ちうにちを考える

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京田にロマンを見たい

○4-2阪神(19回戦)

 先々週のビジター9連戦に続き、今週もなかなか難儀な組み合わせとなっている。日程自体はナゴヤで3試合、マツダで3試合とごく普通の内容だが、問題は中身である。

 阪神戦の先発は高橋遥人、青柳晃洋、前回やられた岩田稔と苦手な投手揃い。ひょっとすると3試合目は西勇輝が来るのではとも予想されている。

 さらに広島戦は新人王に向かって邁進中の森下暢仁との対戦が決定的。ヘタすれば大コケしてもおかしくないほど強敵揃いの一週間なのである。だからこそ巨人戦で勝ち越せたのが非常に大きな意味を持つのだが、そうは言ってもホームでは勝ち越したいものだ。

 その初戦となった今日。高橋遥は前回の対戦で初めて土を付けたものの、そう簡単に攻略できる相手ではない。なんとか勝野昌慶が踏ん張っているうちに1、2点をもぎ取って逃げ切ることできればーー。やや消極的なビジョンが頭をかすめたが、蓋を開けてみれば試合は序盤から思わぬ展開をみせた。

 先にやられたのは勝野だった。2死三塁。4番大山悠輔の一発は、打った瞬間それと分かる軌道を描いてレフトスタンドに突き刺さった。高橋遥相手にいきなりの2点ビハインド。厳しい立ち上がりである。

 

「先制されたら終わり」ではない

 “自前の長距離打者を育てられない芸人” として長年一緒に歩調を合わせてきた阪神が、久々に和製大砲を育ててしまった。豪快な26号をぶち込み、大山が巨人・岡本和真を抜いて単独キングに躍り出た。もし30号に到達すれば、阪神の生え抜き打者としては掛布雅之以来の快挙なのだそうだ。

 甘く入ったストレートを完璧に捉えた一発。立ち上がりに難のある勝野が、またしてもつかまった。以前ならこれでシュンとして無抵抗のままゲームセットを迎えたのだろうが、最近の中日はひと味違う。

 大島洋平、京田陽太の連打で無死二、三塁とチャンスを作ると、ゴロ間にまず1点、さらにダヤン・ビシエドにタイムリーが飛び出し、あっという間に試合を振り出しに戻したのである。

 しかも相手はあの高橋遥だ。まるで昨日のリプレイを見ているかのような鮮やかな試合運び。もう「先制されたら終わり」のチームではなくなったのだなあ、と妙な感慨に浸ってしまった。

 

一年目に感じたロマンをもう一度

 結果的に4点が入ったわけだが、全てに絡んだのが2番京田だった。先頭で打席に入った第2打席は四球を選び、アルモンテのタイムリーで長駆生還。第3打席も1死からセンター前へ運び、ビシエドの技ありの一打で一気にホームを陥れた。見事なチャンスメーカーっぷりである。

 「打てばいいんでしょ」と皮肉たっぷりにGG賞受賞を目標に掲げた京田の2020年シーズン。しかし意気込みに反して打撃は冷え込み、プロ入り以来最低の2割2〜3分台をうろつく日々を過ごしている。

 一方で得意の守備には更に磨きがかかり、異常なほどの深い位置でヒット性の当たりを阻む姿は、もはや日常風景にさえなりつつある。

 私が査定担当なら、最も悩むのが京田だろう。問題は提示額云々ではなく、そもそも上げるべきか、下げるべきか。打撃の物足りなさはダウン査定やむなしといったところだが、守備での貢献度を考慮すればアップ査定でもおかしくはない。果たしてどちらを重視すべきか、とてもじゃないが判断できない。

 今シーズンはバント失敗も目立ち、ルーキーイヤーに23個を決めた盗塁も5個に留まる。はっきり言って一年目に感じたロマンはどこかへ行ってしまったが、それでもあの守備力はマイナス部分を補って余りある。守備だけが異様に尖った五角形のグラフ。それが京田の現在地だ。

 この後、どこかで急に打撃覚醒するのか、それともキャリアを通じてこんな感じなのか。ファンも、おそらく首脳陣もまだそのポテンシャルを測りかねているように思う。もしかしたら京田本人も。

 残り22試合で打ちまくってAクラス入りの原動力になれば、年俸アップとGG賞の一挙両得もあり得る。まずはそこを目指して、一年目に感じたロマンをもう一度見せてほしいと心底思うのである。

 

【告知】

『中日新聞+』の連載も早6本目。今回は1950年代に活躍した石川克彦さんをクローズアップしました。

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