ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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打たれどき

●3-12巨人(14回戦)

 デビューから3試合続けて好投を披露し、うち2試合は中盤までノーヒットに抑える完璧な内容。彗星のごとく現れ、たちまちローテの救世主となったヤリエル・ロドリゲス 。ただ、巨人が同じ相手に3カード続けてやられるほど柔なチームではないことは長年野球をみていればイヤでも理解できる。

 そろそろ打たれてもおかしくない頃合、と言ったら変な感じだが、いわば今日のヤリエルは“打たれどき”だったと思う。田中将大の24連勝は別格として、菅野智之、涌井秀章の9連勝などエース格の投手が連勝を重ねることはあっても、並の投手はせいぜい3、4試合も好投が続けば次は黒星を喫する可能性が高い。川井進の11連勝(2009年)のような例外もあるにはあるが、まあ大抵はそううまくはいかないものだ。

 だからこそ二桁勝利を挙げる投手はそう簡単には現れないし、プロ野球で「勝つ」というのは想像以上に難しいことなのだ。ましてや今はスコアラーをはじめとした解析班がテクノロジーを駆使して徹底的に投手を研究し尽くす時代。

 二度ならず三度も同じ投手に苦杯を嘗めたのでは盟主の名が廃る。そういう意地もあって、人一倍プライドが高い巨人が打倒ヤリエルに向けて相当対策を練ってくるであろうことは想像に難くなかった。

 前回、3連戦の頭を取りながらヤリエル、大野雄大に封じ込まれてカード負け越しを喫したあと、原監督が人気ドラマのセリフよろしく「プロだから。やられたらやりかえす」と決意表明をしたのも、巨人ナインの尻に火をつけたのかもしれない。

 結果的には宣言どおりの倍返しで、ヤリエルは4回5失点で来日初黒星を喫した。慢心していたわけではない。むしろ試合前には「(相手打者は自分の球を)見慣れていると思うからちょっとした戦略の変更をしていきたい」と早くも3度目の対戦となった首位チームを相手に、球種、リズムといった面での工夫を示唆していたのだ。

 決して化けの皮が剥がれたわけではない。今回は失敗したが、工夫する熱心さがあれば今後もヤリエルは日を追うごとに成長していけるだろう。

 

監督自らが声かけに

 

 序盤で試合を壊したのがヤリエルなら、終盤に傷口を広げたのはプロ19年目、山井大介だった。今シーズン3度目の登板だが、既に自責点は付いている。今回の昇格は勝ちパターンの一角としてではなく、負け試合のロングリリーフ要因という意味合いが強い。今日はまさにその通りの展開。山井が7回から登板し、2イニングを消化するのは既定事項だったのだろう。

 ところが、その山井が捕まってしまう。なんとか2死までこぎつけるも、満塁を背負ってから3者連続タイムリーを浴びたのではひとたまりも無い。これが若手投手なら勉強の意味も込めていわゆる“晒し投げ”をさせることもあるかと思うが、何しろマウンドにいるのは球界現役最年長の大ベテランだ。

 名誉を守るためにも交代する手もあったと思うが、首脳陣は最後まで山井に投げてもらう方を選んだ。そして12点目のタイムリーを打たれた直後、なんと与田監督が自らマウンドに赴き、山井に一言、二言、何か言葉をかけた。内容は分からないが、ベテランをマウンドで孤独にしない配慮はさすがである。

 間違えても勝ちパターンの投手を使いたくない展開で、予定通り2イニングを投げ切った山井。こういう投手が一人、ベンチにいてくれると頼もしい。余談だが、中日の先発投手が巨人相手に3カード連続で白星を挙げたのは2007年の山井が最後。以降、“打たれどき”を乗り越えて三度も巨人の鼻を明かした投手は一人も出てきていない。

 13年経ってその役割は変わっても、存在の大きさは不変。チームの要請とあらば、たとえ敗戦処理でも粛々とこなしてくれるありがたさ。このチームに山井の力はまだまだ必要だ。