ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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弱さの向こう側

●0-4巨人(4回戦)

 菅野智之との前回対戦は7月3日。大野雄大との投げ合いの末、あわやノーヒットノーランかという1安打完封を喫したのは記憶に新しい。

 あれから約3週間が経ち、ドラゴンズは相次ぐ主力の離脱もあって借金は膨らむばかり。一方の巨人は坂本勇人、丸佳浩の不振を若手が埋めて首位を快走している。その差7.5ゲーム。開幕1ヶ月にして早くもドラゴンズは窮地に追い込まれた。

 そんな中での最下位vs首位のカード。ただでさえ阪神に3タテを食らって死に体だというのに、追い討ちをかけるようなエース菅野との対峙はあまりにもキツかった。終わってみれば初回の無死一、二塁が最大のチャンスでした、という見飽きたパターン。8回裏におとずれた無死二塁もあっさりと後続を抑えられ、前回に続いて3安打完封負けを喫した。

 先制点を許し、さらに甘く入った初球を狙われてダメ押しを献上した山本拓実にももちろん非はある。ただ、今日の試合に関しては先発が大野であろうと柳裕也であろうと、誰であろうと結果は同じだったと思う。そういった細かい試合の流れだとか以前に、まったく勝利への意志が伝わってこないというか。

 悔しさも喜びもなく、淡々と負ける。そんな姿勢が如実に見えた試合だった。

 

ビシエド離脱なら内野手危機に

 

 3回表、亀井善行のタイムリーで先制点を許した時点で、勝てる見込みは限りなくゼロに近づいた。いや、もちろんこの時点ではまだ1点差であり、山本も踏ん張って後続は断ち切ったのだが、この1点差が今のドラゴンズにはあまりにも重かった。

 相手が菅野だから? それもある。だが、それよりも今のドラゴンズ打線が1点ビハインドを跳ね返せるビジョンがどう考えても思い浮かばないのだ。そうやって打ちあぐねている間に、どうせ追加点は巨人に入るに違いない。そんなイヤな予感だけはズバズバと的中する。今のドラゴンズファンは、ノストラダムスなんざ軽く凌駕するネガティブ専門の預言者だ。

 5回表には岡本和真に10号弾が飛び出す。なんでもビシエドが先に打っていればドラゴンズでは2009年の和田一浩以来となるリーグ10号一番乗りだったそうだが、こういう楽しみさえもいとも簡単に奪われてしまう。挙げ句の果てにはそのビシエドが左肘のエルボーガードを直撃する死球で途中交代である。

 とりあえず試合中はアイシングで様子を見たそうだが、最近のドラゴンズは様子見から結局抹消というパターンも目立つので、詳細は後日になってみないと分からないだろう。夕方には石川駿の故障離脱の一報が入ってきた。ただでさえ内野手が枯渇する中でビシエドまで離脱となれば、いよいよチームとして成立するのかどうかも危うくなってくる。

 そうでなくてもウエスタンはシエラに無理やりサードを守らせるなど選手不足が深刻なのだ。根尾昂の昇格はおろか、二軍の試合を回すために武山真吾ら引退から間もないコーチを育成契約の体で現役復帰させる可能性まで模索しなくてはなるまい。そうなれば、もはや勝ち負け以前の問題である。

 

気迫も気概もない打線が哀しかった

 

 哀しかったのはビシエドの死球のあとも、なんの波乱もなく黙々と抑え込まれたことだった。絶対的な4番打者が相手のエースに潰されたのだ。もっと青筋立てて向かっていって欲しかったが、いつもと変わらずあっさり凡退を繰り返す打線からは気迫も気概も感じられなかった。それが何よりも残念だった。

 表情も変えずにベンチに座る選手たち。悔しくないのかな? とか考えていると、つい昔のことを思い出してしまう。星野ドラゴンズなら、こんなことがあったらベンチにいる全員が「仁義なき戦い」の菅原文太のごとく怒り狂い、今にもベンチを飛び出さんばかりの勢いで弔い合戦に繰り出すに違いない。

 なんなら相手にもぶつけたれ! は今じゃ通用しない価値観だとしても、せめて内角攻めだったり、狙ってピッチャーライナーを打ち返すくらいの根性は見せて欲しかった。良識の範囲内でね。

 歳をとると、つい昔のことを美化しがちなのは悪い習性だ。ただ、あまりにもおとなしく、執念のかけらも感じさせない姿はどうしても物足りなさを感じてしまった。血潮沸き立つ闘志剥き出しのあの頃のドラゴンズを知っていると、尚更に。

 勝利はおろか1点取ることさえもできず、せめてもの反攻さえできない。かたやビシエドに当てた菅野は楽々と完封勝利を収め、マウンド上で笑顔を振りまく始末。乱闘要因の“ガンちゃん”こと岩本好広なら殴りかかっとるぞ、とまた懐古主義が顔を見せる。

 だって昔に想いを馳せなきゃやっとれんもん。こんなドラゴンズに誰がした。そろそろ“弱さの向こう側”が見えてきてしまっているのが、本当に怖い。