ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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目醒めよ、陸の王者

●1-5阪神(10回戦)

 今朝の中日スポーツによれば、球団新人キャッチャーがスタメンマスクを被った試合での6連勝は、1981年の中尾孝義、そして郡司裕也の2人のみ。今日勝てば連勝は「7」に伸びて球団新記録となったのだが、あの小笠原慎之介の出来ではたとえ全盛期の古田敦也がマスクを被っていても制御は難しかっただろう。

 サインに首を振った挙句、四球、四球、四球で満塁ではキャッチャーとしてはお手上げだ。その後も5回裏には2死から踏ん張れずに追加点を許し、ダメ押しとなったボーアの2ランも郡司が構えたコース(外角低め)とはまったく違う、真ん中高めに浮いたストレートを痛打されたもの。厳しい言い方になるが、小笠原が一人でチームのいい流れに水を刺したような内容だった。

 一方、同じ左腕の高橋遥人の前に打線は併殺崩れの間の1点だけと沈黙。過去3度の対戦ではいずれも1点以下しか取れていない難敵を相手に、“4度目の正直”もならずまたしても黒星を喫した。

 

ひときわ光った郡司の存在

 

 小笠原の投球や、久々に元気がなかった打線を貶すのは簡単だが、敢えてポジティブな側面を探すなら郡司の第2打席は語るに値するものだった。高橋遥が許した、たった一つの四球。それをもぎ取った郡司の選球眼と粘りは、やはり並大抵のものではない。

 5回表、先頭で迎えたこの打席。内外角を丁寧に突く攻めに遭い4球で追い込まれたが、ここからが郡司の本領発揮。ストライク球はファウルで逃げ、ボール球は頑として振らず、8球粘った末に四球をもぎ取ったのだ。

 高橋周平を除くスタメン打者が低めのツーシームに手を出すなど高橋遥の術中にはまる中、打たなくても出塁を稼げる郡司の存在はひときわ光っていた。ライバルの木下拓哉は“打てるキャッチャー”との触れ込みで開幕当初こそ活躍したものの、致命的なチャンスでの弱さが祟ってここまでわずか3打点に留まっている。

 郡司も本来の打棒を発揮しているとは言い難いが、3打席に一度は出塁が見込めるのはチームにとって非常にありがたい。この持ち味がある限りは、正捕手レースの一番手を走り続ける状況に変わりなさそうだ。

 

「そんなんじゃねェだろ!!」

 

 ただ、郡司といえばやはり六大学三冠王に輝いたバッティングである。ここまで打率.188とやや苦戦しているが、そろそろこちらでも真価を発揮して欲しいと思うのは贅沢すぎるだろうか。

 今朝の中スポには「どういう攻め方をしてくるかというのは少しずつ分かってきているところ」「ここからたぶん上がっていくと思う」と、本人による大胆予測も掲載されていた。普通、ルーキーなら試合に出るだけで手一杯でもおかしくないのだが、こんなことを言えてしまうのはさすが、“陸の王者”の猛者達を主将として束ねただけの事はある。

 そもそもキャッチャーで2割前後なら、一応の及第点ともいえよう。あの谷繁元信だってキャリア後期は打率ランキングの一番下が定位置だった。ライバルの木下もいつのまにか2割2分まで落ちてきている。正直、それが正当な実力だろう。だが郡司に関しては、2割じゃ全然物足りなく感じてしまうのだ。まだルーキー。まだ一軍出場11試合。

 それでも「そんなんじゃねェだろ!!」と『HUNTER×HUNTER』のネテロみたいなことを言いたくなってしまうのは、その真の能力をまだまだ発揮できていないことをファンなら誰もが分かっているからだ。最低でも2割5分、ホームランだって二桁打てるポテンシャルは十分秘めていると思う。

 同じくルーキーで活躍した中尾は、2年目の1982年に2割8分を打ってチームを優勝に導き、なんとMVPまで受賞した。長年、課題とされている竜のキャッチャーポジション。“打てる”と“勝てる”を兼ね備えた郡司が本格的にモノになれば、いよいよ優勝も現実的な目標として見えてくるはずだ。