ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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大きな「2」点

○4-1ヤクルト(20回戦)

 3回裏、スコアボードに灯った「2」の数字。2死一、二塁からモイセ・シエラの放ったレフトへのタイムリーが、中日の勝利を大きく手繰り寄せたーー。

 

 大野雄大が投げる水曜日は、中日が勝てる日だ。週の半ば。世の社会人、学生にとって気だるさがマックスに達するこの日に勝利をもたらしてくれるのだから、大野には感謝してもしきれない。

 ましてや相手は最下位ヤクルトだ。今日はどんなすごい投球を見せてくれるのだろう? 関心があるのは完封できるかどうか。大野がナゴヤドームで投げる日は、もはや勝つのが前提である。

 初回、先頭打者のアルシデス・エスコバーをズバッと見逃し三振に打ち取った。今日もあいかわらず完璧だ。そう思ったのも束の間、昨日は欠場した青木宣親、山田哲人、さらに村上宗隆にも繋がれて一死満塁のピンチを背負ってしまう。

 並の投手なら1点や2点は失いそうなものだが、さすがはエースである。後続を難なく打ち取り、無失点で切り抜けた。しかし立ち上がりから26球を要するとは大野らしくない。8月以降の“スーパー大野”は、8度も完投しながらその全てを130球以内に収めるなど、並外れたテンポの良さが特徴だった。

 その点でいえば今日は何かがおかしかった。2回裏こそ11球で凌いだものの、3回裏は2安打を許して23球を要した。序盤で早くも60球は大野でなくても多い球数だ。ボール先行の場面も目立ち、いつ崩れてもおかしくない。そんな状況を四苦八苦しながら抑えているような、危うい投球内容が続いた。

 それでも結果的に6回無失点でまとめるのだから、やはり大野はとんでもない投手である。だがもしリードが1点ないしスコアレスなら、必ずしも同じ投球ができたとは思わない。

 調子の良くない大野を勇気づけた「2点」というリード。これが無ければその後の展開もまったく違っていたかもしれない。そのくらい大きな追加点だった。

 

不惑・石川を2打席で攻略

 ヤクルトが初回の満塁チャンスを逸したように、中日も1回裏2死満塁を作りながら無得点に終わっていた。決定機に凡退したのはシエラ。石川雅規の投球術に翻弄され、最後はクロスファイアで見逃し三振を喫した。

 不惑を迎え、能力は落ちているとは言え、初見で対応できるほどカツオ君は生易しい投手ではない。打ち気にはやる外国人なんてのは、石川からすれば最も料理しやすい相手だろう。

 大野の調子が今ひとつなだけに、何としても先制点が欲しいところ。すると3回裏、二回り目の打線が石川を捉えた。1死一、三塁でダヤン・ビシエドがタイムリーを放ち、望み通り1点先取。続く高橋周平はゴロに倒れるも、再び一、三塁のチャンスが到来した。

 打席には、先ほど三振を喫したシエラが入る。1点では心許ないが、もう1点入れば勝利の可能性はグンと高くなる。しかし中日はこの手の場面にめっぽう弱く、“かろうじて点は入ったけど物足りない”と思うことがとてつもなく多いチームでもある。

 要は、畳みかけることが苦手。そのため少ないリードでの逃げ切りを余儀なくされ、投手陣に皺寄せが行くわけだ。

 しかし、ここでシエラが貴重なタイムリーを打った。第1打席で2球空振りした外角低めのシンカーを狙っていたかのような初球打ち。同じ手に二度やられるほど単純な打者ではないということだ。

 シエラに関しては、まだファンも掴みかねている部分が多い。これから研究された時にどう対応していくかが最初の正念場となるが、海千山千の石川をわずか2打席で攻略する器用さからは“本物”の香りがプンプンする。

 この2点目により大野にも余裕が生まれたのか、4、5回は共に三者凡退で切り抜け、6回表にはランナーを背負いながらも渾身の投球でクリーンアップ斬りを披露。

 「一発打たれてもまだ同点」というゆとりが大野の強気を引き出したとすれば、やはりシエラの一打は単なる1打点には留まらない意義があったといえよう。