ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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福谷で借金返済

○3-2巨人(24回戦)

 いつからだろう。やたらとラジオで “借金の過払金請求” のCMが流れるようになったのは。それだけ世の中には借金を抱えている人が多いのだろうが、できればもうちょっと長閑(のどか)なCMを聴きたいものである。 

 借金。南野陽子の『秋のIndication』がよく似合うこの季節に、中日が無借金で過ごしているのは一体何年ぶりなのだろうか。数日前の中スポによれば、残り26試合時点での借金1は、連続Bクラスが始まった2013年以降で最少だったそうだ。

 驚いたのは、次に少なかったのが去年の借金9という事実だ。つまり一昨年までは少なくとも10個以上の借金を秋口には抱えていたことになる。そりゃ真剣に見る気も失せるはずだ。

 ちなみにファンの間でも最も暗黒度が高かったと言われる2016年は残り26試合時点で借金18。さらに最終的には24にまで膨らんでおり、白井文吾オーナーの最下位脱出指令も虚しく19年ぶりの屈辱を味わった。球団創設80周年を嘲笑うかのような80敗到達で、ナゴヤドーム最終戦のセレモニーではスタンドから怒号が飛び交ったと当時の中スポには記載されている。

 それが今年は23試合を残して遂に借金完済。しかもセ・リーグで一番強い巨人との対戦もこれで終わりときた。試合の無かった3位DeNAとのゲーム差は1.5に広がった。少なくとも明日はたとえ負けようともBクラス再転落は無いわけだ。

 たった4年間でドラゴンズは見違えるように生まれ変わった。特に目立った補強をしたわけでもなく、ドラフトで当てた金の卵はまだ二軍で鍛錬の日々を過ごしている。何が変わったかといえば、大野雄大や高橋周平、祖父江大輔といった暗黒時代にどっぷりと浸かった選手達が、別人のように覚醒したのがとにかく大きい。

 なかでも背番号「24」、福谷浩司の変わりようは凄まじい。プロ8年目。まだ巨人に一度も勝ったことがないドラ1位右腕が遂にやってくれた。

 

福谷に“自滅”の2文字なし

 福谷と桜井俊貴。一見すれば有利にも思えるマッチアップだが、連覇へのゴールがすぐそこに見えている巨人がそう易々と勝たせてくれるはずもなく。試合は2回表、無死二、三塁からゴロと犠牲フライで巨人が抜かりなく2点を先取した。

 いつもなら7回あたりにスタミナ切れを起こす福谷がめずらしく序盤から失点。球もやや高めに浮いており、調子が悪いのは明らかだった。対する桜井は原監督から「子供ちゃん」呼ばわりされて以来の先発登板。おそらくラストチャンスであろう今日はかなりの気合を込めて向かってくるだろうと思われたが、そんな桜井のわずかな綻びを中日打線が見逃さなかった。

 2回裏、2死からモイセ・シエラが6球粘って四球をもぎ取ると、続く阿部寿樹は内角寄りの甘いストレートを豪快に引っ張り、これがスタンドイン。取られたらすぐに取り返す。理想的な攻撃であっという間に同点に追いつくと、さらに一塁にランナーを置いて今度は9番福谷にもタイムリーが飛び出し、勝ち越しに成功。昨日から続く2死ランナー無しからの猛攻を引き継いだ格好となった。

 ただ、今日はここからがしんどかった。お互いにランナーこそ出すものの得点につながらず、次第に重いムードが球場に漂い始めた。こうなると重量打線を相手に福谷がどこまで我慢できるかの戦いになる。

 以前の “ミスター自滅” 福谷なら、間違いなく四球から崩れるパターンにハマっていただろう。だが今の福谷は違う。今年、ナゴヤドームで許した四球はわずか1個。無敵のコントロールを習得した福谷に、もう “自滅” の2文字はないのだ。

 結局今日も6イニングを無四球で乗り切り、ナゴヤドームでの与四球率は0.32となった。今の福谷は無駄なランナーを出さず、ピンチでも力勝負に走らずに変化球でかわす投球ができるのだ。小笠原慎之介のプロ初登板初勝利の権利をぶち壊したあの頃が懐かしい。

 生まれ変わった福谷の投打にわたる活躍で、チームはとうとう借金完済。そういえばラジオCMによると、過払金請求は10年間有効なのだそうだ。この7年間で払い過ぎたマイナス分、一気に取り戻すチャンスがきた。

 

【告知】

1980年代特化音楽メディア『Re:minder』にて細々とコラム書いてます。宜しければこちらもご贔屓にどうぞ。

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