ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ローテ再編と満塁の大島

●2-3巨人(15回戦)

 今日の先発は、ローテ通りなら大野雄大が投げる予定だった。ところが28日に勝野昌慶が一軍合流。これにより大野がこのカードを回避することが明らかになり、球団記録に並ぶ5試合連続完投勝利への挑戦は1日の広島戦に持ち越されることになった。

 今シーズンの大野は巨人戦に3試合先発し、防御率1.08、WHIP0.64と支配的な投球をみせている。奪三振73のうち41%にあたる30個は巨人から奪ったものだ。大野にしてみれば巨人は“カモ”と言えるほどのお得意様で、先般の原監督の「やられたらやりかえす」発言も大野を意識したものと思われる。あの時点では、2週間後の再戦が濃厚視されていたのだから。

 しかしこのタイミングでローテ再編を仕掛けたことに対して、少々面食らった方も多いはずだ。リーグで一番強い相手にエースをぶつけなくてどうするんだと憤慨した方もいるかもしれない。ましてや相性が良いにもかかわらずだ。

 ただ、個人的には大野の回避は納得がいくし、自分が監督でもそうしていたと思う。

 理由は二つあって、一つは昨日ヤリエルに関しても書いたように、プロはそう何度も続けて同じ相手にやられないからだ。共にこのカード三度連続の登板となるヤリエル、大野が立て続けに負ければ、これまで築いてきた「中日は巨人には強い」というイメージが粉々に打ち砕かれてしまうだろう。それどころか一気に形勢逆転となり、今後の対戦も苦手イメージを負うことになりかねない。それを避けるためにも、最初からヤリエルが負けることを想定して、敢えて大野を外すのはシーズンをトータルで考えれば妥当な作戦である。

 こんなことを書くと「出る前に負けること考えるバカがいるかよ!」とビンタされそうだが、勝負事は常に最悪を想定し、そこから逆算して作戦を練るものだと、あのノムさんも語っている。この場合、最悪の想定はヤリエル、大野の共倒れだ。

 

 ローテ再編を支持するもう一つの理由は、ローテの泣き所である火曜日、つまり平日カードの頭をエースで確実に取りに行くためだ。小笠原慎之介、柳裕也がどうもピリッとしない以上、いわゆる裏ローテは阪神戦のような厳しい戦いを余儀なくされる。そこで安定感のある松葉貴大、エース級の投球ができるヤリエルと大野を分散し、表裏のバランスを取って大きな連敗を回避したい考えだ。

 シーズンも残り60試合を切り、ここから先は借金を増やさないことがAクラス入りの条件になってくる。日曜に大野で勝って健やかにウィークデーを迎えるのは確かに気分が良かったが、それよりもカード3タテを喫しないことを最優先に考えるのは当然である。

 結局この3連戦は負け越しで終えたが、大野で負けたわけではないので、今後の同カードに与える影響はさほど大きくないと思われる。原監督としても、本音を言えば「大野にやりかえして」勝ち越しを決めたかったところだろう。

 大野の登板が想定される火曜はもう9月だ。プロ野球には昔から「月が変わるとツキも変わる」という迷信がある。ローテを組み換え、再発進するにはちょうどいいタイミングと言えそうだ。

 

満塁に無類の弱さを発揮?する大島

 

 大野に代わって日曜の登板を任された勝野は初回から荒れ気味で3失点。大量失点を喫したいつぞやの広島戦の再現かと肝を冷やしたが、その後は立ち直って6回まで投げ切ってくれた。巨人相手にここまで出来るなら十分合格点だ。これでローテに目処がついた。リリーフ陣も安定している。

 にもかかわらず例年通りにBクラスに甘んじているのは、開幕から一貫して元気がない打線に責任を求めざるを得ない。

 9回、デラロサから堂上直倫、井領雅貴、遠藤一星の控えトリオがチャンスを作って1死満塁。最低でも同点、あわよくば逆転勝利を期待したが、頼みの大島洋平が初球を叩いてダプルプレーではどうしようもない。この日最高の盛り上がりが、文字通り一瞬にしてため息に変わったのだった。

 満塁の絶好機に大島が併殺を叩くのは、これが初めてではない。6月28日の広島戦では4点ビハインドで迎えた3回裏、カウント2-0から併殺網に掛かっているが、やはり今日と同じくファースト・ストライクに手を出したものだった。

 ちなみに今シーズン3個しか無い併殺打のうち2個が満塁機に打ったもの。これで満塁機の大島は9打数2安打と、トップバッターの数字としてはいかにも物足りない。最低限はやってくれそうなイメージとは裏腹に無類の“弱さ”を発揮しているのだ。

 チームの好調時には打ち出の小槌のようにヒットを打ちまくっていたが、ここ6試合は4試合で無安打と低迷気味。それに連動するようにチームも2カード連続で負け越したのは偶然ではないだろう。今日の併殺、そして2戦目のトンネルと、この3連戦は大島の攻守にわたる満塁でのマズいパフォーマンスが負け越しを招いたと言っても過言ではない。

 あまり選手個人に苦言は呈したくないが、1,500安打達成の達人だからこそ、求めるレベルも高くなるのは仕方あるまい。

 

【参考資料】

日刊スポーツ1996年2月12日付