ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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高梨違い

●4-5巨人(17回戦)

 ナゴヤドームでの3打席連続ホームラン。あの山﨑武司ですら成し遂げることができなかった快挙を、坂本勇人がやってのけた。

 スゴイのはスゴイが、讃える気持ちなど毛頭ない。そもそも私は相手のファインプレーに拍手を送るという文化も大嫌いだ。「プロフェッショナルのプレーを見せてくれてありがとう!」だか何だか知らないが、こちとら興味があるのはドラゴンズの勝利のみ。敵の好プレーなど喜べるわけがない。

 こんな狭量な人間だもんで、坂本の快挙もただひたすら憎いだけだ。そして情けなさも感じる。年間の半分をナゴヤドームで過ごし、それを20年以上続けてきたドラゴンズの打者たちができなかったことを、年間10試合そこらしかプレーしない打者に先を越されるなど、本来ならあってはならないことだ。

 しかも大差の試合で打たれたならまだしも、結果的に1点差。坂本のホームランがもろに致命傷になっているからタチが悪い。坂本が歴史に残る大活躍を見せた試合で、よりによって最後の打者が堂上直倫というのも皮肉な話だ。あまり言いたくないが、この10年間の巨人と中日の差を象徴しているようにも思えてしまう。

 一打逆転サヨナラの場面で、とっておきの代打が打率0割台では期待しろという方が無茶な話。しかも相手は勝ちパターンを温存し、それでも軽く捻られてしまうこの現実。「前を向こう」なんて言えるはずもない。明日はマスクで目元ギリギリまで覆って、人目を避けるようにして歩きたい。そのくらい、慚愧に耐えない敗北だったと思う。

 

緊急昇格・石垣が見たかった

 

 ところ変わって山口県は由宇球場では若竜たちが躍動したようだ。14点を取る大勝で引き分けを挟んで6連勝。根尾昂が1ホーマーを含む2安打、石川昂弥が2安打4出塁と注目のコンビが結果を残した。まだ二軍でやるべきことが多く残っているのは分かるが、今の一軍メンバーの顔ぶれを見ればシーズンの終了間際には再び声がかかるのは間違いない。

 一方でこの試合を欠場し、心配されていた石垣雅海については、夕方になって一軍昇格することが明らかになった。昨日の試合で負傷交代した福田永将に代わって招集された格好なので手放しでは喜べないが、それでも3割7分を超える打率でウエスタンリーグのバットマンレースを独走する男の存在は、貧打が甚だしい一軍野手陣において十分戦力になるはずだ。

 だからこそ9回裏1死一塁、あの場面では石垣を使って欲しかった。ベンチのメンバーを見渡したとき、奇跡のホームランを打つ可能性がもっとも高いのは石垣だった。次点で井領だが、その期待値は大きく差がある。何しろ石垣はホームランバッターなのだ。

 坂本が3本打った挙句に、石垣のサヨナラ弾で逆転勝利なんてことになれば倍返しどころの騒ぎではない。仮にゲッツーでもそれはそれでいいじゃないか。そうやって割り切れるのが「若さ」の強みだ。

 だが打席に立ったのは堂上。相手は高梨とはいえ、堂上が得意とするヤクルト・高梨裕稔ではなく、いかにも苦手そうなサイドハンドの高梨雄平だ。高梨なら何でもいいってわけじゃない。投げ方からタイプまで全然違う投手だ。名前以外、全然別人じゃねえかよ! ってことが昔の芸能人そっくりさんAVにはよくあって、何度騙されたことか。

 結局堂上は真ん中のスライダーに詰まり、最悪のゲッツーで万事休す。「打率0割台なら逆にそろそろ打つのでは」という野球ファンあるあるの “逆に” 論も儚い夢に終わり、同期の坂本とのコントラストばかりが目立つ結果となってしまった。

 どうせこうなるなら、やっぱり石垣を見たかった。ファンが見たいのは生々しい現実ではなく、一縷の望みに懸ける奇跡だ。いちばん攻めなきゃならない場面で、守りに入ってしまった采配が心底残念だった。