ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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スーパーエース、快挙成る

○5-0広島(13回戦)

 「おとうさんはなれたんだ……超サイヤ人に!」と涙ながらにつぶやいた孫悟飯じゃないが、「大野さんはなれたんだ……スーパーエースに!」と感嘆するほどの投球で、大野雄大が大記録を達成した。

 球団創設84年の歴史上、わずか3人しか成し遂げていない5試合連続完投勝利。そこに4人目が加わる瞬間を目撃できたのは、ファン冥利に尽きることだ。それも2安打11奪三振、2試合連続完封とまさしく支配的な投球で。

 相手に恵まれていたわけでもない。何しろ2試合は首位巨人を相手にしたもの。ヤクルト、巨人、巨人、DeNA、広島と満遍なく対戦し、いずれも3点以内に抑えているのだから文句のつけようもない。今の大野はどこと対戦しても勝てるような無双状態にあるのだ。

 

投げても打っても絵になる男

 

 大野の“スーパーエース感”をさらに引き立たせるのが、決勝点も大野のバットから叩き出したという事実だ。スコアレスの緊迫した空気のなか、5回裏に先頭の京田陽太が三塁打を放って無死三塁。打順的に考えて、なんとかしなくてはならないのは木下だったはずだ。しかしショートフライに倒れ、打順は大野に回ってきてしまった。

 大野は決して打撃がうまい選手ではない。となると、2死から大島洋平に懸けることになるが、せっかく無死三塁のチャンスを得ながら、にわかに無得点の気配が漂い始めたのが腹立たしく思えた。“打てる捕手”と言われる木下があれでは情けない。まったく、こんなんだから勝てる試合も勝てないのだーー。

 そうやってフラストレーションを溜めていると、大野がスクイズの構えからバスターに切り替え、なんとか当てた打球が三塁線の絶妙な位置へと転がった。投手が必死の体勢で捕球した時点で、ゴロゴーの京田は既にホームベース手前まで駆け抜けていた。間に合わない。會澤翼が一塁送球を指示する間に、京田が颯爽と生還した。

 打ったのは大野。圧倒的な投球でスコアボードに「0」を並べるエースが、今度は自らのバットで貴重な「1」を刻み込んだ。そういえば2試合連続完投勝利を飾った8月7日の巨人戦でも、先制点を叩き出したのは大野のバットだった。かつて80打席連続無安打を記録した“打てないエース”とはもはや別人。今や投げても打っても絵になる男だ。

 

バチがあたるくらい贅沢

 

 それにしてもファンというのは身勝手なもので、先制した後の中盤以降は「1点で十分。それ以上は取らなくても良い」と思いながらドラゴンズの攻撃を見ていたことを白状しよう。

 なぜなら1対0で完封勝利した方が、漫画みたいでカッコいいから。うん、とんでもない暴論をホザいてるのは自分でも分かってる。でも実際、自分のバットで取った1点を守り切って大記録達成って、めちゃくちゃカッコいいじゃん。そんな瞬間に巡り会ってみたいと思うのは、ファンなら当然の心理ではないだろうか。

 もちろん普段ならそんなことは絶対に思うまい。ドラゴンズというチームは5点、いや10点でさえセーフティリードとは呼べないことを身をもって痛感してきた暗い歴史を持つのだから。たかが1点など吹けば飛ぶようなもの。勝利を確実にするべく、最後まで手を休めずに打って打って打ちまくれと願うのが普段の観戦スタイルである。

 だが今日の大野には、1点さえも取られる気配が微塵も感じられなかった。だから本気で1対0の完封を期待したのだが、結局6回に1点、8回には3点を追加して一番見たかった光景は幻に終わった。バチがあたるくらい贅沢を言っているのは百も承知。そんな贅沢も言えるくらい今日の大野はまったく打たれる気がしなかった。

 さあ、さあ、さあ、さあ、さあ、さあ! 来週は10戦連続勝利が懸かる巨人・菅野智之とのガチンコスーパーエース対決だ。順位とかゲーム差ではなく、いちプロ野球ファンとしてこれほど楽しみなマッチアップは久しぶりだ。とりあえず台風よ、さっさと消えて無くなれ。