ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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「オレだけは松葉を信じてた」

○5-0巨人(5回戦)

 ……とか言い出しそうなホラ吹きが雨後のタケノコのごとく湧き出てきそうな松葉貴大の2試合続けての好投。先発投手の台所事情がかつてないほど深刻な危機を迎えるなか、松葉が救世主になろうとは一体誰が想像しただろうか。

 昨日、死球を受けたビシエドは幸いにも打撲で済んだようだが、今日の試合は大事を取って欠場。ただでさえ貧弱な打線から遂に4番までもが消え、沈みきっているファンの気持ちを少なからず前向きに変えてくれた松葉の投球は実に見事なものだ。

 最速143キロ止まりながら、カーブ、チェンジアップを交えながら丁寧にコーナーを攻め、勝負どころではズバッと内角を突く投球はまさに軟投派の鑑(かがみ)。壁にぶち当たっている若きローテ投手達にはぜひ参考にしてもらいたい内容だった。

 それでいてビシエドへの報復とも取れる岡本和真への死球は相手へのダメージを最少限に抑えつつ、ファンの鬱憤はきちんと解消するという絶妙な塩梅。もちろん故意に狙ったとは思わないが、これでとりあえずお互いの4番にぶつけて一段落で良いのではないだろうか。

 その後もピンチこそ背負うも落ち着いた投球で難なく切り抜け、終わってみれば6回4安打無失点。元々は柳裕也の代役として掴んだチャンスだったが、7連勝中の首位巨人を相手にもしっかりと結果を残し、貴重なサウスポーとしてローテ入りを確定させた。

 

流れを変えたアリエルの一撃

 

 投げる方のヒーローが松葉なら、打つ方はなんといってもアリエル・マルティネスの一発が大きかった。ビシエドの代役として初めて「4番・一塁」でスタメン出場を果たしたアリエル。

 第1打席こそ戸郷翔征のノビのあるストレートの前に見逃し三振に倒れたが、4回裏におとずれた2打席目では甘く入ったスライダーを捉えて文句なしの2号ホームラン。これで一気にナゴヤドームのボルテージが高まると、京田陽太にも一発が出てたちまち主導権を握ることに成功した。

 アロンゾ・パウエルコーチの加入などで長打の意識づけを図って臨んだ今シーズンだが、今のところその成果はまったくと言っていいほど実っていない。何しろチーム本塁打15本はトップの巨人(33本)に倍以上離されての断トツワースト。かたや三振211個はリーグワースト2位と、「当たらないし、当たっても飛ばない」という惨憺たる内容に苦しんでいる。

 ただ、だからと言ってスモールベースボールに回帰するのは得策ではないと思う。確かにナゴヤドームは広く、フェンスも高いが、ファンがいちばん待ち望んでいるのはなんだかんだ言ってもホームランだ。現に今季、Twitterでもっともドラゴンズ関連のタイムラインが盛り上がったのは7月10日のビシエドのサヨナラ弾の瞬間だったという統計も出ているのだ。

 今日も、アリエルが打った途端に怒涛のごとく歓喜と興奮のツイートが流れた。ああ、やっぱりホームランは野球の華なんだ、と実感した。

 そしてホームランには試合の流れを変える力があるようで、今季ナゴヤドームでホームランを打った日本人選手は平田良介ただ一人だったが、アリエルの一発に触発されるように京田にもホームランが飛び出した。盛り上がるスタンド。こういう試合が見たかったし、これからも見たいんだ。

 

ホームランは打ち上げ花火、御神輿だ

 

 兼ねてからテラス設置賛成を表明している当ブログだが、その最たる理由は「ホームランが出た方が盛り上がるじゃん」、これに尽きる。正直、現代野球のトレンド云々とか、パークファクター云々は付け足しに過ぎない。

 ホームランとは祭りでいうなら打ち上げ花火であり、御神輿だ。いちばんギャラリーが盛り上がる、夏祭りのハイライト。夜空を彩るイロトリドリの花火は子供たちの記憶にも強く刻まれることだろうし、好きな女の子を誘って一緒に見上げた花火は永遠に忘れることはないだろう。

 一方で今までドラゴンズがこだわってきた野球は、花火同好会によるめちゃくちゃ渋い線香花火の内覧会みたいなものだ。「いやはや、硫黄の配合がたまりませんなあ」「派手さは無いですが、和紙の奥ゆかしさを感じますなあ」。

 うん、いいと思う。全然いいと思うけど、残念ながら一般ウケはしないんだ。もうウォーニングゾーンで惜しくもひと伸び足りずにキャッチされたり、行ったと思った打球が青いフェンスに阻まれるのはこりごりだ。やっぱホームランは正義だよ。そんなことを思ったホームラン攻勢での今夜の勝利。

 コロナのせいで夏祭りが中止になり、気分だけでも味わいたいと思ってホワイトベリー(世代的にこっち)の『夏祭り』を聴いたら、神宮球場の色々な悪夢がよみがえって気が滅入った。聴かなきゃよかった。

 

【参考資料】