ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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勝ち方なんかどうでもいい

○9-7DeNA(17回戦)

 休日のデイゲーム、屋外球場、マウンドにはライデル・マルティネス……。何もかもがあの日と酷似していた。去年6月16日のロッテ戦。悪夢のような逆転サヨナラ負け試合を意識せざるを得ないところまで、中日は追い詰められていた。

 2回までに9点を奪い、楽勝でカード勝ち越しを決められるはずだった。5回にはソイロ・アルモンテを、7回にはダヤン・ビシエドをベンチに下げ、あとはBチームのリリーフで悠々と逃げ切るだけーー。いくら横浜スタジアムとて、さすがに何かが起こるような兆候はなかった。

 序盤に味方が大量点を取ると先発投手はかえってやり辛いらしく、得てして壮絶な打ち合いになりがちだが、福谷浩司がしっかりと自分の投球を貫いたおかげでその心配も無用。6回終わって9対2と波乱の気配も無いまま終盤に突入した。

 しかし雲行きは、7回裏に飛び出したネフタリ・ソトの2ランで一気に怪しくなった。この時点で残り2イニング残して5点差。どうかすればひっくり返ってもおかしくない点差まで迫られ、途端に妙な雰囲気が漂いはじめた。

 8回裏、木下雄介が先頭にヒットを許した段階ではもはや5点のリードは無いに等しいほど、流れは完全にDeNAに向いていた。こうなると、もう誰が投げても関係ない。無死二、三塁となって福敬登が緊急的にマウンドに上がったが、タイラー・オースティンはバットを折りながらレフト前へ打球を落とした。

 シエラが処理にもたつく間に2者が生還し、たちまち3点差。この期に及んで勝利を確信している中日ファンなんて、誰一人としていなかったと断言できる。走馬灯のように脳裏を駆け巡る様々なトラウマ。9回裏、無敵のライデルが登場しても不安は少しも消えなかった。

 ここ数年、あまりにも沢山のツラい思いを経験し過ぎたせいで、この手の試合で逃げ切れる絵面がどうしても思い浮かばない。どうせ最後は悲劇的な幕切れに違いない、とネガティブな思考ばかりが頭の中を支配した。

 悪い予感は的中し、2点差まで迫られてなおも一、三塁。一発が出れば逆転サヨナラ負けの局面で、ある意味いちばん怖いオースティンまで回ってしまった。「こうならなきゃいいな」が次々と現実になる最悪の展開。Aクラスとは、かくも厳しい試練を越えねば手に入らないのか?

 フルカウントとなり7球目。捕手のサインに首を振ったライデルが選択した決め球は、渾身のストレートだった。

 

勝ち方なんかどうでもいい

 手放しで喜んじゃいけないのかもしれない。楽勝ムードから一転、リリーフエースの3人を全員つぎ込んでどうにか掴んだ勝利など、本来ならあってはならないことだ。

 だけど私はこの勝利が死ぬほど嬉しい。明日リリーフどうすんの? とか、3回以降の攻撃が情けなかったとか、そんな事が些細に思えるほど、この試合を勝てた意味はとてつもなく大きいと思う。

 懸念されていたロード9試合も4勝5敗のノルマを達成。今シーズン最後のロード連戦を乗り越え、来週からはナゴヤドーム中心の日程が続く。ここから先は一戦一戦が山場になる。 

 勝ち方なんかどうでもいい。何点取られようが、ゲームセットの瞬間に勝てていれば問題なし。既にそういう段階に入っている。

 

 久々にやって来た9回の波乱。去年までなら負けていただろう。だが、今年の中日は違う。こんなシビれる勝利を見せられたんじゃ、いつまでもネガっているわけにはいかない。

 残り29試合、このチームが暗黒時代にピリオドを打つ瞬間は、必ず来ると確信した。