ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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福田やん

○6-2阪神(2回戦)

 人は環境に馴染んでいく生き物だ。元々は大阪弁を喋っていたはずの桑田真澄が巨人に入団した途端に標準語を使い始め、「裏切り者」だと大阪人から罵られたという話があるが、あれだって大阪を裏切ったわけではなく、単に東京に馴染んだ結果なのだ。

 その土地々々に特有の価値観が存在しており、移住した当初は敬遠していてもいつの間にか馴染んでいく。「住めば都」ということわざも、そうした意味合いが含まれているのではないだろうか。

 それは日本人だけではなく外国人にも言えることで、母国とはあまりにも文化や気質が違いすぎるためか、逆にどっぷりと日本の魅力にはまる選手も少なくない。特にドラゴンズには中南米出身の選手が多いため、彼らにとって過ごしやすい環境づくりには定評がある。もっとも「名古屋のメシは合わん」と言ってさっさと東京に逃げて行ったゲレーロのような選手も中にはいるが、多くの外国人選手が名古屋という土地に馴染み、愛してくれるのは本当に喜ばしいことだ。

 

 

気分を晴らした満塁弾

 

 ただ、どれだけ環境に馴染んでも持って生まれた国民性はなかなか変わるものではない。たとえば「ラテン系の選手は明るい」といったものがそれにあたり、彼らは明るい反面、落ち込みも激しく、スランプに陥るとなかなか抜け出せずに嘘のような凡打を繰り返す。しかし何かのきっかけ一つで急に調子を上げ、翌日からはこれまた嘘のように鋭い当たりを飛ばし始めることがよくある。

 “カリブのヒゲ怪人”ことアルモンテの満塁弾はまさに不振から抜け出すには最高の一発になったと思う。開幕以来、それこそ打てる気配などノー感じのスイングを繰り返し、多少我慢してでも福田永将を起用すべきじゃないか? なんて声も出始めた矢先のグランドスラムである。

 本人もよほど会心の当たりだったのだろう。ベンチに戻っても「うまく打てたわ! この感覚忘れんようにしとこ!」とばかりに腕を畳んで内角を捌くモーションを体になじませながら、ニコニコで柳裕也と談笑する様子を見れば、すっかり気分が晴れたのは明らかだった。

 

福田のようなビシエド

 

 さて今日の試合。1点を追う4回裏、キャンプから37イニング連続無失点というよく分からない記録を続ける秋山拓巳に対して、反撃の突破口を開いたのはやはりアルモンテだった。甘く入ったカーブをライト線に打ち返すツーベースでチャンスメイク。どうしてもその後の阪神のお粗末な守備がクローズアップされがちだが、逆転の口火を切ったのがアルモンテの一打であったことは強調しておきたい。

 なかなか繋がらない打線にあって、平然と長打が打てるアルモンテの存在はやはり貴重だ。しかし好調時というのはバッティングだけでなく、選球眼まで強化されるものなのか。5回裏、今度は1死一、三塁で冷静にボールを見極め、満塁のチャンスに繋げた。一昨日までなら引っかけてゲッツーでも叩きそうなところで、しっかりとバットが止まるのは調子が良い証といえよう。

 ラテン系の選手らしく1本のホームランを機に不振を脱出したアルモンテ。一方、同じ中南米出身でもまだ本調子とはいえないのがビシエドだ。27日の広島戦で開幕戦以来となる本塁打を放ち、調子が戻るかと思われたがその後はまた低迷。今日も4回1死三塁で遊ゴロに倒れると、5回の満塁機こそ詰まりながらもタイムリーが出たものの、7回無死一、二塁では初球を叩いて最悪のゲッツーと今ひとつ波に乗り切れない。

 ビシエドといえば助っ人には珍しく家族そろって名古屋に移住し、正月の短期間以外は1年の大半をこちらで過ごすという、ほぼ日本人同様の生活を送っていることでも有名だ。名古屋の小学校に通うビシエドJr君のドラゴンズ入りを熱望するファンも多い。

 だが最近のビシエドは、あまりにもドラゴンズに馴染みすぎてもはや助っ人と言うよりは「ただのドラゴンズの選手」になっている気がしてならない。チャンスで力んで三振したり、ゲッツーに倒れたり。7回のゲッツーの場面では思わずテレビ越しに「福田やん」とツッコミを入れてしまったほどだ。たぶん今日、ビシエドの代わりに福田を入れても似たような結果になったと思う。

 名古屋に馴染んでくれるのは本当に嬉しいが、ビシエドにはビシエドにしか打てない豪快な当たりをもっとたくさん見せて欲しいのが正直なところだ。アルモンテは復調した。アリエルも上がってくる。いやいや、ビシエドはMLB通算66ホーマーのガチ強打者だ。そろそろ大爆発するはずだし、してくれなきゃ困るのだが。

 一度ドツボに嵌ると色々考えすぎて打てなくなる、ラテン系とは思えないほどの生真面目さ。そんなとこまで福田に似てきてどうすんだっての、マジで。