ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

平田、2割打者になる

○9-3ヤクルト(16回戦)

 「見上げるのではなく、見下ろす感覚を思い出しました」(『中日スポーツ』9月21日付3面)

 昨日の8回、平田良介はベンチにいる時に不振脱出の手応えを感じたそうだ。8月23日以来となる複数打点をあげ、お立ち台では「打撃の調子も4打席目でちょっといいなと思いました」と堂々の好調宣言が飛び出した。とは言えまだ打率は1割台だ。

 自分自身にプレッシャーをかけるために、敢えてポジティブな言葉を発信したのか。あるいは本当に不振脱出の糸口を見つけたのか。もし今日も活躍が続けば、長かったトンネルもようやく出口が近付いたと言えるだろうし、かたやノー感じで無安打に終わればやはりまだトンネルは長そうだと察することができる。

 ほぼ固定の名が並んだオーダー表で、平田はいつも通り「7番」の欄に書き込まれた。成績だけ見ればスタメンで出られるのが不思議なくらいの数字でも、与田監督は頑なに平田の復調を待ち続けた。右肘の痛みから復帰した8月23日以降も調子は上がらなかったが、それでも与田監督は平田を使った。

 一概にそれが正しかったとも間違えていたともジャッジする気はない。ただ、「いい加減なんとかしろよ」と平田に対して少し腹が立ったのは確かだ。最後に打率が2割台に乗ったのは7月2日。それ以来、平田はひたすら1割台の低空をさまよった。期待の若手なら我慢すべきかも知れないが、15年目のベテランがこれでは目も当てられない。

 そんなわけで久々に複数打点を記録したからって、すぐに信用しろというのが無理な話である。せめて打率が2割に乗らないことにはーー。だがそのハードルを、平田は思いのほか簡単に飛び越えてしまった。

 

スランプ脱出

 対するヤクルトの先発は山中浩志。8月2日の対戦では8回4安打無得点と攻略できなかったアンダースローだが、その時平田はまだ真夏のナゴヤ球場で若手と共に汗を流していた。山中は平田にとっては今日が今シーズン初対戦。先入観を持たずに打席に入れるのは大きい。

 その目論見どおり、平田は第一打席から得意の右打ちでヒットを稼いだ。やはり「見下ろす感覚」で打席に入ったのだろうか。さらに4回裏にはタイムリーツーベース、5回裏にも再びタイムリーが飛び出し、2日連続で複数打点を記録。そして7回裏にこの日4本のヒットが飛び出し、なんと4打数4安打で打率も.212まで急上昇した。

 これで分かった。平田は本当にスランプを抜け出したようだ。ただ平田自身は昨日の8回に感覚を掴んだと発言しているが、むしろ6回裏の犠牲フライこそがスランプ脱出を決定付けるキッカケになったと私は見ている。

 6回裏、無死満塁で打席には平田。直前で阿部寿樹が空振り三振に倒れており、にわかに暗雲が立ちこめた、そんな最中の貴重な犠牲フライである。ヒットは難しくても、最低限はしっかり決める。一時期の内野ゴロばかり量産していた姿からは想像もつかないような見事なバッティングだった。

 この犠牲フライを見て、ふと頭に浮かんだ選手がいる。巨人の亀井善行である。亀井は「ここぞ」でしっかりと結果を決めることができる貴重な選手だ。個人の調子の良し悪しは関係ない。最低でも犠牲フライで1点欲しいという場面で打順が回れば、亀井はどんな悪球だってフォームを崩しながら必死で食らいつく。だから敵から見て亀井ほど怖い打者はいない。

 平田は昨日の犠牲フライこそうまく決めたものの、今シーズンはチャンスで打てないことがずっと続いていた。調子がいい時に打てるのは当たり前。重要なのは、いかに悪い時にもベンチの期待に応えられるかだ。

 ああいった犠牲フライが絶不調の時でも打てるようになれば、今後は平田も亀井のように投手がビビりながら投げるような存在になっていけるだろう。