ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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青木宣親に負けた

●3-10ヤクルト(15回戦)

 雨上がりのヤリエルは別人に変身していた。

 5回まで2安打無失点、特に5回裏は無死2塁のピンチを3連続三振で切り抜けるなど、先週の炎上ショックを払拭する投球を披露。山田哲人、村上宗隆、青木宣親と並ぶクリーンアップも難なく抑え込み、完封も行けるのではと期待させるほどの安定感で中盤を迎えた。

 だが、5回終了と共に神宮上空を覆っていた分厚い黒雲から滝のような豪雨が降り注いだ。グラウンドにはビニールシートが敷かれ、選手たちは慌ててベンチで雨宿り。予報されていたとはいえその降り方は尋常ではなく、レインコートや傘程度で凌げるレベルではない。幸い試合は成立しているため、このまま雨天コールドになるかとも思ったのだが、15分ほどの中断を経ると雨脚も弱まり、再開に向けてグラウンドの整備が始まった。

 人生そう都合よく物事は運ばないものだ。今やゲリラ豪雨は夏の風物詩。いちいち打ち切りにしていたらコールド試合だらけになってしまう。デーゲームでは広島対DeNAが53分間の降雨中断を挟んで最後まで行ったそうだ。昔は度々コールド試合を見た気もするが、今は整備技術や天然芝の品質向上により、試合ができる状態に戻すことが比較的容易なのだろう。

 これ自体は素晴らしいことなのだが、リードしているときはどうしたってコールドを期待するのが人情だ。逆に「再開するっぽい」となると、途端にゲンナリしてしまうのは我々ファンだけでなく選手達も同じかもしれない。

 特にヤリエルにとっては文字どおり水を差されたわけで、一旦途切れた集中力を再び回復するのは並大抵のことではない。8月上旬まで過ごしていた二軍の試合は少しの雨でも中止になるのが当たり前。まさか豪雨のあと、ものの十数分で再開するとは思っていなかったとしても無理はない。

 

青木に負けた

 

 ヤリエルには同情すべき点もあるが、不甲斐ないのは打線である。二日連続で1点を死守する展開では投手陣の負担が重すぎる。昨日はたまたま相手のエラーで追加点が取れたが、できればもう少し効率よく得点して欲しいところ。

 もし今日も僅差のリードで終盤に突入していたら、果たして連投中の祖父江大輔、福敬登、ライデル・マルティネスの三枚を使ったのかどうか。その意味では、ヘタに競った展開にならなかったのは良かったのかもしれない。

 ……と強がるのが精一杯。それより今日の最大の敗因は雨でも打線でもなく、「青木宣親」だと思う。次の1点がどちらに入るかで大きく展開が変わってきそうな流れで、そのチャンスを先に掴んだのは中日だった。4回表、無死二塁。小川泰弘の甘く入ったシュートを捉えたビシエドの打球は、低い弾道でレフト方向を襲った。

 長年野球を見ていると、打った瞬間に打球の飛び方で結果が読めるようになるものだ。「これは上がりすぎたな」とか「この角度は伸びないな」とか。その経験則でいけば、ビシエドの打球は間違いなくレフト前に弾む当たりだった。しかし、そこには青木がいた。いや、いたわけではない。猛チャージをかけた青木が、スライディングキャッチを試みたのだ。

 目を疑った。低く鋭い打球を、あんな風にして捕球できるのは全盛期の英智しかいないと思っていたのにーーやはり青木は凄い。ヤクルトが世界に誇るスーパーマンは未だ健在だ。

 あれが落ちていれば、あるいは抜けていればスコアボードに「5」を刻んだのは中日だったかもしれない。それほど試合を左右した大きなプレーだった。

 このあと青木はどん底のチームを救った代償として左手首を痛めて途中交代したが、球団発表によれば「疲労を考慮」しての交代だそうなので、おそらく問題ないだろう。

 6回裏、ビッグイニングを作って一気に試合を決めたヤクルト。そのベンチの先頭には、声を張り上げながら喜びを表す青木の姿があった。山田、村上の調子が悪くとも、衰え知らずの背番号「23」がいる限りヤクルトはあなどれない相手だ。