ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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スチールドラゴン回避

○3-1DeNA(10回戦)

 8連勝の翌日から8連敗。昨シーズン、ドラゴンズが惜しくもAクラス入りを逃した最大の要因は、7月7日から27日までのわずかな期間に起きた、ナガシマスパーランドの絶叫コースター『スチールドラゴン2000』ばりの乱高下にあった。

 一昨日までドラゴンズは4連勝。去年の8連勝には程遠いが、それでも一気に順位を上げてボルテージが高まっている感じはよく似ている。そして昨日、右のエース柳裕也で落として連勝ストップ。ちょうど去年も連勝が止まり、連敗が始まったのは柳が先発の日だった。

 奇妙な符号。なんだかイヤな予感がする中で、よりによって2勝7敗と大きく負け越している苦手DeNAとの対戦ときた。しかも相手先発は、既に今シーズン2勝を献上し、対戦防御率0.60と苦手を通り越してアレルギーになりつつある大貫晋一だ。ここで負ければ去年同様ズルズル行く可能性が高い。

 近年のドラゴンズは上げ潮ムードになった途端に連敗し、下位に低迷するパターンを繰り返してきた。借金5から返済の方向へ進めるか、あるいは二桁の沼へと沈んでいくのか。今シーズンを占う上で、ターニングポイントとなり得るほどの重要な意味を持つ今日の一戦。大貫を打てそうで打てないチームをギリギリで支えたのは、またしても背番号38、松葉貴大だった。

 

大人の投球でチーム救う

 

 早いもので今シーズンもあと5試合で折り返しを迎える。8年ぶりの開幕カード勝ち越しに始まり、ハマスタでの3タテ、彗星の如きアリエルの登場、相次ぐ怪我人、与田監督の采配をめぐるドタバタ、そして大野雄大の3戦連続完投勝利とめまぐるしく状況が変動した前半戦のドラゴンズ。もし1人、MVPを選べと言われたら私は迷わず松葉の名を挙げたいと思う。

 松葉の今シーズン初先発は7月15日のDeNA戦。ちょうど例の「代打三ツ間」事件や、ナゴヤドーム開場以来ワーストの19失点が重なり、チームの状態がドン底まで落ちていた時だった。本拠地での9連戦にもかかわらずヤクルト、広島に2カード連続で負け越し、このDeNA戦も初戦を落としていた。

 にわかに監督解任も囁かれる中で、はっきり言って誰も期待していなかった松葉が6回途中1失点の好投をみせ、崩壊状態だった先発投手陣に一縷の望みを与えたのだ。結果だけではなく、松葉には内容も伴っていた。とにかく序盤から球数を多く投げ、中盤を迎える頃にはスタミナ切れが顕著だった先発陣にあって、松葉は少ない球数でテンポ良く抑える投球術を披露した。

 翌日先発し、5回無失点で白星を収めた岡野祐一郎も「昨日の松葉さんのピッチングがいいお手本になりました」と語るなど、若い先発投手が多いチームにあって“勝てる投球とは何ぞや”を実践してみせたのだ。現に松葉の初登板前と後とでは先発陣の成績は劇的に改善している。

 松葉登板前は22試合114.2回53四球、防御率5.49だったのが、登板後は33試合195.1回53四球、防御率2.49とまるで別のチームのように変貌。特に与四球はイニング数が倍近く違いながら同数に留めており、いかに打たれるのを怖がるあまりの四球が失点に繋がっていたのかが一目瞭然である。

 今日もピンチを背負いながら要所を占める投球で7回1失点と好投。特に4回表は無死二塁としながら、後続を変化球主体の組み立てで見事に封じこめた。得点圏で神里和毅、ソト、佐野恵太との対戦ともなれば足がすくんで逃げたくもなりそうなものだが、全12球のうちボール球は4個だけと攻めの投球に終始し、ランナーは釘付け。これぞ熟練という投球は、大人の味わいにあふれていた。もっとも松葉は下戸で、子供の飲み物しか飲めないようだが。

 

 松葉の活躍により、心配された『スチールドラゴン2020』は回避できた。さらに明日あさってはヤリエル、大野雄大と続く鉄板のウィークエンドだ。強竜の上昇はまだまだ止まらない。あ、でも福田の年俸はフリーフォールみたいに落としていいよ。