ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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様式美のゲッツー

●3-9DeNA(18回戦)

 もしこれがロード9番勝負の初戦だったら、どうしようもないほど落ち込んでいただろう。同じ打者に3ホーマーを許すなど、投打ともに精彩を欠いての大敗。しかしそれほどダメージを受けていないのは、既にカードの勝ち越し、そして9戦4勝のノルマを達成したからに他ならない。

 この9試合が始まる前の借金は2で、3位とのゲーム差は1.0だった。それが今、借金は3に増えたがゲーム差は0.5差に縮まった。“死のロード”とも言うべき苦しい遠征のなかでズルズルと落ちるどころか、むしろAクラスに近付いたのだから御の字である。

 ここまできたら、借金の数は関係ない。プロ野球の順位は相対的なゲーム差で決まるのだから、幾つ借金があろうがDeNA(もしくは阪神)を上回れば3位になれるのだ。「5割の壁」を意識し過ぎると、自分自身との戦いに陥ってしまいがちだ。順位と同時にタイムも重要となる短距離走や競技水泳とは違い、プロ野球の格付けは順位がすべて。

 残り28試合で気にしなければならないのは、あくまで3位とのゲーム差であるべきだ。

 

シャレにならないレベルの不振

 あさってからは2週間ぶりのナゴヤドームでヤクルトとの2連戦に臨む。そこから8試合連続でホームが続くのに対し、今度はDeNAが9試合を長期遠征に出て戦う。ここで順位を逆転し、できれば一気に突き放したいところだ。

 まさしく佳境。今まで以上に一喜一憂が激しくなりそうな局面を迎え、人情派の与田監督も目先の勝利を最優先にした厳しい采配を振るうはずだ。これまでなら先を見据えて我慢していたような選手起用も、もう復調を待っているような猶予はない。調子の落ちた選手は容赦なく外し、状態のよい選手を使う。そうした起用に舵を切るに違いない。

 それでいくと非常に危うい立ち位置にいるのが阿部寿樹である。三振数はリーグ5位の75個、併殺数に至ってはリーグワーストの15個を叩くなど、荒々しいパワー系外国人かと見紛うような数字ながら、ホームランはわずか8本とシャレにならないレベルの不振にどっぷりハマっている。

 今日の試合も唯一、中日が勝機を見出した5回表、無死一、二塁のチャンスで初球に手を出してゲッツーを献上。事実上、試合が決した瞬間だった。

 昨日はセカンドのスタメンを譲った溝脇隼人がマルチ安打を記録。迫りくるDeNA打線に動揺したのか、味方の守備が乱れるなかで冷静にゴロを捌いた溝脇のプレーはひときわ頼もしく見えた。

 最後まで出場せず、ベンチで眺めていたマスターの反骨心に今日は期待したのだが、様式美ともいうべきゲッツーに「あ、今年は最後までダメかも知れん」と思ったのが率直なところだ。

 

個人の記録よりチームの勝利

 年齢は30歳だが、まともに一軍に出場したのは去年が初めて。それも特段びっくりするような成績を残したわけではない。はっきり言えばレギュラーが確約されるような立場でもないのだが、阿部は今シーズンも大半の試合でスタメンに起用されてきた。

 思えば去年の開幕戦、与田ドラゴンズの初陣で「7番セカンド」に抜擢されたときはサプライズと表現されたものだ。そこから信頼を勝ち取り、2年連続の規定打席到達はほぼ間違いないところまで来ている。これだけ見れば立派な中日の正二塁手といえよう。

 ただ、だからと言って“絶対的”なレギュラーになったとは思えない。立浪和義や福留孝介クラスならともかく、まだ実績としても物足りず、昨日のようにスタメンを外れても何らおかしくない立場だ。

 ここからの戦いは、一つずつの試合結果が大きな意味を持つ。今のような状態が続くのであれば、レギュラーから外すことも考慮しなければならないと思う。たとえ規定到達が叶わなくなっても、個人の記録よりチームの勝利を重んじるべきなのは当然である。

 

 とか言って見限ろうとすると、めちゃくちゃキレイな放物線で焼け石に水のホームランかっ飛ばすあたり、本当に阿部ちゃん憎めなくて好き。あれ見ちゃうと次もスタメンで使いたくなるのも分かるもん。