士達ともまた違う、孤高のオーラ、圧倒的な風格。

 最後は中日で終わって欲しい。ずっと心の中に閉まっていた感情が、にわかに現実味を帯び始めた。

 

ライデル抹消の衝撃

 夕方は、朝の高揚感とは正反対のどんよりした感情に苛まれた。ライデル・マルティネスのコンディショニング不良による抹消。どうポジティブに繕ったところで、痛いものは痛い。致命傷にもなりかねない大きすぎる離脱だ。

 ただ、不幸中の幸いにして残り試合はわずか16。ライデルの存在が直接的に響くのはせいぜい4,5試合といったところだろう。その程度であれば、ギリギリ凌げるラインと言えなくもない。

 ライデルの代わりは誰にもできない。だが大きな穴を全員の力で少しずつ埋め合わせることはできる。たとえ綻びだらけでも、16試合ならなんとか誤魔化せる。いないものはいない。腹をくくってラストスパートを駆け抜けるのみだ。

 

谷元の踏ん張り、ビシエドの一振り

 しかしライデル無き中日は、やはり何かがおかしかった。試合開始から一貫して、なんとなく普段よりも重い空気感が伝わって来たのは私だけではないはずだ。意識するなと言っても無理。そりゃそうだ、8月半ばから始まった快進撃は、いわばライデルがいたからこそ一度の失敗もなくここまで続いたのだ。ただでさえ疲弊しているのに、これまで以上に祖父江大輔や福敬登、その他のリリーフに負担がかかるのは避けようがない。

 試合は再三のチャンスも生かせず、「あと一本」が出ないまま1点のビハインドを背負って終盤を迎えた。すると7回表、ここまで2失点と踏ん張っていた勝野昌慶が1死からヒットを許すと、ベンチはすかさず谷元圭介にスイッチ。ライデル不在の状況で、しかもビハインドにもかかわらず勝ちパターンの投手に託す起用法からは、何がなんでもAクラス入りを決めるのだという執念のようなものを感じずにはいられなかった。

 その谷元は満塁のピンチを作るも、問題のオースティンを見事空振り三振に打ち取った。渾身のストレート。この瞬間、心の中に立ち込めていた霧のようなものが晴れるのを感じた。そして7回裏。この試合5度目となる得点圏で、4番ビシエドが一振りで決めてくれた。中日ファンが待つライトスタンドに飛び込む逆転3ラン。もはやお家芸ともいえる終盤の猛攻で一気に試合をひっくり返した。

 

チームの命運を懸けたマウンド

 だが、本当にしんどいのはここからだ。2点リードの8、9回。ライデルを必要とする状況がいきなり訪れた。昨日の起用法からクローザー代行は祖父江かと思われたが、祖父江は8回に登板。ピンチを作るも慌てずに無失点でバトンを繋いだ。

 となると、最後はもちろん福である。昨季から厳しい場面には慣れていても、意外にもセーブシチュエーションでの登板は初。さぞかし緊張していたことだろう。1死からランナーを二人出して、ソト、オースティンという地獄の並びが巡ってきてしまった。

 ここでダメならライデル不在をもろに痛感する格好となり、単なる1敗以上のダメージを食らいかねない。まさに残り15試合のチームの命運を懸けたマウンド……。そのくらい重要な場面だったが、福は臆することなく両外国人に立ち向かい、見事プロ入り初のセーブをマーク。そして8年ぶりの貯金「6」をチームにもたらした。

 アルモンテがいない。ライデルもいない。それでも勢いを落とすことなく勝ち進む。これこそ長年憧れ求めて来た本当に強いチームの姿ではないか。頼もしい選手達を乗せ、竜は再び上昇を始めた。