ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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黒船アリエル躍動

○6-4巨人(3回戦)

 アリエル・マルティネスがプロ野球の歴史を塗り替えた。外国人選手が捕手としてスタメン出場するのは1991年のマイク・ディアズ(ロッテ)以来29年ぶり。主に一塁を守り、金田正一監督の秘策としてマスクを被ったディアズとは異なり、捕手登録でその座を掴んだアリエルのスタメン出場は球史に残る快挙といえよう。

 試合前には円陣を組んで気合を入れる、いわゆる“声出し”を担当。同じキューバ出身のビシエドと頻繁に会話を交わすなど、早くも一軍の雰囲気に馴染んでいる様子がうかがえた。湿り気味だったビシエドのバットが2ホーマーと火を噴いたのも、少なからず“アリエル効果”が影響したのかもしれない。

 昨日は試合の大勢が決した時点からのマスクだったため余裕をもって見守ることができたが、今日は絶対に3連敗を阻止したい重要な一戦。果たしてアリエルという未知なる存在がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。期待と不安を抱えながら迎えたプレイボール。その確かな実力が発揮されたのは、開始すぐのことだった。

 

動いたのは、アリエルでした

 

 先発マウンドに上がった梅津晃大は、先週の広島戦で自身ワーストの滅多打ちを食らったばかり。その時の梅津の動揺っぷりと言ったら見ているこちらまで不安になるほどで、ましてやプロ入り初の東京ドームでの登板で、絶好調の巨人打線と対峙するとなれば、どうしたってポジティブなイメージは沸いてこないものだ。

 その予感どおり初回、先頭の重信慎之介に安打を許すと、坂本勇人にはストレートの四球を許し、いきなり無死一、二塁のピンチを背負う。打席には昨日、2ホーマー6打点の丸佳浩。表の攻撃で痛い走塁ミスにより先制機を逸したばかりとあって、流れ的にも厳しい立ち上がりだ。ここで2点以上を喫すれば3タテは濃厚。いきなり訪れたターニングポイントで、動いたのはコーチでも内野手でもなく……アリエルだった。

 一歩二歩、梅津に歩み寄ったアリエルが、マスク越しにも分かる厳しい表情で「落ち着け!」とジェスチャーを示したのだ。これで我に帰ったのか、梅津は低めにフォークを集めて丸を空振り三振に、続く岡本和真もやはり低めのフォークで遊ゴロ併殺に打ち取り、絶体絶命のピンチを切り抜けたのだ。

 前回登板では高めに浮いたボールをことごとく捉えられ、今日も初回に重信に打たれたのは真ん中高めの甘いコース。しかしアリエルの鼓舞を受けてからは勝負どころでしっかりと低めに制球し、なんとか6回3失点と味方がくれたリードを守り切った。

 孤独な存在である投手に叱咤激励を飛ばし、一人で抱え込まないようにうまく制御する。その姿はまさに正捕手。キューバからやって来た黒船は、本当にドラゴンズの歴史を変えてしまうかもしれない。

 

アリエルがもたらす好影響

 

 昨日は強肩を披露し、今日は好リード。さらに打ってもスゴイのがアリエルだ。2回の第1打席で152キロのストレートを引っ張って、まず1本。6回の第3打席は追い込まれてから甘く入ったフォークを弾き返してマルチ安打。さらに8回の第4打席では澤村拓一の153キロを難なくレフト前へ打ち返し、なんとスタメンデビュー戦にして猛打賞を達成したのだ。

 唯一凡退だった第2打席も良い角度でライナーを飛ばしており、二軍で猛威を振るった打棒はどうやら本物。これまで何年もウィークポイントと言われ続けた「捕手の打撃問題」解決の公算が立ったのは低迷脱出に向けた明るい材料である。

 今後は木下拓哉との併用が基本線になると思われるが、ベンチスタートの日であっても代打の切り札に置いておけるのは非常に大きい。先日満塁でタイムリーを放った井領雅貴との左右の代打コンビは相手にとっても脅威になるだろう。またビシエドに万一の事態が起きた際、一塁の代役としても起用できるのだから、アリエルがチームにもたらす好影響は計り知れない。

 ただ、ひとつだけ気になったのは試合後の巨人・原監督のコメント。

 「あまり見慣れない光景ですよね。バッティングもシュアだしね、まだ若いんでしょ? 手ごわいと思いましたよ」(日刊スポーツ)

 あかん。このおじさん、完全にロックオンしてる。