ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

越えられない壁

●0-5巨人(1回戦)

 吉見一起、梅津晃大、柳裕也、山本拓実、岡野祐一郎。開幕から丸2週間が経ち、先発ローテ6人のうち5人が今季初勝利をあげた。経験の浅い若手が半数を占める中でこの結果はなかなか順調だといえよう。

 未勝利は開幕投手を務めた大野雄大ただ1人。エース同士の対戦は白星が付きにくいとは言うが、大野の場合は2試合ともにノックアウトを食らった形であり、今日も同じような内容ならローテの中でいち早く二軍落ちという憂き目に遭ってもおかしくはない。まさしく大野にとって正念場のマウンドになったわけだ。

 バッテリーを組んだのはこれまで通りの加藤匠馬ではなく、昨季大野とのコンビは4度しか無かった木下拓哉が選ばれた。加藤が攻守ともに脆さを露呈していることもあるのだろうが、それよりも菅野智之攻略を見据えて打力重視のオーダーに舵を切った形だ。

 とは言え舞台は東京ドーム。ちょうど1週間前にあのナゴヤドームで3発を被弾した大野にとってはあまりにもハードな条件だ。とにかく序盤から試合が壊れるようなことだけは勘弁してくれよ、と祈りながら迎えた1回裏。先頭・増田大輝を外角攻めで3球三振に仕留めると、続く丸佳浩は150キロのストレートで二ゴロ。

 そして驚いたのは、坂本勇人に投じたカウント0-1からのストレートだった。ボール球とは言え、自己最速タイの152キロを計測。大野のこの試合に懸ける想いが並大抵のものではないことを知るには、この1球で十分だった。

 

ダメ押し失点は蛇足

 

 初回、2回、3回とピンチを作りながらも踏ん張るにつれ、ずっとエンスト気味だった大野のボールが息を吹き返したように唸りをあげて走り始めた。パーラから丸まで圧巻の6者連続三振。続く坂本に打たれた曲芸のようなホームランによって試合の均衡こそ破れたものの、たとえ負けてもエース大野の帰還こそが最大の収穫であることは、「お前らには分からんでも結構」とあしらうまでもなく明らかだ。

 だからこそ、両エースによる素晴らしい意地のぶつかり合いが、あまりにもお粗末な守備ミスによって終結したのが本当に悔しかった。負けたことは仕方ない。だが、どうせなら0-1で負けたかったというのが本音だ。その後のダメ押し失点は完全に蛇足。

 巨人はここぞの場面で坂本のホームランが飛び出した。一方、中日はここぞの場面で痛恨のエラーを犯してしまった。この差こそが、常勝巨人と7年連続Bクラスの中日という“結果”としてもろに表れているのだとしたら、やはり今年も巨人を追い抜くことは容易ではない。

 

伝統とプライドに基づく勝利のメンタリティ

 

 なんとなく3連勝できた阪神戦とは打って変わって、常に劣勢の苦しい展開。いわば地元で天下を取ったつもりになっていたら、東京のすげえ奴に返り討ちに遭ったような敗北感だ。

 それなりの自信を持って乗り込んでも、いつもボコボコにされる。巨人戦は昔からそうだった。決してお金のチカラだけではない、伝統とプライドに基づく勝利のメンタリティが巨人の選手たちには骨の髄まで染み込んでいるから、いつだって強い。

 昨夜の試合後、ビシエドが「この調子でいけば(中日の)優勝の確率は高い」と豪語したという。これ自体はポジティブな気持ちになれる発言だが、有言実行に移すには絶対に越えなければいけないオレンジ色の壁が立ちはだかる。あのエラーを見て、一体誰が「中日なら越えられる!」と思えたというのか。

 大野がようやく復調の兆しをみせたのは光明だが、それでも負けた。完敗を喫した。「弱いから負けた。それだけです」とは柔道家・篠原信一の有名な言葉だ。ここぞに強い巨人。ここぞに弱い中日。絶望的なレベル差を痛感し、この言葉が重く響く。