ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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覚醒は突然に

○3-2巨人(20回戦)

 今となっては信じがたいが、3月のオープン戦までは正捕手争いのなかで木下拓哉はライバル達の後塵を拝していた。

 6月19日の開幕戦でもマスクを被ったのは加藤匠馬。しかしこの試合、途中出場でマルチ安打を放ち、延長10回までリリーフ陣をナイスリードした木下は、翌日、翌々日の試合では一人で最後までマスクを被り抜いた。その間、10打数5安打で打率5割をマーク。持ち味である打力を発揮し、そこから今日までチームではダントツの55試合に出場している。

 5年目にして初めて“正捕手”の座をつかみ取った木下だが、その道のりは決して平坦ではなかった。7月半ばまで3割を超えていた打率は9月2日に今シーズン最悪の2割0分4厘まで下落。特に得点圏での弱さが目立ち、8月は12試合に出場して1打点しかあげることができなかった。

 最大のアピールポイントであるはずの打撃に陰りが見え始め、徐々に郡司裕也との併用も増えるなかで、「体力切れしたのではないか」という指摘もちらほら聞こえてきた。過去最多出場は2017年の51試合。昨年も加藤匠馬の控えに甘んじて39試合どまりと、フルシーズンを戦い抜くスタミナとペース配分が身についていなくても仕方がないと思われた。

 だから9月に入り、突然として月間3割6分8厘という高打率を叩き出すことになるなんて、正直言って想像だにしていなかった。8月までわずか3打点だったのが、9月だけで8打点。ホームラン2本はいずれも今月打ったものだ。

 これが俗にいう“覚醒”というやつなのか? だとしたら、捕手の覚醒はドラゴンズのファンになって初めて目撃する出来事だ。

 年配のファンなら1988年に中村武志がレギュラーの座をつかみ取る過程を目の当たりにしているのだろうが、今の30代より下の世代は物心ついたときには既に中村が正捕手として君臨しており、そのあと間を置かずに谷繁元信へとスイッチしたため、若手捕手が競争の末に正捕手を勝ち取る場面に遭遇したことが無いのだ。

 何年も苦しみ続けてきた正捕手不在問題に蹴りを付けてくれるかもしれない木下の活躍。でも郡司にも期待しているし、二軍では石橋康太がプロスペクトっぷりを如何なく発揮している。このまま木下に落ち着くのか。それとも郡司、石橋の猛烈な突き上げがあるのか。もちろんアリエル・マルティネスだって忘れちゃならない。

 過去にないほど熾烈をきわめる正捕手争いは、果たしてどういう結末を迎えるのだろうか。今後の展開が楽しみでならない。

 

 

2位阪神と1.5差に接近

 「8番ライト石垣雅海」

 昨夜のホームラン効果か、遂に石垣の名前が並んだこの日のスタメン。第1打席でいきなりヒットを放ち、まずはアピールに成功してホッとした。使え、使えとうるさく喚いてきたが、いざ出場となると今度は不安で仕方なくなるのだから、我ながら救いようがない。

 明日以降の起用がどうなるのかは分からないが、木下のバットが好調な今だからこそプレッシャーの少ない8番で伸び伸びとプレーして欲しいと思う。もしこのままレギュラーに定着すれば、高卒野手としては森野将彦、平田良介、高橋周平、福田永将に続く快挙になる。特に森野、福田がレギュラー奪取に10年近くの年月を要したことを思えば、4年目の台頭は異例の速さといえよう。

 もちろん平田が怪我から復帰すればそう簡単には席を譲ってはくれないだろうが、そのようにしてベテランと若手が火花を散らすことは、必ずチーム力の底上げにつながるはずだ。

 阪神が負けて2位とのゲーム差は1.5にまで縮まった。残り35試合、ここからは少しのミスが命取りになるような厳しい戦いが続くことになる。だからこそ必要になってくるのは、いかに集中力を研ぎ澄ませるかだ。

 9回裏、1死一塁で増田大輝を刺した木下の完璧な送球はまさしく集中力の賜物。あんなプレーが当たり前に出てくるようになれば、このチームは必ずAクラスを勝ち取れるはずだ。そしてこの雰囲気のなかで戦える選手達はどれほどの経験値を稼げることか。

 シビれる巨人戦の僅差逃げ切り。木下も石垣もめちゃくちゃいい経験してると思う。