ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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禁断の“ライト・アルモンテ”

●1-6巨人(10回戦)

 “カリブのヒゲ怪人”が一軍に帰ってきた。

 7月3日に左内腹斜筋筋損傷で登録抹消されていたアルモンテが、約1ヶ月半ぶりに再昇格した。とは言っても二軍では2試合に出場しただけ。

 本人は「怪我した箇所は打つのも守るのも気にならなかったよ」と問題なしをアピールしたが、仁村二軍監督は「これからどんどん実戦を重ねていってだね」と早期の復帰に慎重な構えを見せていただけに、このタイミングでの昇格には驚かされた。

 本当なら首脳陣も完治を確認したうえでGoサインを出したかったのだと思うが、これには外国人ならではの事情も絡んでいると推察できる。アルモンテの契約年数は単年。ただでさえ試合数が少ない今シーズン、残り試合は既に80を切っている。つまりあと2ヶ月半の間に目立った活躍ができなければ、契約更新は極めて難しくなることが予想される。

 去年もちょうどこの時期、アルモンテは走塁時に右太ももを痛めて残りのシーズンを棒に振っている。その影響もあってオフには育成契約の打診もあったようだが、与田監督がドミニカへ直接出向き、患部に問題がないことを確認して支配下登録での契約延長を交わしたという経緯がある。

 それだけに今シーズンのアルモンテには元気に働いて球団の期待に報いて欲しかったのだが、残念ながら開幕2週間にして離脱。異例の“見切り発車”はアルモンテの焦りを表しているように思えてならない。

 

禁断の“ライト・アルモンテ”

 

 しかし戦力的にはアルモンテがいるといないとでは雲泥の差だ。たとえ代打要因であってもアリエルの離脱で著しく攻撃力がダウンしたベンチにアルモンテがいるだけで、随分と見栄えがするものだ。

 出番は3点ビハインドで迎えた5回表のことだった。無死一、二塁から井領雅貴、木下拓哉が倒れてツーアウト。ここで首脳陣は先発の松葉貴大に代え、アルモンテを投入した。一発出ればたちまち同点。その長打力に期待しての起用であることは明らかだ。昨日までならここで堂上直倫か遠藤一星を出すしかなかったのだから、やはり相当の戦力アップといえよう。

 感心したのは久々の打席にもかかわらず内容も充実していたことだ。アルモンテはそれまでドラゴンズ打者陣がおもしろいように手を出していた戸郷翔征のフォークボールを冷静に見極め、フルカウントまで持ち込んだ。結局8球目のやや甘いフォークにタイミングが合わず空振り三振を喫したが、「何かやってくれるのでは」と思わせる威圧感は他の控え野手にはない魅力である。

 しかし我が目を疑ったのは、その後の光景を見た時だった。残り4イニング。兎にも角にもまずは追いつくしかない展開で、2番手投手の谷元圭介を6番の井領のところに入れ、9番アルモンテをそのまま残した。ここまでは分かる。衝撃的だったのはそのポジションである。なんとアルモンテがーーライトに入ったのだ。

 福田永将とアルモンテ、そしてビシエド、高橋周平の4人を共存させるための唯一にして禁断の手段ともいえるこの配置。本職レフトの守備もままならないアルモンテは、当然二軍でもライトを守った経験はなし。勝つためにはなりふり構わぬ超攻撃的オーダーにかつての強竜打線を思い出した古参ファンも少なくないはずだ。

 なかでも強烈だったのはナゴヤ球場最終シーズンとなった1996年の外野布陣で、その顔ぶれはレフト山崎武司、センター音重鎮、ライトパウエルというもの。「守れないなら打てばええんや」という星野監督のニンマリ顔が目に浮かびそうな攻撃全振りオーダーは、リーグ最多のチーム本塁打179発を記録し、“メークドラマ”を目論む長嶋巨人を徳俵まで追い詰めたことで知られる。

 ナゴヤドームに移ってからはとんとご無沙汰になっていた、いわゆるファイヤーフォーメーションが令和に再び実現するとは。少し感慨にふけりながら、あの時代さながらの逆転劇に期待して見ていたのだが、捨て身の采配も虚しく犠牲フライによる1点止まりという塩っぱい結果に終わった。

 だが狭い東京ドームだ。どうせ最下位の身、なんなら明日は最初からこの外野陣でスタメンを組んでも面白いのではないだろうか……なんてことを本気で思いかけたが、慣れない動きしてソッコーで怪我するアルモンテの姿が目に浮かぶから却下で。