ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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シエラで「ケチャドバ」

○9-0阪神(17回戦)

 点が取れないときはどうしたって取れないが、取れるときは面白いように取れるもの……。

 かつてサッカー日本代表・本田圭佑が口にした「ケチャップ ドバドバ」の法則は、野球にもあてはまる。

 阪神の先発は中日打線が長らく苦手としている青柳晃洋。この時点でドバドバ出る可能性は低く、「出ろ! 出ろ!」と振ったり叩いたりしながら何とか2、3滴を絞りだすような展開になるかと思われた。

 現に初回はまさにそのパターンで、いきなり相手のエラーなどノーヒットで無死満塁のチャンスを得ながら、犠牲フライの1点どまりというスッキリしない攻撃をみせると、3回表にはまたしても無死満塁に恵まれながら、今度はゲッツー間に1点取るのがやっと。

 二度の無死満塁で合計2得点。いくらリードしているとは言え、これでは流れが向こうに行ってもおかしくない。不穏な空気が漂い始めたその瞬間、容器の底で固まっていたケチャップをあっさり出してみせたのは、背番号「45」モイセ・シエラのバットだった。外へ逃げていくスライダーを合わせるようにしてバットの先で運んだ打球は、センター左横にポトリと落ちる技ありのタイムリーとなった。

 エース・大野雄大が投げていることを考えれば、あまりにも貴重な3点目。それは同時に「ケチャドバ」の合図でもあった。

 5回表、ソイロ・アルモンテの犠牲フライで4点目を取った時点で試合の趨勢は決まったようなもの。こうなると、振っても叩いても出なかったものが堰を切ったように出るのだからおもしろい。阿部寿樹、木下拓哉、さらに大野雄大にもタイムリーが飛び出して一挙5得点。

 落ち着いたかのように思えた8回表にはまたしてもシエラが来日初・猛打賞となるセンター右へのこれまた来日初・ホームランで9点目。7連敗を喫していた甲子園球場を、竜のランボーがケチャップまみれにした。

 

リリーフ温存のための完投

 さて、こうなると悩ましいのがエースの替えどきである。中盤で勝利をほぼ手中に収めたとあって、大野は5回か6回で降板させ、あとは又吉克樹、藤嶋健人といったBチームのリリーフで凌ぐものだと私は考えていた。

 無理して完投させるような点差でもなし、今後のAクラス争いのためにも余力を残しておいた方が良い。素人考えにはそう思ったのだが、首脳陣の思惑は違った。一見すれば勿体無いようにも思える完投だが、今日の展開でチームとして絶対に避けたいのは、福敬登、祖父江大輔、ライデル・マルティネスのいわゆるAチームを使うことに他ならない。

 まだ6連戦の2試合目。さすがに8点差を追いつかれることはそうは無くても、連打か何かで3点以内に猛追されることは十分あり得る話だ。そうなればAチームを注ぎ込まざるを得ず、勝ったとしてもどこか釈然としないものが残るのは避けられない。

 そう考えれば、より確実にリリーフを使わなくても済むように大野を最後まで投げさせたのも理解できるし、納得もいく。8点差(最終的には9点)あって大野が投げていれば、もうリリーフはブルペンで投げる必要もなく完全休養に充てられたはずだ。

 もちろんその思惑どおり完封勝利を飾った大野の偉大さは言うまでもなく、並の投手なら6、7回で消費する程度の球数で投げ切り、自信のスタミナも温存した投球術は驚異と呼ぶほかない。

 多すぎるくらいの援護点を得て、悠々と投げる大野の姿はまさしくマウンドの支配者。何なら1点差でも同じ投球ができたのではないかと思えるほど今の大野の安定感は神がかっている。

 大野が投げる日は、ケチャップちょい出しくらいで良さそうだ。