ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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サラリーマンの星

●5-9広島(14回戦)

 勝てると思った。イケイケの6回裏、遠藤一星のセンター前を皮切りに打線がつながり、今シーズン初となる一挙5得点の猛攻で1点差にまで詰め寄った。井領雅貴の代打2点タイムリーが飛び出したときは、これで負けたらウソだというほどテンションも最高潮に高まったのだが、残念ながらここが本日のピーク。なおも2死満塁で大島洋平がセンターフライに倒れ、惜しくも「追いつかない程度の反撃」に留まったのである。

 先日の巨人戦に続いて1点ビハインドの満塁機に凡退に倒れた大島に関しては、2死という状況を考えれば責めるのは酷かもしれない。だが、あまりにも満塁で弱すぎるのも主力打者としては考えものだ。普段は平然と安打を重ねる球界随一のアベレージヒッターが、満塁になった途端に屈指の貧打者に変身してしまう。今シーズンは今日の凡退で満塁打率2割ちょうど。昨年は.167で、一昨年は.214だから、折り紙付の弱さといえるだろう。

 結果的にはここで同点ないし逆転まで持っていけなかったことで投手起用を消極的なものにせざるを得ず、8回表の致命的な3失点に繋がるわけだから、やはりどんな形であれヒットを打って欲しかったし、そもそもこんな展開にした先発の小笠原慎之介がブッチギリでアレなのは誰が見ても明らかなのだが。

 終わった話を「たられば」で語っていても仕方がない。ポジティブかつ未来志向の当ブログは、若干ヤケクソ気味であっても無理やり“良かったところ”を探し、伝えるのが役割だと思っている。というわけで、今日は井領&遠藤の30歳外野コンビが揃って活躍した歴史的な日として、この二人を称えたいと思う。

 

席を取られる側の立場

 

 井領と遠藤。いっさい遠慮なく火の玉ストレートをぶつけると、たとえば巨人やソフトバンクならとっくの昔にユニフォームを脱いでいてもおかしくない選手達だろう。何かと(悪い意味で)話題にのぼりがちな2014年“落合ドラフト”の同期生。入団時点で25歳を超えていた社会人卒を6年も我慢してくれる球団などNPBを見渡しても中日くらいしか無いのではないだろうか。

 ともあれ井領&遠藤は今年も生き残った。与田監督の就任以来、井領は代打、遠藤は守備走塁要因という役割を与えられ、昨シーズンは満足とは言わずともそこそこの結果を残したことで、今シーズンは戦力として計算できる立場で一軍に帯同し続けている。ただ、昨日終了時点での成績は井領が打率.221、遠藤は.172とお世辞にも期待に応えているとは言い難い。昨年は遠藤の定位置だったアルモンテに代わるレフトの守備固めという役割も、武田健吾が担うことが多くなってきた。

 ウエスタンでは好調の石垣雅海に加え、石川昂弥、根尾昂、岡林勇希の若手トリオも虎視眈々と一軍返り咲きを狙っている。既に30歳オーバーの井領&遠藤は、同じくらいの期待値ならどうしたって若手に席を取られる側にいる。サラリーマンでも30歳を超えた途端に転職がうんと難しくなるという。なぜなら30歳に求められるのは結果しかないからだ。何歳であろうと夢や希望を追いかけるのは個人の自由だが、周囲の目は確実にシビアなものになる。その分岐点が30歳だ。

 

30代は生きてくだけで必死なのだ

 

 正直、誰も今から井領と遠藤がレギュラーを奪うなんて思っちゃいないし、望んでもいないと思う。既にこの二人は控えとしてどれだけ結果を残せるかというフェーズに入っていて、もしダメなら容赦なく下からの突き上げに遭い、上からは「ベテランのくせに」と圧をかけられる。そういう損な役回り。たぶん35〜40代の会社員なら妙な親近感を抱く人も多いのではないだろうか。

 キラキラ輝く若手とは違い、そこに漂うのは哀愁だ。よく「もっとがむしゃらに野球をしろ!」と若手に苦言を呈する指導者がいるが、井領と遠藤は冗談抜きで心底がむしゃらに野球をやっているのが伝わってくる。ファウル一球打つのに食らいつき、凡退すれば死ぬほど悔しがる。「なんとかなるでしょ」と余裕こいていられる20代とは違い、30代は生きてくだけで必死なのだ。

 今日の6回裏は、この二人が一緒に輝いた貴重なイニングだった。井領は言わずもがな、遠藤は先頭でヒットを放ち、一巡した2打席目も四球でチャンスメーク。まさに井領&遠藤のコンビで取った5点と言っても過言ではあるまい。

 もし勝っていれば立役者として一躍脚光を浴びたのだろうが、残念ながら反撃も及ばず敗戦。このあたりも哀愁に満ちていて、私なんかは逆に愛おしさを感じてしまうものだ。陽は当たらずとも、見ている人は見ているぞ。頑張れ、サラリーマンの星・井領&遠藤。