ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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年功序列

●2-9広島(17回戦)

 岡崎市民球場に集ったワイシャツ姿の男達の視線は、マウンドに仁王立ちする153キロ右腕に注がれた。トヨタ自動車・栗林良吏ーー。

 約1ヶ月後に迫ったドラフト会議で“主役”になる可能性が高いアマチュアナンバーワン投手である。都市対抗野球の東海地区2次予選、東邦ガス戦に先発した栗林は7回を投げて2安打無失点10奪三振という文句のつけようがない内容で、集結した各球団のスカウト達への猛アピールに成功した。

 (会社をさぼって)現地視察したアマチュア野球研究家のyamadennis氏も「重箱の隅をつつくような単語も頭に浮かばない」「観ていて惚れ惚れした」と賛辞を並べるばかり。「5回まで外野に飛んだ打球はヒット一本だけ。6回にセンターフライ二つ、7回にツーベースを打たれるなど若干球威が落ちてきたが、制球力と変化球でカバーした」と投球のクレバーさにも感嘆した様子で、強いて課題をあげるなら「140試合のシーズンを過ごす体力くらい」とのこと。

 中日のドラフト1位最有力候補とも目される地元右腕だが、どうやら競合は避けられそうにない。

 

8試合8被弾

 社会人出身者は言うまでもなく即戦力として活躍することを期待されて入団する。今年でいえば岡野祐一郎は、1年目からローテ投手としてフル回転しなければならない立場だったはずだ。「勝てる投手」との触れ込み通り、オープン戦、練習試合ではしっかりと結果を残し、中田賢一以来となる球団15年ぶりの開幕ローテの座もつかんだ。

 だが、順調だったのはここまで。7月30日の広島戦で4回ノックアウトを食らうと翌日には登録抹消。ひと夏を暑いナゴヤ球場で過ごし、9月になってようやく一軍マウンドに戻ってきた。本当なら今ごろ戸郷翔征や森下暢仁と共に熾烈な新人王レースを繰り広げていて欲しかったのだが、残念ながら現在地はそことは程遠く、ローテにしがみつくのが精一杯という状態だ。

 坂本勇人に2ホーマーを浴びた巨人戦から一週間。しかしこの日も本来の岡野らしい投球をマウンドで見せることは叶わなかった。しかも、またしても2発のホームランに沈んだ。8試合目の登板にして8被弾は多すぎる。これでは「勝てる投手」どころか、勝つ姿を想像することさえ難しい。

 

年功序列

 その岡野とバッテリーを組んだのは、同じ青学大出身の加藤匠馬だった。加藤を使う、すなわち打線を7人で組むに等しく、追いかける展開になった時点で限りなく状況は不利となる。

 それでも加藤を使いたくなるのは誰にも真似できない強肩で相手の“足”を封じるために他ならないが、序盤でビハインドとなるともはや加藤の存在自体がハンデのようになってしまう。象徴的だったのは4回表の攻撃だ。2死二塁で京田陽太を迎えたが、広島サイドは申告敬遠を選択。打率2割3分の打者を敬遠したくなるほど加藤の打力の無さは球界全体に知れ渡っているわけだ。

 その目論見どおり、加藤はまんまとファーストファウルフライを打ち上げてチャンスを潰した。これで今シーズンの得点圏打率は.083(12-1)。加えて打率1割台の平田良介、今月絶不調の阿部寿樹をスタメンに並べているのだから、得点力不足に泣くのも当然のこと。

 そしてこの日も石垣雅海はベンチで試合を見学したまま打席に立つことなく試合を終えた。たしかプロ野球は「実力の世界」だったと思うのだが、ドラゴンズだけは「年功序列」を採用しているのだろうか。競争がめちゃくちゃ激しそうな巨人に対し、古きよき年功序列で対抗とは斬新だ。

 そりゃ私のような怠け者はそっちの方が気楽でいい。出場機会に飢えている若手にとっては地獄だろうけど。明日は背番号「32」が頭から出ることを祈る。