ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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逆転と畳みかけ

○6-1DeNA(19回戦)

 1988年の中日は終盤にひっくり返す劇的な試合が多く、「逆転の竜」「ミラクルドラゴンズ」とか言われて敵球団に恐れられたという。ファンにとっては胸がすくような、たまらない展開だったことだろう。当時2歳。リアルタイムで見られなかったのが悔しくてたまらない。

 それに引き換え、近年の中日の逆転試合の少なさときたら。ひとたびリードされたらそのまま負けることがほとんど。特に昨季はひどく、6回終了時点でビハインドだった場合の勝率は.035(2勝55敗1分)と12球団ワーストを記録。6回まで見て負けていれば心置きなく風呂に入るなり酒を飲むなり他の楽しみに時間を割けるのだから、ある意味ではファンに優しい惨敗っぷりだったとも言える。

 しかし最近はどうだ。17日まで続いた7連勝のうち、実に5勝が逆転ゲーム。中でも高橋周平の逆転サヨナラ3ランは今年のみならずここ数年でのベストシーンと言えるほどだが、昨季に至っては9回に逆転したケース自体が一度もなかったのだから、そりゃ珍しいモノを見た気にもなるわけだ。

 終盤の大逆転といえば、被害に遭うのはいつも中日だった。パッと思いつくだけで悪夢の記憶は片手じゃ足りないほど。それが今や、中日が “やる側” になりつつあるのだ。ずっと憧れていた  “やられてもやり返せる野球” は、今日から始まったDeNAとのガチンコ直接対決第1Rでも如何なく発揮された。

 

逆転と畳みかけ

 大貫晋一は、今やDeNAの先発陣を支える存在になりつつある。規定投球回数にこそ達していないものの、防御率は大野雄大、菅野智之、西勇輝といった各球団のエース球と互角の数値をマークしており、初の二桁勝利にも王手をかけている。

 昨年7月、ナゴヤドームで8回2失点に抑えられてプロ初白星を献上した際は、ルーキー相手に手も足も出ない中日打線が情けないという見方が大半を占めたが、今になって思えば大貫自身がそんじょそこらのルーキーとはひと味違ったのだろう。

 今年もすでに3勝を献上。“ドラゴンズキラー” なんて呼び名もあるとか無いとか。2位攻防戦の初戦に相対する投手としては、最も見たくない顔である。なんとか先制をーーの願いもむなしく、1回表にいきなり福谷浩司がオースティンにホームランを浴び、ビハインドでのスタートとなった。なんと18本中7本が中日戦で打ったもの。なんか怨みでもあるのかと疑いたくなる成績だ。

 最近の勢いなら1点くらいなんて事はないが、何しろ相手は大貫である。この1点が重くのしかかる展開にならなければ良いが……。そんな予感が的中するかのように中日は相次ぐチャンスを逸し、1-0で膠着したまま試合は中盤に差し掛かった。勝ち筋を見出すには、なんとか1点差のうちに追いつきたいところ。いわゆる「次の一点がどちらに入るかで勝負が決まる」というやつだ。

 警戒すべきは重量打線の一発。特に6回表は、オースティン、佐野恵太、宮﨑敏郎と怖い打者が並ぶ、まさに踏ん張りどころだ。しかし福谷がこのイニングをわずか9球で三者凡退に凌いだ。これで流れが変わった。直後、先頭の京田陽太がフェンス直撃のツーベースで出塁。さらに阿部寿樹のセンター前でまずは同点。ゲッツーのない場面ではマスターは頼りになるのだ。

 だが、これで満足しないのが最近の中日だ。4番ビシエドに勝ち越しタイムリーが飛び出すと、さらに1死を挟んでシエラも中押しタイムリーで続いた。畳みかける攻撃で一挙3点を取り、逆転。大貫をマウンドから引きずり落とした。逆転も畳みかけも、去年までは出来なかった攻撃だ。こういう辺りにチーム力の向上を感じる。

 そして気付けば6回終了時点リード。今日もまたこの形を作れた。こうなれば、あとは勝利に向かってアウトを一つずつ積み重ねていくだけの作業だ。福谷が課題の7回を難なくクリア。8回は福敬登がピシャリと抑え、5点差の最終回に登板したのは祖父江大輔だった。ブルペンでは藤嶋健人も投げていたが、先日同じく5点リードの状況で登板して痛い目を見ただけに、万が一を考慮して安全策を取ったのは妥当な判断だろう。

 

 残り16試合となり、貯金は再び今シーズン最多タイの「5」。贅沢は言わない。残りを5割で乗り切れば……8年ぶりのAクラスまで、もうあと少しだ。