ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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「旬」を食さずして寿司は語れない

●1-6巨人(6回戦)

 寿司を食べに行くと必ず「旬」の魚を一品は頼むようにしている。中トロやハマチ、エビあたりは不動のレギュラーで季節に関係なく頼むのだが、一年中でその時期にしか味わえない「旬」を定番の間に挟むことで、グッと満足度は深まる。

 たとえば高級魚で知られるカンパチは初夏から秋にかけてが旬。今の時期は脂が乗った最高の旨味を楽しめるだろう。また、さっぱりした味わいのイサキも夏魚の代表格だ。こちらは握りだけでなく、塩焼きや刺身にすれば口直しにもちょうどいい。

 その他、夏なら若イカ、アジ。冬は寒ブリ、ヒラメ。酒飲みなら白子やあん肝もたまらない。大抵の魚には旨味が凝縮された「旬」があり、それをしっかり把握しておくことで食の深みも広がるわけだ。

 「旬」はなにも魚だけに限ったものではない。野菜や果物、さらに野球選手にだって「旬」は存在する。いま使わなきゃいつ使うの? というノリに乗った状態。たとえばアリエル・マルティネスはそれに近い状態だと思うのだが、ビシエドが復帰した今日の巨人戦、昨夜のヒーローはまさかのベンチスタートを余儀なくされた。

 

カレンダーどおりの起用

 

 「4番・一塁」でスタメン出場し、チームを勢いに乗せる特大ホームランを打った。中日スポーツの一面も派手に飾った。

 喉から手が出るほど欲していたパワーヒッター。さらに数年来の課題だった正捕手論争に決着をつける可能性も持つ。世間の注目を集め、前日にはヒーローになった。まさに「旬」のど真ん中にいる選手といえよう。

 それでも首脳陣が先発マスクに選んだのは、加藤匠馬だった。確かに岡野祐一郎の2勝はいずれも加藤とバッテリーを組んで挙げたものだ。あるいは青学大出身者同士の“相性”を意識したのかも知れないが、百戦錬磨の大ベテランならともかくルーキー投手に捕手との相性があるとも思えない。

 そもそも岡野は即戦力と見込んで獲得した投手だ。「勝てる投球ができる」との触れ込みで入団した投手が、捕手によって大きく調子が左右されるなど冗談にも程がある。経験の浅いルーキーに対する過剰ともいえる配慮が、結果的にチームの首を絞めているとしたら本末転倒もいいところだ。

 おそらく今日、加藤がマスクを被ることは前々から決まっていたのだろう。岡野が投げる日は加藤。こんな感じであらかじめカレンダーに書いてあるのかもしれない。だが、昨夜のアリエルの活躍を見ても修正できないほど、果たしてそのスケジュールは堅固に守るべきものなのだろうか。

 「加藤」に二重線を引いて「アリエル」に書き換えるのがそんなに難しいことなのか。谷繁元信や中村武志ならともかく、加藤にそこまで配慮する必要があるとも思えないのだが……。

 試合開始前のスタメン発表でテンションが落ちてしまったのは否めないし、巨人側からしても昨日やられた打者がいないのは随分と安心したのではないだろうか。もうこの時点で隙を見せているようなもの。最下位が首位を迎え討つのに、律儀にスケジュールを守っている余裕などないはずだ。

 

いつになく弱気なコメント

 

 「これまで防御率0点で頑張ってくれていたわけだし、今日は使う場所を私が間違えたのかな」

 試合後、与田監督は敗戦投手になった福敬登の使いどころについて、こう反省の弁を述べた。やけに弱気な、自分を責めるような言い回しが気になる。

 最も信頼できる福を上位打線にぶつけた起用法は間違っていないと思うのだが、最近いろいろと言われてさすがに気に病んでいるのだろうか。いつになく自虐的な言葉は何かの前触れを予感させる。

 残り90試合。「旬」の選手をきちんと使えば、借金7は決して返せない数字ではない。石川昂弥を使い続ける我慢強さを捕手選びにも活かせれば、このチームの蘇生はまだまだ可能なはずだ。