ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ハプニング上等

●4-19広島(5回戦)

 3番キャッチャーにアリエル、8番に阿部寿樹という現状考え得る中で最も攻撃的なオーダーを組んだ今日のドラゴンズ。約1年ぶりの登板となる勝野昌慶が先発とあって、前回の対戦で打ち込んだ床田寛樹を早めにノックアウトして試合の主導権を握ろうという魂胆がうかがえる。

 だが蓋を開けてみれば一巡する前に勝野、そして三ツ間卓也が早々に試合を壊してしまい、この打線の真価も発揮されぬまま防戦一方で終わってしまった。とは言え下位打線まで期待できる打者がそろっており、ここまで攻撃力に振ったオーダーもドラゴンズにはめずらしいので非常に新鮮な印象を受けた。

 今日のような展開ではさすがにどうにもならないが、通常の試合なら相手にかなりプレッシャーを与えられる打線だと言えるのではないだろうか。現に初回は平田良介の1号ソロでたちまち同点に追いつき、9点を失った直後にも打線がつながり2点を返すなど破壊力の一端を垣間みせた。これに懲りて一度限りの幻にせず、是非また見てみたいオーダーである。

 

正捕手問題、決着へ

 

 試合に関しては特に語る気も起きない。いわゆるビッグイニングを2度も食らう典型的な大敗ゲーム。とにかく「打たれた投手が悪い」に尽き、あれこれと反省する必要もないだろう。2軍で好成績を残した勝野がまったく通用しないのは少しショックだったが、こういう結果に終わった投手が次回登板では別人のような投球を見せることもよくあるので、降格の判断は再度先発の機会を与えてからでも遅くないと思う。甘いと言われるかもしれないが。

 それよりも特筆すべきはアリエルだ。リード面では反省だらけでも打撃ではタイムリーを含むマルチ安打と存在感をみせた。つい1週間前に支配下登録されたばかりの新戦力は外国人キャッチャーという物珍しさから頻繁にメディアに取り上げられ、今やチーム内でも一二を争うほどの有名人となった(それだけ他に全国区のスターがいない裏返しでもあるが)。

 嬉しいのは、このアリエルとて2番手に甘んじているという事実だ。昨日までの2試合は木下拓哉が先発マスクを被り、アリエルは代打の切り札として出場した。木下も打率.343と打撃好調を維持しており、守っては山田哲人の二盗を刺すなどいよいよ正捕手の風格さえ漂いつつある。そこに現れた新星アリエル。開幕マスクは加藤匠馬か郡司裕也かと盛り上がっていたのがウソみたいだが、長年にわたりチームのウィークポイントだった正捕手問題が、一転して「どちらも魅力的で選べない」という信じられないような展開で決着を迎えようとしている。

 

石垣伝説が始まる

 

 正捕手を1人に固定しない球界のトレンドに倣って、おそらく今後も無理に木下かアリエルのどちらかに決めるのではなく、状況に応じて併用していく形が現実的だろう。ただ、いずれにせよ長打も期待できる打撃型の捕手をスタメンに置けるメリットは計り知れない。それは長年、阿部慎之助に手痛い一打を浴び続けたセ・リーグ各球団のファンなら身に染みて理解しているはずだ。

 昨季、12球団の全ポジションのなかで最低OPSを記録したドラゴンズ捕手陣の打撃が、一転して“強み”に変われば戦い方も劇的に変わっていくだろう。何しろ想像だにしなかった急展開だ。まだ首脳陣も起用法を含めて手探りの感は否めないが、これがもう少し安定したとき、必ずこのチームは浮上する。

 高橋周平の全治が1ヶ月? それは悲報だ。でも石垣雅海がいる。1ヶ月前、木下とアリエルが正捕手を競うことになるとは誰も予想できなかったように、何が起きるか分からないのがペナントレースの醍醐味だ。ハプニング上等。石垣伝説の始まりを明日からじっくり目に焼き付けようではないか。