ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

スーパールーキー、衝撃デビュー

●2-7広島(6回戦)

 スーパールーキー石川昂弥のデビュー。

 本来ならもっと仰々しく祝うべき大事件なのにどこか釈然としないのは、あまりにも早すぎる判断に戸惑いの方が大きいからに他ならない。高橋周平の故障を受けて真っ先に思い浮かべた代役は、石垣雅海だった。

 二軍では昨年主にサードでレギュラーを張り、好守を連発するなど申し分ない活躍で急成長をアピールした。ちょうど8日に昇格したばかりとあってスムーズに代役を任せられると思い、昨日は「石垣伝説の始まりを目に焼き付けろ」と煽情的なフレーズで記事を締めたのだが、まさかアップした数時間後に石川の昇格が報じられるとは夢にも思わなかった。

 その一報が流れるや否や、ネット上は喧喧囂囂の大騒ぎ。いや、ネットだけに留まらず東海全土の茶の間ではあーでもない、こーでもないと夜を徹しての大議論が巻き起こったであろうことは想像に難くない。

 純粋に期待に胸をふくらませる者、まだ早すぎると懐疑的に捉える者……。普通なら只々楽しみな気持ちで一杯になるはずのスーパールーキーの一軍昇格に、ここまで賛否が分かれるのもめずらしい。

 かく言う私もどちらかといえば「否」寄りの考えだ。理由は幾つかあるが、もっとも恐れているのはまだ土台づくりの段階で一軍に放り込むことにより、やる気に体がついて行かずに故障につながるリスクだ。

 高卒2年目にレギュラーを勝ち取った村上宗隆、坂本勇人も1年目は大半を二軍で過ごした。近年、1年目から一軍で活躍したと言える高卒打者の例は森友哉くらいしか無く、どれだけ豊かなポテンシャルを持っていてもまずは二軍で基礎練習と体力作りに励むのが通例となっている。

 故障者続出の緊急事態とはいえ、手放しでは喜びにくい今回の昇格。なにも水を差したいのではない。本人も「このチャンスをつかめるように」と意気込んでいるようだが、それこそが怖いのだ。図体もメンタルも一級品だが、まだ19歳。無理はしていいが、無理しすぎないように周囲にはしっかりと管理してもらいたい。

 

球団3人目、高卒ドラ1初打席初安打

 

 そのデビュー打席は2回裏、1死ランナー無しという場面で訪れた。初球、外角低めの146キロを見逃し、2球目のスライダーは冷静に見送って1-1。バッティングカウントとなって3球目、ボール気味のチェンジアップを掬(すく)うようにして捉えた打球はレフト線ぎりぎりフェアゾーンに落ち、石川は初打席初安打、しかもツーベースという華々しいデビューを飾った。

 ちなみにドラゴンズの歴史上、高卒ドラフト1位野手は石川を含めて10人いるが、初打席初安打を記録したのは1984年・藤王康晴、’03年・森岡良介の2人だけ(いずれも二塁打)。あの立浪和義でさえ開幕戦で飛び出したフェンス直撃のツーベースは2打席目だから、いかに10代のルーキーが初打席で結果を残すのが難しいのかが分かる。

 その後の打席ではバッテリーも警戒したのか3三振とプロの洗礼を浴びたものの、まずは幸先よく1本が出ただけでも大したもの。試合自体はいわゆる“塩ゲーム”だったが、それ以上に観客は充実した気分でナゴヤドームをあとにしたのではないだろうか。

 

次回昇格は実力で勝ち取る!

 

 それにしても、いきなり打つとは恐れ入った。二軍でも及第点の成績は残していたものの、まだ荒削りな部分も目立ち一軍レベルに対応するには時間がかかると見ていたのだが、やはりスターは格が違う。しかもこれだけの注目を浴びながらの初打席だ。並のルーキーなら緊張でまともにバットも振れなくなりそうなものだが、石川は佇まいからして投手を威圧するような雰囲気を備えていた。

 既に体格も一軍選手と引けを取らず、ルーキーにありがちな1人だけモヤシのような選手が混じっているということも無い。前々から言われているように雰囲気が鈴木誠也によく似ているのも期待したくなるポイントだ。

 開幕から1ヶ月を待たずしての異例の一軍デビュー。結果が出ようと出まいと数週間後には二軍に戻ることになるとは思うが、一軍の舞台を踏んだことで得られる経験値は計り知れないものがあるはずだ。それを糧にして、次回は文句なしに実力で一軍切符を勝ち取って欲しいと思う。

 なあに、心配はいらない。今日のスイングを見てはっきりと確信した。石川は間違いなく藤王、森岡を超えるような選手になる!

 ハズレたら本気で泣く。