ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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加藤起用のなぜ?

●2-3DeNA(2回戦)

 年に何度か、明確に“采配で負けた”と言える試合があるとすれば、たぶん今日の敗戦はそのうちの一つに数えられるのだろう。
 細かいことを言い出せばきりがないが、この試合の分岐点はどう考えても4回表、6回表に訪れた2度の大チャンスだった。前者は無死一、三塁、後者は1死三塁。点が入らなきゃウソだろという場面で、共に凡退したのは8番打者の加藤匠馬だ。

 三振だけはしてはならないと自分自身に言い聞かせていたのだろう、4回の打席は7球ファウルで粘ったものの、結局ボール球を振らされて三振。6回は追い込まれる前になんとかフェアゾーンに飛ばさなければという意識だけは伝わってくる遊ゴロで万事休す。

 もちろん後続の打者が打てなかったのも痛いが、無死や1死で最低限さえできない選手が責められるのは仕方ないことだ。ただ、加藤の打力がこんなものであることは誰もが知っているわけで、せめて6回は代打を使うべきだった。ましてやベンチには堂上直倫や平田良介といった、なんぼ調子が悪いと言っても加藤よりは期待できる打者が有り余っていたのだから。

 どうせ9回表に山崎康晃を相手に先頭で加藤を代えるくらいなら、なぜあの場面では代えなかったのか? なんのための捕手3人制なのか? 今夜は頭の中のクエスチョンマークが消えそうにない。

 

相性重視? の加藤起用

 

 そもそも加藤を先発起用したのはどういった意図なのか。ここまで4試合連続で木下拓哉がスタメンマスクを被り、それといった守備面のミスもなく打っては4割を超す打率を残している。

 対するDeNAの先発投手は井納翔一。お世辞にも難攻不落とは言いがたい投手だ。ならば今季のドラゴンズの看板でもある強力打線でもって山本拓実に楽な投球をさせてあげれば良いものを、8番加藤では打線の中にいわゆる自動アウトを1個増やすに等しく、大量得点など望むべくもない。

 おそらく14日の練習試合で山本がDeNAを相手に5回パーフェクトに抑えた際の捕手が加藤だったことから、相性を重視したのだろうが、そもそも根拠が希薄な「相性」にこだわること自体がナンセンスだと言わざるを得ない。

 首脳陣は試合前、どういったゲーム運びを思い描いていたのだろうか。ロースコアの投げ合いが予想されるなら盗塁抑止力を持つ加藤という選択肢もアリだが、今日の場合は早い段階で井納をノックアウトすることを最優先に考えるべきだった。そもそも盗塁を仕掛ける選手がほぼ皆無の重量打線を相手に、加藤を使う意味が果たしてあったのか。

 試合後、与田剛監督は「点を取らないとなかなか勝てないので、色々やっていくしかない」(スポーツ報知)と反省の弁を述べたという。いやいや、色々やる手段は幾らでもあったよね。でもやらなかったよね。なんとも悔いが残る試合になってしまった。

 

8番加藤の弊害

 

 2018年の秋、中村武志バッテリーコーチは「正捕手を育てる」と宣言してドラゴンズに帰ってきた。その言葉どおり昨季は経験値ゼロの加藤を開幕スタメンに抜擢し、シーズン通してほぼ使い続けたことによってそれまで二軍でくすぶっていた加藤は2番手、3番手としては申し分ないだけの捕手に急成長を遂げた。その意味では決して去年の“正捕手・加藤”は間違いではなかったのだ。

 だが、レギュラーとなると物足りなさもある。DH制度が無いセ・リーグでは8番に打てない捕手を置いてしまうと、下位打線がほぼ機能しなくなるという弊害が発生する。今日の2度の凡退は、まさに加藤をスタメンで使うことのデメリットがもろに出てしまった格好だ。加藤ファンを自認する私でさえ、今季はもう木下と郡司裕也でいいな、と残念ながら思ってしまった。

 そのくらい今日の負けは無念が残る。あの場面、せめて加トちゃんじゃなくてケンちゃん(武田健吾)に行かせるわけにはいかなかったのかな。うん、これが言いたかっただけ。