ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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求む、ヒーロー

△5-5ヤクルト(5回戦)

 出る時は出る、出ない時は出ない。にしても、いくらなんでも出なさすぎではあるまいか。

 9回裏2死一、三塁。木下拓哉を敬遠して大島洋平勝負という博打に出たヤクルトベンチ。不振とはいえ集中力抜群の大島である。きっと一、二塁間をキレイに破る当たりで今季初のサヨナラ勝利を見せてくれるに違いない。だが祈りは通じず、ショートゴロが力なく弾む。2試合連続の延長戦に突入。またしてもドラゴンズがサヨナラのビッグチャンスを逃した。

 たった1本ヒットが出れば試合が終わるという場面で、一体何度ため息を吐いてきたのだろうか。昨季、ドラゴンズが収めたサヨナラ勝利はわずか2回。内容も暴投と押し出しで、打ってフィナーレを飾る劇的な勝利は遂に一度たりとも叶わなかった。逆にサヨナラ負けを喫したのは12回。もちろんその中には、マリンスタジアムの悲劇も含まれている。役柄はいつも斬られ役。たまには爽快な勝利を演じる側に回りたいのだが、どうしてだかラスト1本が出ずに終わってしまう。

 勘違いではない。調べてみると、最後に打ってサヨナラ勝ちしたのは2018年8月23日の阪神戦まで遡らなければならなかった。3-3で迎えた9回、1死一、二塁の好機からビシエドが適時打で決めた試合だ。そこから約2年間、延々と歓喜から遠ざかっている。

 もはやサヨナラで喜ぶという感覚さえ忘れてしまった。「決定力不足」とはサッカー日本代表を揶揄する際によく使うキーワードだが、あと1本が出ない不甲斐なさは、まさしくそれ。ドラゴンズファンはスカッと終われないもどかしさを、もう2年も味わい続けているのだ。

 

いつも最後はため息

 

 斎藤雅樹の夢を打ち砕く落合博満の逆転サヨナラ3ラン、中村武志の代打満塁&サヨナラ弾、山﨑武司のX字サヨナラ弾、立浪和義のサヨナラ満塁弾……。

 ドラゴンズの歴史を彩った様々な名シーンの中でも、ファンを最も熱狂させるのはなんと言ってもサヨナラゲームだ。過去9度の優勝シーズンを振り返っても、’54年10回、’74年9回、’82年5回、’88年11回、’99年10回、’04年7回、’06年6回、’10年12回、’11年7回と4シーズンで二桁のサヨナラ勝ちを収めている。やはり強いチームは「ここぞ」の場面でしっかりと決めることができるのだ。

 一方で昨年も、チャンスは何度もあった。ランナーがたまり、テンションが最高潮に達するのも束の間。いつも最後は凡打に打ち取られ、ため息を吐くのがお決まりだ。

 そして今季もそれは変わらないようだ。6月26日の広島戦では9回に大瀬良大地を一打逆転サヨナラという局面まで追い詰めながら、最後は平田良介の痛烈な当たりがサードに阻まれて万事休す。昨日も平田のライナー性の当たりが抜けてさえいれば勝てたのだろうが、どういうわけだか一瞬期待を持たせるようないい当たりが、ことごとく正面を突く。もうここ何年も、そんな試合ばかり見ている気がする。

 陰鬱とした気分でニュースを付けると、他球団の選手たちがウソのように気持ちよく逆転タイムリーとかサヨナラホームランを打ちまくっているのが目に飛び込んでくる。なぜそんなに簡単に劇的な一打が打てるのか。もう2年近くもそういう一打から嫌われ続けている球団のファンとしては信じられない光景だ。まあ打たれるのには慣れてしまったけれど。

 

今月中に一度でもサヨナラを!

 

 絶対に勝たなければいけない試合をドローで終えてしまった。序盤のリードを簡単に吐き出した山本拓実が悪いのはその通りだが、それよりも9回裏のチャンスであと1本が出ない事こそが、このチームが抱える本質的な弱さを表していると思う。

 決めきれなかった大島がダメだとか言いたいのではない。もっと根深い、チーム全体が抱える弱さ。いわゆる“勝負弱さ”なのか、何なのか。理由は分からない。ただ、約2年にわたって気持ちの良いサヨナラゲームが出来ていないという事実がそこにはある。

 ナゴヤドームの試合は続く。せめて今月中に一度だけでも痛快なサヨナラが見たい。必要なのは、決めるべきところで決められる人材だ。求む、ヒーロー。