ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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目標の有無

△2-2巨人(18回戦)

 3連戦で一つも勝てなかったことを嘆く声がファンの間では目立つが、むしろ「よく負けなかった」「よく引き分けで凌いだ」と思う。とは言え、ポジティブな意味合いではなく、ネガティブな皮肉を込めてだが。

 例によって先発・福谷浩司はナイスピッチングなんて言葉じゃ足りないほどの好投を披露。7回で降板を余儀なくされ、涙ながらにマウンドを去った前回登板から1週間。やはり今日も初回から飛ばしまくり、昨日3者連続ホームランの坂本勇人から難なく三振を奪うなど快調な滑り出しをみせた。

 しかし、「今日こそ完封するんだ」という気迫剥き出しの福谷の姿を目の当たりにしても相変わらず打線は振るわない。2回には1死一塁、3ボール1ストライクから溝脇隼人がストライク球を見逃す間に平田良介が挟まれてアウトになるなど、攻撃のミスも出た。単独スチールだとすれば平田は迂闊すぎるが、簡単に見逃した溝脇も反省すべきだろう。

 せっかく得たチャンスで評価を落とすようなプレーをするのは厳禁だ。それも緊迫した場面であればあるほど、一つのミスが致命傷になりかねない。結局溝脇は次のストライク球も見逃して三振に倒れるわけだが、これではいくら守備で良い動きをしても収支で言えばマイナスだ。

 三ツ俣大樹が降格し、堂上直倫が不振に喘ぐ今は溝脇にとって千載一遇のチャンスのはずだが、「もう少し見たい」と思わせるモノは残念ながら感じさせてくれなかった。溝脇をスタメンで使わざるを得ない中日と、中島宏之をベンチで温存しておける巨人。この3連戦、イヤと言うほど思い知らされた圧倒的な戦力差だが、敗因は必ずしもそれだけではないと思う。

 

目標の有無

 

 「ここしかない」という場面でしっかり貴重な一打が飛び出すのが巨人なら、ため息ばかり増えるのが中日の攻撃だ。8回表、無死一、二塁で吉川尚輝は値千金のタイムリー三塁打を放った。かたや中日はその裏、1死満塁のチャンスを掴んだものの内野ゴロの間の1点に留まり、逆転とはならなかった。

 高橋周平、平田良介という二大生え抜きスターを持ってしてもダメならもはや手の打ちようがない。なぜ巨人は実績で劣る吉川にタイムリーが出るのに、中日は高橋平田で追い越すことができないのか。同点に追いついた喜び以上に、悶々とした悔しさが胸の中に広がる。

 そういえば昔、逆の立場で似たようなことを感じたことがある。かつて中日が強かった頃ーーなんて言っても、今の若者には想像もつかないだろうが(「進撃の巨人」の世界の住人が、かつて巨人が存在しなかった頃の話を聞くようなものか)。信じられないかも知れないが、つい10年ほど前まで中日はセ・リーグでいちばん強いチームだったのだ。

 特にシーズン終盤になるにつれて無類の強さを発揮し、広島、横浜といった既に消化試合に突入していたBクラスの常連からいとも簡単に3連勝を収めていた記憶がある。そのとき、なぜこんなに簡単に勝てるのだろうと考え、気付いたのが「目標の有無」の差だった。

 中日は優勝という大目標がはっきり見えており、それに向かってチーム全体が一丸となって邁進していた。かたや広島や横浜は監督の去就が取り沙汰されるなど、気分は既にオフシーズン。若手の台頭などファンからすれば楽しい要素はあるにせよ、組織としては文字通り試合を消化しているだけの状態だ。これだけモチベーションに差があれば、同じ土俵でぶつかり合った時にどちらが強いかは小学生にだって分かる。

 さて、あれから10年以上が経ち、今度は中日が目標を見失った側に回ってしまったのだ。もはや優勝へ突っ走るだけの巨人に対し、延々と5割を目指してウロつく中日。今年だけではない。去年からずっと借金の返済表と睨めっこの日々を過ごしている。中日ファンはいつから零細企業の経理担当になったのだ。

 その間、巨人は貯金をたんまりと蓄え、それでも足りないとばかりに積極的な補強に動く。ウィーラーも高梨雄平も開幕時点ではいなかった戦力だ。

 この3試合、トータルしても点差は3点。一見すれば接戦の末に惜しくも敗れたかのように思えるが、その差は点差以上に大きいと感じた。久々に5割を目指す戦いではなく、首位とのゲーム差を意識した“優勝争い”を楽しみたいものだが、果たしていつになることやら。