ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

取っておきの持ち腐れ

●3-7DeNA(14回戦)

 たまにふらっと現れては、壮絶なトラウマを植え付けていく。タイラー・オースティンは、そんなタチの悪い白昼夢のような存在だ。

 DeNAとの対戦はこれが5節目だが、オースティンと顔を合わせるのはまだ4試合目。開幕直後に横浜スタジアムで対戦して以来の遭遇となる。それもそのはず、オースティンはとにかく離脱が多く、シーズンを通してまだ22試合しか出場していないのだ。

 ちなみに8月は全休。そんなわけで今日は7月31日の阪神戦以来、実に1ヶ月半ぶりの一軍出場らしい。まだ恐れるほどの実績は無いはずの選手なのだが、私などは今日から戦線復帰すると知った時点でゲンナリし、始まる前から弱気になっていた。

 そうなるのも無理はない。前回対戦した際は初戦でいきなり4打数4安打と打たれまくり、カード通算でも12打数6安打1ホーマーとやられ放題だった記憶が鮮明に残っているのだから。つまり中日は “悪いときのオースティン” というのを見たことがなく、どうしてもあの時の印象に引っ張られてしまうのだ。

 ネフタリ・ソト、佐野恵太、宮崎敏郎が並ぶリーグ最凶クリーンアップのあとに、さらにオースティンが控える打線は脅威なんてもんじゃない。そして悪い予感ほどよく当たるもので、初っ端からこのオースティンに3ランを喰らい、試合の大勢は早々に決したのだった。

 

DeNAは中日が最も苦手とする相手

 それにしてもこの打線の破壊力ときたら。抑えられるビジョンがまったく見えない。

 ソトは相変わらずめちゃくちゃ怖い。佐野は何かが乗り移ったように打ちまくる。宮崎も安定して打ちまくる。昨日までならここを乗り切ればひと安心できたのだが、よりによって6番オースティンである。そりゃ松葉貴大も耐えきれないわけだ。というかこんな打線、絶好調の大野雄大で何とかなるかというレベルだろう。いわんや明日の吉見一起は……あまり考えないでおこう。

 過去5年間、中日が最も多くの黒星を喫したのは巨人ではなくDeNAなのだそうだ。2015年以降、なんと5年連続で負け越し。平均勝率は4割5厘しかない。だが今シーズンはやり返せるチャンスだと思っていた。苦手の筒香嘉智が海を渡り、天敵のホセ・ロペスにも衰えがみられる。これなら少なくとも対等には渡り合えると目論んだが、オースティンの存在によって粉々に打ち砕かれた。

 もはやハマスタでベストメンバーのDeNAに勝つのは無理なのだろうか? いや、違う。中日にはまだ取っておきがいる。入団4年目、背番号32のモンスター候補がいるではないか。

 

使わなければ育たない

 

 目には目を、歯に歯を。パワーにはパワーを。DeNA打線の圧倒的な打力に対抗できるのは、同レベルの打力のみ。となれば現状の中日打線はあまりにも貧弱すぎる。

 打率2割に満たない平田良介、OPS6点台の阿部寿樹、年々貧打がひどくなる京田陽太……。ダメだ、これじゃ3点取るのが精一杯だ。喩えるならビッグマック相手に「ビッグカツ」で対抗するようなもの。主食に駄菓子で立ち向かうのはキツすぎる。

 ならば今こそ石垣雅海を使って欲しいと思う。「試す」なんて甘ったるい起用ではなく、近い将来の主軸に据えるべく徹底的に使い倒せばいい。巨人・岡本和真やDeNA佐野がそうやって成長したように。

 中日と同じく長年、生え抜きスラッガーが育たずにいた阪神も、遂に大山悠輔に覚醒の兆しが見え始めた。ヤクルトには村上宗隆がいる。広島の4番は言わずもがな。中日だけが2020年代スラッガーの波に乗り遅れている。長い目で見れば、今抱えている借金の数なんかよりもこっちの方がよっぽど深刻な問題である。

 使えば全て育つとは限らないが、使わなければ育たない。とにかく大事なのは使う勇気と覚悟だ。石垣に試合を見学させておくのは、今日までにしよう。