ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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球団史に残る最低な試合

●1-2ヤクルト(4回戦)

 基本的に“采配ミス”と言われるものの多くは結果論だと思っている。あそこで投手を代えていればーー、バントではなく打たせておけばーー。だが所詮「if」は「if」でしかなく、あり得ない未来を夢想したところで意味はない。だから采配に関する批判は、当ブログでも極力控えてきたつもりだ。

 しかし、きょうの采配はあまりにも杜撰だった。しかもそれが敗北に直結するという笑えなさ。10年、いや20年に一度あるかどうかの明らかな“采配ミス”が、借金返済を狙うチームをドン底に叩き落としたと言っても過言ではない。

 

采配ミスが命とりに

 

 7回裏に代打で出場したアリエルがそのままマスクを被り、9回裏にはサヨナラのチャンスメークとなるヒットを放った。この時点でベンチの野手は加藤匠馬しか残っておらず、よって代走も出ない。そして迎えた10回表。てっきりアリエルが岡田俊哉をリードするものだと思い込んでいたのだが、なぜかここで登場したのが加藤だった。

 捕手に代えて捕手という起用もさることながら、最後の野手をこんな形で使い切ってしまうのは常道ではない。もし加藤が怪我をしたら誰が捕手を務めるのか? 第3捕手を登録しておく意義を蔑ろにするような采配に、思考がついていかない。しかもライデルが入っていた8番に岡田を使い、9番に加藤という打順も理解に苦しむ。これでは10回裏、仮に2死満塁になった場合に岡田に回ってきてしまうではないか。もちろん野手の代打は出せない。

 謎が謎を呼ぶ采配の意味を考えているうちに、制球の定まらない岡田はノーヒットで2死満塁のピンチを背負ってしまう。打席には井野卓。プロ15年目、通算27安打の渋すぎる脇役だ。初球、スライダーを見逃してストライク。井野も見るからに顔がこわばっており、打てる雰囲気など皆無だ。

 さすがに岡田の方が役者が一枚も二枚も上か。安心して胸をなでおろした直後の2球目、加藤の要求は、なんと高めの釣り球。とにかく早いところケリをつけたい場面で、みすみすボール球を一個プレゼントしたことで岡田に余裕がなくなってしまった。3球目が外れてカウント2-1。こうなると、もう押し出しの未来しか見えない。

 誰に打たれたわけでもないのに執拗にスライダーを要求する加藤の消極的なリード。スタメン出場の木下拓哉が二塁打を含むマルチ安打を放ち、途中出場のアリエルはどんなときもダビデ像のような表情を崩さず、沈着冷静に福敬登、ライデルをリードした。この2人に比べ、見るからに慌てふためいた加藤の挙動が頼りなく感じたのは確かである。だが、起用したのは首脳陣だ。

 「岡田との相性」とやらを考慮したのかどうかは分からないが、わざわざ代えた加藤のリードにより痛恨の1点を失うというツキの無さは、さらにその裏最悪な形を生み出すことになった。1死一、三塁で平田良介(そもそも8回裏、一、二塁で井領雅貴の代打として出てきたのも疑問だが)がこの日2度目となるチャンスでの凡退を喫すると、ヤクルトバッテリーは当然ながら京田陽太を敬遠。場面は恐れていた2死満塁を迎えることになる。打席には三ツ間卓也。

 「if」を言っても仕方ないが、もしここで三ツ間が奇跡的に同点タイムリーを打ったとしてもネクストは加藤なので、どっちみち逆転サヨナラの望みは薄い。だがもし代打加藤が同点タイムリーを打てば、9番にはアリエルが控えていたわけだ。これなら負けても納得できるし、加藤で終わったとしても「仕方ない」で締めることができる。

 今宵の敗因は、絶対にやってはいけない采配上のイージーミスだ。20失点や最終回まさかの逆転サヨナラ負けとはまた違った意味での衝撃的な負け方。今後何十年と語り継がれるであろう、球団史に残る最低な試合だといえよう。

 

そんな試合もあったねと

 

 とは言えこの一件で監督の休養云々というのは、あまりにも性急すぎるし、バカげている。昨季、OBを含めて多くの評論家が最下位予想をした中で2013年以降では最少の借金5でフィニッシュした点や、阿部寿樹や井領といった中堅どころを積極的に起用して戦力の底上げに成功したのは他でもない与田政権である。

 「2度と同じ誤ちを犯すなよ」とは思うが、それ以上のヘイト感情を抱くほどでもない。一敗は一敗。そんな試合もあったねといつか笑える日が来るはずだ。