ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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死地からの帰還

○4-2阪神(15回戦)

 「バッターは松葉に代わりまして、石垣」

 不意打ちのようなコールにハッとしたのは5回裏のことだ。先発・松葉貴大は衝突事故のような2ランこそ浴びたものの2安打2失点と申し分ない投球を続けていた。その松葉をまさかここで代えるとは。たしかにドラゴンズが誇るリリーフ陣は抜群で、連日「中スポ」でも報じられているように6回終了次点でリードしていた場合の勝率は9割3分1厘(27勝2敗)と驚異の安定感を誇る。

 ただ、方程式に当てはめるには1イニング早い交代だ。それもリードはわずか1点。いくらなんでも自軍のリリーフ陣を過信してやいないか? 松葉の投球数はまだ71球。前回の登板では3回途中52球でノックアウトされており、余力は十分のはず。正直、解せなかった。これでひっくり返されたら采配ミスだーー。それくらい不可解な降板だと感じたが、バトンを受け取った谷元圭介の投球をみれば、私の方が間違っていたことはすぐに分かった。

 先頭の近本光司にこそヒットを許したものの、後続を捻じ伏せてあっという間に2死までこぎつけた。しかしジェリー・サンズに投じた勝負球が木下拓哉の股間を抜けてしまい、振り逃げという形でピンチ拡大。打席には目下ホームランキングの大山悠輔を迎える。並の投手なら怖気付いてしまいそうなこの場面で、谷元が投じたのはなんと直前でワイルドピッチになったのと同じカーブだった。

 絶好調の大山はやや高めに浮いたところを見逃さずに「あわや」という打球を飛ばしたが、反応だけで打ちにいった分、ややタイミングがズレた。おそらく同じコースにストレートを投げていればスタンドまで持っていかれたのではないかと思う。打者の裏をかく球種を要求した木下も見事だが、それを事もなげに投げた谷元も大したものだ。

 さすがは日本一の胴上げ投手経験者。肝の座り方がそんじょそこらの投手とはひと味違うというわけだ。

 

光った! トレード組の活躍

 7回以降は自慢の方程式の活躍により、例の“不敗神話”も19連勝にまで伸びた。絶体絶命のピンチを防いだ福敬登、危なげなさすぎる祖父江大輔、昨日の雪辱を晴らしたライデル・マルティネスとそれぞれ褒め称えたい気持ちで一杯だが、やはり今日は先週とは打って変わって本来の丁寧さを取り戻した松葉、そして上位打線とぶつかる6回を凌ぎ、勝ちパターンへと繋いだ谷元の働きが光った。

 奇しくも両者はトレードで移籍してきた選手だ。特に谷元は十分な実績を引っ提げてドラゴンズ入りしたものの、大きく期待を裏切って移籍4年目を迎えた。開幕は当たり前のように二軍スタート。もはや戦力として計算する声もほとんど聞こえなくなっていた。しかしウエスタンリーグで4試合4イニング1安打無失点という好成績を残して7月21日に昇格。

 最初はビハインド中心のいわゆる敗戦処理での起用が多かったが、ここにきて勝利の方程式に食い込んだ。まさしく実力でポジションを勝ち取った格好だ。サバイバルに晒されるのは若手なら当たり前のことだが、かつて栄光を欲しいままにしたベテランが二軍で汗を流し、再び返り咲く様は控えめに言って格好よすぎる。

 一方の松葉も、申し訳ないが(少なくとも私の想定では)まったく計算に入れていなかった選手だ。まさかローテに定着するとは夢にも思わなかった。しかし現実に、今や松葉は無くてはならない存在である。やはりこれもまた格好よすぎる。

 死地から這い上がった二人の活躍により、最悪の形でスタートしたこのカードを勝ち越しで終われた。首位から14ゲーム差。「あきらめる」なんて、この二人を見たら言えるはずもない。